語順の習得訓練を優先させます。「指定ルール」「説明ルール」を理解し、英語のリズムを体得します。
2018年度の NHK「ラジオ英会話」もはやいもので最終月になりました。今月は、今までの「語順学習」の要点を復習し、英会話能力に直結する英語観(英語に対する見方)を身につけることが目標です。





Lesson 221 文型 ① 他動型

I can explain everything.

「他動型」とは「動詞+目的語(名詞)」 の文型であり、「動詞による働きかけが目的語(対象)に及ぶ」ことを意味する形です。文型で大切なのは対応する意味をしることです。文型は、固有の意味をもち、文全体の意味を支配します。




Lesson 222 文型 ② 自動型

Listen to me.

この文は「自動型」であり、動詞 listen の直後に目的語(名詞)がありません。目的語のないこの型ははたらきかける対象のない「単なる動作」をあらわします。動詞 listen は「耳を傾ける」という単なる動作をあらわします。




Lesson 223 文型 ③ 説明型

She is going deaf.

going deaf の部分は「説明型」です。動詞の後ろに説明語句をおき、主語の説明をする型です。

この型をとる典型的な動詞 be をつかった文において、be 動詞にはとくに意味はなく、イコール(=)程度のつなぎ言葉にすぎません。「she = deaf」ということです。主語に、説明語句をならべていく意識でつくります。

go deaf は「 = deaf(になる)」ということです。進行形ですから deaf になる途中すなわち「耳が遠くなってきている」ということになります。




Lesson 224 文型 ④ 授与型

My new company offered me a much better position.

この文は「授与型」であり、授与型は「…に~をあげる・くれる」を意味する型です。動詞の後ろに2つ名詞(の塊)をおいてつくります。授与型の配置でつかわれた場合、あらゆる動詞は、「あげる・くれる」という意味で強制的に解釈されます。

どういった文型で動詞がつかわれるのかを理解することはたいへん重要です。動詞がつかうことのできる文型を予測するためには動詞と文型の意味を知らなければなりませんが、動詞のイメージが、文型のもたらす意味にマッチするかをかんがえればたかい確率で文型を推測することができます。




Lesson 226 文型 ⑤ 目的語説明型(1)

I need you ready to act.

この文は「目的語説明型」であり、目的語の説明を、後続の説明語句がおこなう型です。この型には、修飾の万能ルールのひとつ「説明ルール」がはたらいています。目的語 you を ready to act(行動の準備ができた)が説明し「 you = ready to act である必要がある」という意味になっています。




Lesson 227 文型 ⑤ 目的語説明型(2)日本語訳に惑わされない

My parents never let me use my phone at the dinner table.

動詞原形が説明語句としてつかわれた目的語説明型の文です。let は「許す」、ある状況をさまたげずそのままにしておくということですから、「夕食のテーブルでスマートフォンをつかうことを許さない(そのままにしておかない)」という意味になります。日本語訳をこえたニュアンスをつかむとつかえる英語が身につきます。




Lesson 228 リポート文:英語語順の奇妙さを乗り越える

I’m afraid we don’t have time right now.

この文は「リポート文」、動詞句の説明を後続の節がおこなう「説明ルール」がつくる形であり、主語の思考・感情・発言をリポートします。 am afraid(恐れている・残念に思う)の内容を節で展開する意識でつくります。「説明は後ろに」は、「大切なことは先に」ということと一直線でつながっています。




Lesson 229 主語拡張:主語の位置にあればそれは主語

Cleaning up after you is not my job.

文中の単語の位置がその表現の機能を決定します。主語の位置におかれたフレーズは「主語」という機能をいやおうなくあたえられます。英語のこの性質を理解すれば表現の幅は爆発的にひろがります。




Lesson 231 目的語拡張:目的語の位置にある to 不定詞・動詞 -ing 形

Remember to meet Amy there.

この文では、remember の目的語位置に to 不定詞が「放り込まれて」います。to 不定詞は「(指し示す)矢印」が基本イメージであるため、「これから」のニュアンスをおびることが頻繁にあります。remember to 〜 はそうした例であり、「(これから)~することをわすれない」という意味になります。

これに対して、「I remember meeting Amy at the party.」(私は、パーティーでエイミーに会ったことを覚えています)においては、動詞 -ing 形はいきいきとした行為をあらわし、リアルに何かがおこっていることを想起させるため、「エイミーに(実際に)会ったことを覚えている」という意味になります。




Lesson 232 英語固有のリズム:説明ルール ①

Is there anything I can do for you?

固有のリズムが英語文にはあります。このリズムを身につけ、自分のリズムとすることが「英語ができるようになる・英語が話せる」ことにつながります。このリズムを形づくる重要な原則のひとつが「説明ルール」すなわち説明はあとからつけくわえる(重要なことは先にいう)というルールです。前の要素を後続が説明するリズムを身につけてください。




Lesson 233 英語固有のリズム:説明ルール ②

That’s the man who stole my bag!

関係代名詞の文です。この文では、先行詞の後ろの節に空所(□)があり、先行詞とくみあわせることによって修飾がおこなわれます。ここでも、「説明ルール」の意識こそが大切であり、語順と英語のリズムが大事です。




Lesson 234 英語固有のリズム:指定ルール ①

I am a student.

「指定の意味合いの語句は前に置く」という「指定ルール」が英語にはあります。a、the、some、any などの限定詞は、つぎにくる名詞がどんなものであるかをあらかじめ指定する言葉です。a は「ほかにもあるひとつ」、 the は「ひとつに決まるような」といった具合です。

この場面では「I am a . . .」まではほぼ自動でつくられます。どんな立場・職業でも「ほかにもいるうちのひとり」ですから。そこから、student なのか、あるいは high school student(高校生)なのか、 returnee(帰国子女)なのかを決定し、口からだようにします。日本語訳をする必要はありません。




Lesson 236 英語固有のリズム: 指定ルール ②

We may go to Italy this summer.

may は、以降の内容を、「かもしれないという話ですよ」とあらかじめ指定しています。指定の修飾語は前におきます。指定ルールは特定の品詞にかぎりません。




Lesson 237 同じことの繰り返し

I’m responsible for all new products targeting international tourists visiting Japan.

この文は、「説明ルール」の簡単なくりかえしがおこなわれているにすぎません。どんどん説明を右展開(後ろへ展開)しているだけです。おなじリズム、おなじ意識、おなじ運動のくりかえしで文はなりまちます。




Lesson 238 語順感覚の「合奏」

Considering our limited budget and tight schedule, I think it’s best to create an online shopping section.

「指定ルール」と「説明ルール」を身につければ、すべての英語文は簡単な感覚の合成・合奏として感じられてきます。多少ステップアップした会話であっても「指定は前から」「説明は後ろから」の英語のリズムは何ひとつかわりません。このリズムこそが英文法でもっとも大切なことです。




Lesson 239 そして次のステップへ

次のステップは表現力の増強です。英語のリズムにどんな表現をのせるのか。はなすための表現力の増強とは日本語訳をすることではなく理解の質をたかめることです。

I’ve obviously read your resume, but to get us started, can you tell me a bit about yourself?

前置詞・基本動詞をはじめ、基本的な表現への理解をふかめて、基本表現の持つイメージング能力をみがいていきましょう。






さてこれで、2018年度の NHK ラジオ英会話の全プログラムがおわりました。

ここまでくれば、「左から右(前から後ろ)」にその語順どおりに英語を理解し、はなすことができます。「左から縛り」「右へ展開」すなわち「指定ルール」「説明ルール」が重要であり、これらによって英語のリズムがうまれます。

たとえば音楽家は音楽を演奏します。つまり音楽をアウトプットします。そのときには音楽のリズムが重要です。これと似ていて、わたしたちが英語をはなすとき、つまり英語をアウトプットするときにも英語のリズムが大事です。

英語のリズムを身につけることを目標にしてこれからもがんばっていきましょう。
 
かつては、日本の英語教育では、「英文和訳」や「英文読解」を目標としていて、英文全体をじっくりながめて適切な日本語をかんがえていればよかったのですが、わたしたちが、英語をはなせる(アウトプットできる)ことを目指すならば、英語の語順を習得する訓練こそが大事であり、これは、あらゆるこまかな文法事項の勉強に優先します。

わたしたち日本人はひさしく、日本語訳中心の英語学習をおこなってきたため、日本語訳ができることが英語ができることであると誤解していました。しかしただ訳せただけでは英語がつかえるように、はなせるようにはなれません。これからの時代は、主体的にアウトプットすることが大事であり、みずから表現できるようになることを目指さなければなりません(図1)。

190210 英会話
図1 みずから表現できるように


かつて、わたしは、最初の英語の授業でつぎのように教師からおそわりました。

This is a pen. 「これは1本のペンです」と訳します。「1本」の部分は訳すときには省略してもよいです。is は、be 動詞とよばれ、be 動詞のつかい方がわかったら英語の80%がわかったことになるといわれています。とてもむずかしい単語です。これは、このままおぼえておきなさい。

今からみると、昔の英語教育はわらい話にもならず、隔世の感を禁じえません。もはや時代はかわりました。学校の英語教育にとらわれるよりも NHK ラジオ英会話を毎日きいてください。英語がはなせるようになるだけでなく、おのずと、学校その他の試験の得点もあがります。学校の英語の先生もラジオ英会話を是非受講してください。

なお、ラジオ英会話を実際にきくときには、まずは、テキストをみないできいて、練習して、そのあとでテキストをみて確認するという方法をとったほうがよいでしょう。

  1. テキストを一切みないで番組をきく、声にだして練習する。
  2. 今度は、テキストをみながら番組をきき、細部を確認し、声にだして練習する。
  3. ふたたびテキストを一切みないで練習する。

この方法ですと、番組1回分が15分ですから、のべ45分かかることになります。そこでいそがしい人には CD の活用をおすすめします。CD は、番組よりもコンパクトにまとめられており、短時間で内容を確認することができます。まずは番組をきいたほうがよいですが、上記の2と3は CD をつかうと効率的ですし、あるいは何回もくりかえして CD をききながら復習するとよいでしょう。



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▼ 参考文献
『NHK ラジオ英会話 2019年 3月号』(テキスト)NHK出版、2019年

▼ CD

▼ ラジオ英会話 毎月のテーマ
2018-12-28 2.39.15


▼ 関連教材
2018年度の復習をしたい人、2018年度の番組をきけなかった人のために!
大西泰斗先生が講師をつとめる NHK ラジオ英会話の全講義を収載しています。

本書は、NHK ラジオ英会話の2018年度の内容を再構成してまとめたものです。音声は、NHK ラジオ英会話の CD の2018年度のものを再編集してまとめたもので、NHK 出版サイトからダウンロードできます。コンパクトに録音されているので効率的に学習できます。