珍渦虫(Xenoturbella japonica)
(交差法で立体視ができます)
腸はもっとも原始的な器官です。動物進化の初期段階を想像することができます。
科博NEWS展示「最近話題となった日本からの新種、珍種、新発見」が国立科学博物館で展示されています(注)。
7種の新種・珍種が展示・解説されており、それらのなかでわたしは「珍渦虫」(ちんうずむし)に注目しました。 写真は、三浦半島沖で採取されたホロタイプ標本(種の学名の基準となる単一の標本)です。
7種の新種・珍種が展示・解説されており、それらのなかでわたしは「珍渦虫」(ちんうずむし)に注目しました。 写真は、三浦半島沖で採取されたホロタイプ標本(種の学名の基準となる単一の標本)です。
珍渦虫は海底にすむ海産無脊椎動物ですが、系統分類学的にみてどこに位置するのかはよくわかっていません。その発生過程も不明です。
マイクロ CT スキャン(病院などにあるCT検査機器の小型版)で標本(個体)をスキャンして内部構造を観察したところ、表皮の下には腸があるだけでほかには何もなく、標本の前端には、外界へとつづく孔が発見されました。
スキャンによる断面図
あまりに単純な原始的なこの生物は、腸しかもたないとみることもできますが、すでに腸はあるとみることもできます。
この標本は、動物にとって腸は、原始的・本源的な器官であるということを理解させてくれる貴重なものであり、珍渦虫は、動物進化の初期段階を解明するために重要な動物です。
あらためて、腸そして口や肛門の進化と機能・役割についてかんがえてみるとおもしろいとおもいます。