本書のねらいは、当時(1960年代)の時代の根本問題に挑戦することにあると著者はのべています。

その根本問題とは、「人はいかにして、生きがいを感じ得るか」「人と人の心はいかにすれば通じあうか」「人の創造性はいかにすれば開発できるか」という三問であります。

これは、いいかえれば、人々は生きがいが見いだせず、人と人との心が断絶し、人間らしさがうしなわれているということであり、このような状況が、 大きな組織の成長とともにすすんだ管理社会化のもとで当時すでにあったということをしめしています。

本書は次の7つの章から構成され、上記の問いにこたえてます。

第一章 人間革命
第二章 創造愛
第三章 発想法
第四章 グループ・イメージの発想
第五章 ヴィジョンづくり
第六章 くみたて民主主義
第七章 チームワーク

これらの論考は、のちに、川喜田の「文明学」「創造論」「移動大学」「参画社会論」などに発展していきました。

そして、 自身の思想と技術を「KJ法」として体系化し、「文化成長の三段階」と「伝統体」の仮説を発表、最終的には「没我の文明」を提唱するにいたりました。

50年前の論考を今こうしてふりかえってみると、1964年の時点で、重要な仮説はすべて立てられていたことがわかります。川喜田のその後の人生は、その仮説を検証し証明する過程であったわけです。

なお、1990年代にわたしが川喜田研究所に在職していたときに川喜田から聞いた話では、上記の三問のなかでは「生きがい」がもっとも多くの人々の関心をひいたということでした。「生きがい」をいかにして見いだすかは、今日の人々にとっても大きな課題になっているのではないでしょうか。


文献:川喜田二郎著『パーティー学 -人の創造性を開発する法-』(現代教養文庫)社会思想社、1964年11月30日