「過去形」は、距離感のニュアンスをあらわします。it は、「それ」と指すのではなく、「受ける」ときにつかう単語です。
今月の「NHK ラジオ英会話」では仮定法と it のつかいかたについて練習しています。
Lesson 201 仮定法の心理
仮定法は、事実とはことなる、可能性がひくいこと(反事実)をあらわす形であり、上の文からは、「実際には、男の兄弟はいないけれども」という話し手のメッセージがつたわり、現在のことについてのべているのに「過去形」がつかわれます。このように、「時表現をバックシフトする」(後ろにずらす) のが仮定法の形の特徴です。
バックシフトがつかわれる理由は「距離感」にあります。過去形のもつ「距離感」をおもいだしてください。すぎさったとおくの出来事からうまれる「距離」のニュアンスがこの形にはあります。つぎの例文もそうです。
「今のぞんでいる」から距離をとって丁寧な印象をあたえる hoped、「できるよ」というつよい主張からはなれて「できるのではないかなぁ」という印象をあたえる could、どちらにも、距離のニュアンスがあります。
仮定法で、バックシフトがおこなわれるのも(現在の反事実を過去形であらわすのも)、「現実離れ」という心理が距離感のある形であらわされるためです。現実感のない状況をとおくにみるまなざしをイメージしてください。これが仮定法という形です。
Lesson 202 if 節を使った仮定法: 現在の状況について仮定法を使う ①
現在の状況について「(実際にはそうではないが)もし~だったら」と反事実のふくみをもっています。if 節内がバックシフトされるのはそのためです。現実ばなれした状況を「遠くに眺めている」のです。結びの節でつかわれるのは「控えめな過去の助動詞」です。仮定法は 「♪ありえない ─ ホンワカ♪」のリズムです。
Lesson 203 if 節を使った仮定法: 現在の状況について仮定法を使う ②
「♪ありえない ─ ホンワカ♪」のリズムです。
Lesson 204 仮定法を使ったフレーズ
「さよならをする時間(だけどまだしていない)」ということです。
Lesson 206 if 節を使った仮定法: 過去の状況について仮定法を使う
過去の状況についての仮定法です。「(実際にはそうではなかったが)もし~だったとするなら、~しただろう」ということです。現在の状況についての反事実は、バックシフトして「距離」をとり過去形になります。同様に、過去に対する仮定は過去からさらに距離をとり過去完了形 となります。結びの節は、 would have となり、過去を推量し「こうなっていただろう」としています。「♪ありえない ─ ホンワカ♪」のリズムです。
Lesson 207 過去の仮定・現在の帰結
Lesson 208 wish を使った仮定法
wish は「(~であればいいのにと)願う・望む」という動詞であり、この動詞に後続する節は常に仮定法です。過去の状況に対する反事実の仮定はバックシフトして過去完了形にします。「(過去に)もっと親切にしていればなぁ」。
Lesson 209 if 節を伴わない仮定法 ①
この文に if 節はありませんが、 in my place(私の立場なら)に if と同様の反事実のふくみがあります。相手が、わたしの立場にいるわけはありませんから反事実のニュアンスです。 would がもちいられているのもそのためです。 if 節の仮定法と同様、ひかえめに、ホンワカ、「するでしょうかねぇ」とむすんでいます。
Lesson 211 if 節を伴わない仮定法 ②
without their support は「もし彼らの助けがなければ」と事実に反する仮定として機能しています。実際には援助があり卒業できたということです。
Lesson 212 仮定法プラス倒置
倒置は「感情の高揚」をあらわす形であり、この文も、「僕が君のボーイフレンドなら」が通常の形よりもいきおいよくのべられています。感情ののる倒置には、わざわざ if を律儀につかうよりも、コンパクトなこの形のほうがピッタリです。
Lesson 213 it の意味と機能
この it は、文脈に登場した出来事全体を「受けて」おり、「(そうしたことは)二度と起こりませんよ」という意味となっています。
it は「それ」ではありません。「それ」は日本語、しかも身の回りのモノを「指す」ためにつかう単語です。 it は指す単語ではありません。
Lesson 214 天候・距離・時間の it
it の意味が「受ける」だとわかりました。これも普通の it です。この文は、「ここから駅まで」をおもいうかべながらそれを it で受け、「5キロだよ」と言っているにすぎません。「受ける」感覚を身につけてください。
Lesson 216 形式主語の it (it . . . to ~ / it . . . that ~)
it は「受ける」単語です。この話し手は、「そこ(シンガポール)へ行く」を思い描きそれを it で受けて「7時間ぐらいかかるよ」と文をはじめています。
it を主語に置くときのコツは、こまかな説明を後回しにしてとにかく it で文をはじめることです。
Lesson 217 it の強調構文
この文では Andy に強調があたえられています。it をつかって「アンディだったんだよ」とはじめるところにこの強調の源泉があります。この形は、通常の文 Andy organized the conference. から Andy をひっぱりだしたとかんがえると理解しやすいでしょう。
Lesson 218 感嘆文
おおきな感嘆の気持ちをつたえる「感嘆文」とよばれる形です。「 What +名詞+主語+動詞!」の語順となっていることに注意しましょう。
この形も本質的に「前置」の形です。基本語順をくずして感動の焦点である a nice camera を前におくことによって感嘆をあらわしています。 what をつかわなくても前置だけで感嘆の意味をつたえることも可能です。 A nice camera you’ve got there! 「what」はいわば「ダメ押し」です。
Lesson 219 語順を変えるということ
yesterday が文頭に置かれているのは、この単語に焦点を当てるためです。
「過去形」という形は、「距離感」のニュアンスをあらわします。とおくをながめるイメージです。仮定法、丁寧な表現、ひかえめな表現、過去の出来事などが距離感によって統一的に理解できます。
また it は、「それ」と学校でおしえられてきましたが間違いでした。it は、出来事などを「受ける」ときにつかいます。「天候・距離・時間を表す it」とか「主語の it は形式的な仮主語」とかいう説明も必要ありません。
この際、学校英語や受験英語からときはなたれて、アウトプットのための訓練にすすんだほうがよいでしょう。たとえば「It ...」と、相手の話を受けて、はなしはじめて、こまかな説明はあとからつけくわえるようにします。
アウトプット訓練のために「NHK ラジオ英会話」がたいへん役立ちます。学校の英語の先生も「NHK ラジオ英会話」を是非受講してみてください。
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▼ 参考文献
『ラジオ英会話 2019年 2月号』(NHKテキスト)NHK出版、2019年
▼ CD
Lesson 201 仮定法の心理
I wish I had a brother.![]()
仮定法は、事実とはことなる、可能性がひくいこと(反事実)をあらわす形であり、上の文からは、「実際には、男の兄弟はいないけれども」という話し手のメッセージがつたわり、現在のことについてのべているのに「過去形」がつかわれます。このように、「時表現をバックシフトする」(後ろにずらす) のが仮定法の形の特徴です。
バックシフトがつかわれる理由は「距離感」にあります。過去形のもつ「距離感」をおもいだしてください。すぎさったとおくの出来事からうまれる「距離」のニュアンスがこの形にはあります。つぎの例文もそうです。
I hoped you could lend me some money.【丁寧表現】
Chris could fix it, I think.【控えめな過去の助動詞】
「今のぞんでいる」から距離をとって丁寧な印象をあたえる hoped、「できるよ」というつよい主張からはなれて「できるのではないかなぁ」という印象をあたえる could、どちらにも、距離のニュアンスがあります。
仮定法で、バックシフトがおこなわれるのも(現在の反事実を過去形であらわすのも)、「現実離れ」という心理が距離感のある形であらわされるためです。現実感のない状況をとおくにみるまなざしをイメージしてください。これが仮定法という形です。
Lesson 202 if 節を使った仮定法: 現在の状況について仮定法を使う ①
If you practiced more, you would be a better player.
現在の状況について「(実際にはそうではないが)もし~だったら」と反事実のふくみをもっています。if 節内がバックシフトされるのはそのためです。現実ばなれした状況を「遠くに眺めている」のです。結びの節でつかわれるのは「控えめな過去の助動詞」です。仮定法は 「♪ありえない ─ ホンワカ♪」のリズムです。
Lesson 203 if 節を使った仮定法: 現在の状況について仮定法を使う ②
If I had a car, I could go to many places.
「♪ありえない ─ ホンワカ♪」のリズムです。
Lesson 204 仮定法を使ったフレーズ
It’s time we said goodbye.
「さよならをする時間(だけどまだしていない)」ということです。
Lesson 206 if 節を使った仮定法: 過去の状況について仮定法を使う
If you had asked me, I would have helped you.
過去の状況についての仮定法です。「(実際にはそうではなかったが)もし~だったとするなら、~しただろう」ということです。現在の状況についての反事実は、バックシフトして「距離」をとり過去形になります。同様に、過去に対する仮定は過去からさらに距離をとり過去完了形 となります。結びの節は、 would have となり、過去を推量し「こうなっていただろう」としています。「♪ありえない ─ ホンワカ♪」のリズムです。
Lesson 207 過去の仮定・現在の帰結
If you had followed my advice, you wouldn’t be in such trouble now.
Lesson 208 wish を使った仮定法
I wish I had been kinder to her.
wish は「(~であればいいのにと)願う・望む」という動詞であり、この動詞に後続する節は常に仮定法です。過去の状況に対する反事実の仮定はバックシフトして過去完了形にします。「(過去に)もっと親切にしていればなぁ」。
Lesson 209 if 節を伴わない仮定法 ①
In my place, what would you do?
この文に if 節はありませんが、 in my place(私の立場なら)に if と同様の反事実のふくみがあります。相手が、わたしの立場にいるわけはありませんから反事実のニュアンスです。 would がもちいられているのもそのためです。 if 節の仮定法と同様、ひかえめに、ホンワカ、「するでしょうかねぇ」とむすんでいます。
Lesson 211 if 節を伴わない仮定法 ②
Without their support, I couldn’t have graduated.
without their support は「もし彼らの助けがなければ」と事実に反する仮定として機能しています。実際には援助があり卒業できたということです。
Lesson 212 仮定法プラス倒置
Were I your boyfriend, I would treat you much better.
倒置は「感情の高揚」をあらわす形であり、この文も、「僕が君のボーイフレンドなら」が通常の形よりもいきおいよくのべられています。感情ののる倒置には、わざわざ if を律儀につかうよりも、コンパクトなこの形のほうがピッタリです。
*
Lesson 213 it の意味と機能
It won’t happen again.
この it は、文脈に登場した出来事全体を「受けて」おり、「(そうしたことは)二度と起こりませんよ」という意味となっています。
it は「それ」ではありません。「それ」は日本語、しかも身の回りのモノを「指す」ためにつかう単語です。 it は指す単語ではありません。
Lesson 214 天候・距離・時間の it
It’s five kilometers from here to the station.
it の意味が「受ける」だとわかりました。これも普通の it です。この文は、「ここから駅まで」をおもいうかべながらそれを it で受け、「5キロだよ」と言っているにすぎません。「受ける」感覚を身につけてください。
Lesson 216 形式主語の it (it . . . to ~ / it . . . that ~)
It takes around seven hours to get there.
it は「受ける」単語です。この話し手は、「そこ(シンガポール)へ行く」を思い描きそれを it で受けて「7時間ぐらいかかるよ」と文をはじめています。
it を主語に置くときのコツは、こまかな説明を後回しにしてとにかく it で文をはじめることです。
Lesson 217 it の強調構文
It was Andy that organized the conference.
この文では Andy に強調があたえられています。it をつかって「アンディだったんだよ」とはじめるところにこの強調の源泉があります。この形は、通常の文 Andy organized the conference. から Andy をひっぱりだしたとかんがえると理解しやすいでしょう。
Lesson 218 感嘆文
What a nice camera you have!
おおきな感嘆の気持ちをつたえる「感嘆文」とよばれる形です。「 What +名詞+主語+動詞!」の語順となっていることに注意しましょう。
この形も本質的に「前置」の形です。基本語順をくずして感動の焦点である a nice camera を前におくことによって感嘆をあらわしています。 what をつかわなくても前置だけで感嘆の意味をつたえることも可能です。 A nice camera you’ve got there! 「what」はいわば「ダメ押し」です。
Lesson 219 語順を変えるということ
Yesterday, we had our school festival.
yesterday が文頭に置かれているのは、この単語に焦点を当てるためです。
*
「過去形」という形は、「距離感」のニュアンスをあらわします。とおくをながめるイメージです。仮定法、丁寧な表現、ひかえめな表現、過去の出来事などが距離感によって統一的に理解できます。
また it は、「それ」と学校でおしえられてきましたが間違いでした。it は、出来事などを「受ける」ときにつかいます。「天候・距離・時間を表す it」とか「主語の it は形式的な仮主語」とかいう説明も必要ありません。
この際、学校英語や受験英語からときはなたれて、アウトプットのための訓練にすすんだほうがよいでしょう。たとえば「It ...」と、相手の話を受けて、はなしはじめて、こまかな説明はあとからつけくわえるようにします。
アウトプット訓練のために「NHK ラジオ英会話」がたいへん役立ちます。学校の英語の先生も「NHK ラジオ英会話」を是非受講してみてください。
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「ハートでつかめ! 英語の極意」(NHK ラジオ英会話)
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時表現を完成させる - NHK ラジオ英会話(6月)-
助動詞をつかいこなす - NHK ラジオ英会話(7月)-
修飾の語順を身につける - NHK ラジオ英会話(8月)-
否定と比較 - NHK ラジオ英会話(9月)-
to 不定詞 と 動詞 -ing 形 - NHK ラジオ英会話(10月)-
過去分詞・受動態・節 - NHK ラジオ英会話(11月)-
倒置・疑問文 - NHK ラジオ英会話(12月)-
関係詞節による修飾 - NHK ラジオ英会話(1月)-
仮定法と it - NHK ラジオ英会話(2月)-
英語のリズムを身につけよう -「文法力と語順の成熟」(NHK ラジオ英会話 3月)-
▼ 参考文献
『ラジオ英会話 2019年 2月号』(NHKテキスト)NHK出版、2019年
▼ CD