波と粒子の二重性がミクロな粒子にはあります。見ていないときは波としてふるまい、見ると粒子としての姿をあらわします。常識がくつがえります。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』 2019年3月号の Newton Special では「なるほど!! 物理入門」と題して、高校物理の内容をわかりやすく解説しています。その PART 5 は「原子と光」です。
たとえば暗闇のなかの数十メートル先にあるろうそくの光がみえるのは、光の粒子(光子)が人間の目にとどくからです。目にとどく光子の数は距離とともにへっていきますが、光子1個がもつエネルギーはとおくへいってもよわまることがないため、目の網膜は光子を感知することができます。
一方、光の波は球面状にひろがっていき、距離の2乗に反比例してよわまっていくため、ろうそくから数十メートルはなれると、光の波は感知することができません。
同様なことは夜空の星をみるときにもいえます。何光年もつたわるうちに、非常にはなれた恒星の光はよわくなりますが、光子1個がもつエネルギーはかわらないので、星のかがやきをわたしたちはみることができます。
電子が、波の性質ももつとかんがえると、電子の軌道の長さが、電子の波の波長の整数倍であれば、電子の波が軌道を1周したとき、ちょうど波がつながるようになり、電子の波と軌道の長さが「ちょうどよい長さ」のときに電子は「定常状態」であるとしました。
このようになぜか、光子や電子は、波の性質と粒子の性質をあわせもっており、この不思議な性質は、すべてのミクロなほかの粒子(原子、原子核、陽子、中性子、その他の素粒子など)ももっています。
この奇妙な現象に対してはつぎの仮説が提案されています。
たとえば電子は、人間が「見ていないとき」(観測していないとき)は波の性質をたもちながら空間にひろがっています。しかしこの電子に光をあてるなどして、人間がそれを「見る」(観測する)と、不思議なことに、瞬時に波がちぢんで1ヵ所に集中するとかんがえられます。
電子を見る(観測する)場合、見る前には波として電子はひろがっていたのであり、しかし見た瞬間に電子は粒子になるのであり、その粒子がどこに出現するかは確率的にしかわかりません。この範囲に出現する確率は30%、あの範囲に出現する確率は2%といったぐあいです。
「波と粒子の二重性」を説明するために、このような仮説がたてられています。しかしまことにこれは不思議なことであり、人間が従来もっていた常識では理解できません。常識はくつがえされました。
現象の本来のありようと、わたしたち人間が認知するありようとはことなるということであり、わたしたちが認知しているとおもっている現象は見かけにすぎず、“現象” にも “物質” にも、実は、実体がないのであり、わたしたち人間の感覚のしくみ(感覚系の情報処理のしくみ)が “現象” に関与しているということではないでしょうか。
またミクロな粒子の波を数学的にあらわしたものは「波動関数」とよばれ、波動関数がどのような形をとるか、時間とともにどのように変化するのかをみちびくための方程式は「シュレーディンガー方程式」といい、たとえば電子の波動関数についてこの方程式を数学的にとくことで、原子内の電子の軌道などをもとめることができます。こうしたミクロな粒子のふるまいを計算する理論を「量子力学(量子論)」といい、現代物理学の根幹をなす理論のひとつとなっています。こうして、物理現象は数理的に解釈されるのであり、物理現象の世界は数理現象の世界のなかに位置しています。
他方、量子力学とならんで現代物理学をささえている理論がアインシュタインがつくりあげた「相対性理論」です。アインシュタインは、「宇宙は、光の速度がだれから見ても一定になるようにできている」(光速度不変の原理)をとなえ、これを説明するために、「その人の置かれてた立場によって、時間の進み方や、ものの長さがちがって見える」とかんがえました(特殊相対性理論)。
また「質量をもつ物体は周囲の空間をゆがめ、その結果、重力が生じる」とかんがえました(一般相対性理論)。一般相対性理論は、天体のような大きな(マクロ)な規模の世界を数学によって記述する分野です。
こうして物理学者たちは、ミクロな世界からマクロな世界まで、従来の常識をつぎつぎにくつがえす仕事をしています。わたしたち一般の人々も、そられの仮説のごく基本的なところはしっておくべき段階にすでにきています。とくに、宇宙の現象と人間の認識についての解釈については今後とも注目されます。
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光の正体を知る -「光の量子論」(Newton 2017.2号)-
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▼ 参考文献
『Newton』(2019年3月号)ニュートンプレス、2019年
光は、状況に応じて波のようにふるまったり、粒子のようにふるまったりするのです。このような性質は、「波と粒子の二重性」とよばれ、光にかぎらず、電子などのあらゆる微小な粒子がもっています。
たとえば暗闇のなかの数十メートル先にあるろうそくの光がみえるのは、光の粒子(光子)が人間の目にとどくからです。目にとどく光子の数は距離とともにへっていきますが、光子1個がもつエネルギーはとおくへいってもよわまることがないため、目の網膜は光子を感知することができます。
一方、光の波は球面状にひろがっていき、距離の2乗に反比例してよわまっていくため、ろうそくから数十メートルはなれると、光の波は感知することができません。
同様なことは夜空の星をみるときにもいえます。何光年もつたわるうちに、非常にはなれた恒星の光はよわくなりますが、光子1個がもつエネルギーはかわらないので、星のかがやきをわたしたちはみることができます。
フランスの物理学ルイ・ド・ブロイは、「光が波と粒子の両方の性質をもつのなら、微小な粒子と考えられてきた電子もまた、波の性質をもっているのではないか」と考えました。
電子が、波の性質ももつとかんがえると、電子の軌道の長さが、電子の波の波長の整数倍であれば、電子の波が軌道を1周したとき、ちょうど波がつながるようになり、電子の波と軌道の長さが「ちょうどよい長さ」のときに電子は「定常状態」であるとしました。
このようになぜか、光子や電子は、波の性質と粒子の性質をあわせもっており、この不思議な性質は、すべてのミクロなほかの粒子(原子、原子核、陽子、中性子、その他の素粒子など)ももっています。
この奇妙な現象に対してはつぎの仮説が提案されています。
人間が「見ていないとき」は波としてふるまい、人間が「見る」と粒子としての姿をあらわす。
たとえば電子は、人間が「見ていないとき」(観測していないとき)は波の性質をたもちながら空間にひろがっています。しかしこの電子に光をあてるなどして、人間がそれを「見る」(観測する)と、不思議なことに、瞬時に波がちぢんで1ヵ所に集中するとかんがえられます。
電子を見る(観測する)場合、見る前には波として電子はひろがっていたのであり、しかし見た瞬間に電子は粒子になるのであり、その粒子がどこに出現するかは確率的にしかわかりません。この範囲に出現する確率は30%、あの範囲に出現する確率は2%といったぐあいです。
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「波と粒子の二重性」を説明するために、このような仮説がたてられています。しかしまことにこれは不思議なことであり、人間が従来もっていた常識では理解できません。常識はくつがえされました。
現象の本来のありようと、わたしたち人間が認知するありようとはことなるということであり、わたしたちが認知しているとおもっている現象は見かけにすぎず、“現象” にも “物質” にも、実は、実体がないのであり、わたしたち人間の感覚のしくみ(感覚系の情報処理のしくみ)が “現象” に関与しているということではないでしょうか。
- 本来のありよう
- 認知されるありよう
またミクロな粒子の波を数学的にあらわしたものは「波動関数」とよばれ、波動関数がどのような形をとるか、時間とともにどのように変化するのかをみちびくための方程式は「シュレーディンガー方程式」といい、たとえば電子の波動関数についてこの方程式を数学的にとくことで、原子内の電子の軌道などをもとめることができます。こうしたミクロな粒子のふるまいを計算する理論を「量子力学(量子論)」といい、現代物理学の根幹をなす理論のひとつとなっています。こうして、物理現象は数理的に解釈されるのであり、物理現象の世界は数理現象の世界のなかに位置しています。
他方、量子力学とならんで現代物理学をささえている理論がアインシュタインがつくりあげた「相対性理論」です。アインシュタインは、「宇宙は、光の速度がだれから見ても一定になるようにできている」(光速度不変の原理)をとなえ、これを説明するために、「その人の置かれてた立場によって、時間の進み方や、ものの長さがちがって見える」とかんがえました(特殊相対性理論)。
また「質量をもつ物体は周囲の空間をゆがめ、その結果、重力が生じる」とかんがえました(一般相対性理論)。一般相対性理論は、天体のような大きな(マクロ)な規模の世界を数学によって記述する分野です。
こうして物理学者たちは、ミクロな世界からマクロな世界まで、従来の常識をつぎつぎにくつがえす仕事をしています。わたしたち一般の人々も、そられの仮説のごく基本的なところはしっておくべき段階にすでにきています。とくに、宇宙の現象と人間の認識についての解釈については今後とも注目されます。
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▼ 参考文献
『Newton』(2019年3月号)ニュートンプレス、2019年