パーム油の需要が、東南アジアの生態系を崩壊させています。一方、中部アフリカのガボンでは、森林をまもりながら農業をそだてるプロジェクトがはじまっています。東南アジアにも長期的な視点が必要です。
『ナショナルジオグラフィック』2018年12月号では、東南アジアにおけるアブラヤシ農業と森林破壊、ガボンにおけるアブラヤシ農業と森林保護について報告しています。



アブラヤシから作られるパーム油の利用が、数十年前から爆発的に増えてきている。(中略)

パーム油は今や、世界全体で消費される植物油の3分の1を占める。インドなどでは調理油として一般的だし、クッキーやピザ生地、パン、口紅、せっけんなど、原材料にパーム油が入っていないものをさがすのは難しいほどだ。(中略)

こうした膨大な需要が自然環境を大きく損なってきている。東南アジアのボルネオ島では、1973年から4万平方キロを越す熱帯雨林が伐採されて焼き払われ、アブラヤシ農園に変えられてきた。2000年以降に限れば、消失した森林の半分近くがアブラヤシ栽培のためだった。

2018-12-11 21.43.23
 


世界的にみて、パーム油の需要はたかまりつづけており、その最大の消費国はインドであり、世界全体の17%をしめ、インドネシア、欧州連合(EU)、中国がそれにつづきます。2018年の世界の消費量は6550万トンになると予測され、1人当たりに換算すると約9キロをつかう計算です。

インドネシアでは、ボルネオ島とスマトラ島につづき、ニューギニア島もパーム油の生産拠点になりつつあります。またアフリカ大陸でもアブラヤシは貴重な収入源になっています。

森林伐採は野生動物におおきな打撃をあたえ、たとえば絶滅が心配されているボルネオオランウータンは、1999年から2015年までに15万頭ちかくも減少しました。また森林伐採は地球温暖化も加速させます。

断片的にのこる森林をみていると、まるでアブラヤシの海にうかぶ島のようであり、それぞれの森林をつなぐものはもはや何もありません。生態系の崩壊です。

このようななかで、アフリカ有数の森林国であるガボンの動向が注目されます。ガボンは赤道上に位置し、面積は日本の3分の2ほどで、人口は203万人、国土の76%が森林におおわれ、11%が国立公園として保護されています。ガボン政府は、アブラヤシなどの農業を発展させたいかんがえをもっていますが、東南アジアのような環境破壊はのぞまず、過去に例のない国家主導の土地利用計画をうちだしています。

環境を破壊しない計画・管理された農業は、ながい目でみればガボンの国益になるのであり、ガボンではじまったプロジェクトは森林保全と農業のバランスをみつけだす手がかりになるかもしれません。

東南アジアの国々も、目先の利益だけにとらわれて、長期的には衰退していく道をえらぶよりも、ガボンからまなばなければなりません。


▼ 参考文献
『ナショナル ジオグラフィック日本版』(2018年12月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2018年