デジタル一眼をつかえばきれいな写真が簡単に撮れます。簡単撮影モードからはじめましょう。レンズ交換式なのでステップアップも容易です。
河野鉄平著『大人のためのデジタル一眼入門』(インプレス)は、デジタル一眼カメラの基本から、人気のシーン別テクニックまで、 カメラと撮影方法について写真とイラストでやさしく解説しています。



  1. 準備編「デジタル一眼について知ろう」
  2. 基本編「オートモードで簡単きれい! 気軽に撮影を楽しもう」
  3. 応用編「自分で設定して撮ってみよう」
  4. 実践編「撮りたいシーン別 撮影テクニック」
  5. 巻末付録「もっと写真生活を楽しもう 2本目のレンズ、他」


デジタル一眼カメラの魅力
  • レンズが交換できる(写真表現の世界がひろがる)
  • ピントあわせがはやい(決定的瞬間をのがさない)
  • おおきなボケがつくれる(背景をぼかして雰囲気アップ)
  • くらい場所でもきれいに撮れる(ノイズがすくなく、画質がよい)


デジタル一眼カメラの種類
デジタル一眼カメラとはレンズが交換できるカメラのことであり、デジタル一眼レフカメラとミラーレス一眼カメラの2種類があります。

  • 一眼レフカメラ
  • ミラーレス一眼(ミラーレスカメラ)

これからカメラを買うのでしたら、小型・軽量で高性能、進歩が近年いちじるしいミラーレス一眼を絶対におすすめします。従来の一眼レフカメラはいずれ消えていきます。


カメラメーカーをきめる
デジタル一眼の最大の特徴はレンスが交換ができることです。わたしは長年、キヤノンのカメラをつかっていて、これまでに7本のレンズを買いました。ただしこれらのレンズはいずれもキヤノンのカメラでしかつかえません。一般的に、マウント(レンズを固定する部分)がメーカーごとにことなるので、たとえばキヤノンのレンズをニコンのカメラにはめることはできません。カメラ本体のメーカを変えるとレンズも買いかえなければなりません。

したがってレンズが何本もそろってきてからメーカーを変えることは容易なことではなく、特別な理由がないかぎり、最初に買ったカメラのメーカーをつかいつづけることになります。キヤノンかニコンかソニーか・・・。お店で実際に手にして比較してからきめるとよいでしょう。


イメージセンサーの大きいカメラの方が高性能
イメージセンサーとはレンズがとらえた光をうける部分であり、フィルムカメラでいうフィルムにあたります。そのサイズが大きいほど階調ががゆたかになり、なめらかな色彩の写真が撮れ、くらい場所でもノイズがすくなくなり、ボケ味をだしたいときも有利です。

センサーサイズにはさまざまなものがあります(図1)。大きいものほど高性能で高額になりますが、予算がゆるすなら、なるべく大きなものを搭載したカメラを選択した方がよいでしょう。イメージセンサーのサイズによってもつかえる交換レンズがことなるので、ハイアマチュアを将来的にめざすのでしたらフルサイズのカメラがおすすめです。なお おなじメーカーでも、センサーサイズのことなるカメラを販売している場合がほとんどであり、たとえばキヤノンやニコンやソニーなどでは、フルサイズのものと APS-C サイズのものがあります。センサーサイズによってもマウントがことなるので、センサーサイズとマウントを事前に確認してからカメラを購入するようにします。

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図1 イメージセンサーの大きさの種類


Amazon:
キヤノンの一眼カメラ
ニコンの一眼カメラ
ソニーの一眼カメラ

※ キヤノンのカメラは定評があり、もっともよく売れていて、ミラーレス一眼(ミラーレスカメラ)のラインアップもそこそこあります。一方、ソニーは、カメラメーカーとしては後発ですが、ミラーレスカメラではキヤノンとニコンに先行しており、ミラーレスカメラのラインアップは低価格帯から高価格帯まで豊富で、ニーズに応じた機種の選択がしやすいです。またニコンは、従来のデジタル一眼レフカメラにおいてすぐれたモデルを多数発売してきたにもかかわらずミラーレスカメラではでおくれていましたが、先日、高級ミラーレスカメラの発売を開始しました。



カメラを購入したら(撮影前の準備)
バッテリー:デジタルカメラはバッテリー(電池)がないとうごきません。予備のバッテリーを1〜2個は買っておきましょう。すべてのバッテリーを充電しておきましょう。

記録メディア:撮影し画像を記録するメディアはカメラの箱には同梱されていません。買ったカメラのメディアの種類を確認して、もっていなければ買ってください。記録メディアは SD カードをつかうカメラがおおいです。32GB〜64GBのものがおすすめです。

Amazon:SanDisk SDカード Transcend SDカード
※ SDカードといえば SanDisik が定評がありますが、Transcend も近年 注目されています。

カメラの視度調整:ファインダーがついているカメラの場合、あなたの視力にあわせて視度調整をしてください。ダイヤルをまわす方式で調整できるカメラがおおいです。調整するとクリアにみえるようになります(写真1)。


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写真1 視度調整


日付の設定:撮影日時をカメラで記録できますので、最初に設定しておきましょう。



まずは簡単撮影モードで
カメラには撮影モードがあり、簡単撮影モードと応用撮影モードに大別できます。
  • 簡単撮影モード
  • 応用撮影モード
簡単撮影モードにはオートモード、シーンモードなどがあり、シャッターをおすだけできれいな写真が簡単に撮れます。



応用撮影モード
  • プログラムモード:カメラまかせ。カメラが自動で、適正露出になる、絞りとシャッター速度を設定してくれます。
  • 絞り優先モードAv, A:自分で絞りを設定します。絞りをひらけばシャッター速度ははやくなり、絞りをとじればシャッター速度はおそくなります。
  • シャッター優先モードTv, S:自分でシャッター速度を設定します。シャッター速度をはやくすれば絞りがひらき、シャッター速度をおそくすれば絞りはとじます。
  • マニュアルモード:露出計の結果をもとに、絞りもシャッター速度も自分できめます。

まずは、プログラムモード(P, カメラまかせ)で撮影すればよいでしょう。シャッターチャンをのがすこともありません。

なれてきたら絞り優先モード(Av, A)に挑戦してみてください。背景をぼかしたいときは絞り優先モードにして、F値を小さくすれば(絞りをあければ)ピントのあう範囲がせばまり、背景がぼけます。やわらかい質感をたのしんでください。



フォーカスモードを設定する(ピントあわせのために)
カメラには、オートフォーカス(AF)機能があるのでピントは自動的にあいます。それではどこにあわせるか?
  • シングル AF(AF-S):シャッターボタンを半押しすると一度だけピントを合わせ、半押しキープでピントを固定します。静止した被写体やうごきがおそい被写体などの撮影でつかいます。
  • コンティニュアス AF(AF-C):シャッターボタンを半押し中、被写体へのピントあわせをくりかえします。スポーツやうごきまわる子供など、前後にうごく被写体を撮るのに最適のモードです。
  • 追尾 AF(トラッキング AF):シャッターボタンを半押し中、うごく被写体に対して AF ポイントが追尾してピントをあわせつづけます。規則的にうごく乗り物やうごきのおそい動物などの撮影につかいます。
  • マニュアルフォーカス(MF):手動でピントをあわせるモードです。

キヤノンのカメラの場合、「ONE SHOT」は AF-S、「AI FOCUS」は AF-S と AF-C の自動きりかえ、「AI SERVO」は AF-C にあたります。



露出のしくみ
絞りとシャッター速度
カメラは、光をとりこむことで写真を撮ります。露出とはカメラにとりこむ光の量のことです。露出は、絞り・シャッター速度・ISO 感度できまり、これら3要素のくみあわせでうつり方がかわります。

  • 絞り
  • シャッター速度
  • ISO 感度 

絞りの開け閉めでピントのあう範囲がかわります。絞りは、F値とよばれる数値であらわされ、F値がちいさいほど絞りはひらいた状態になります(図2)。絞りがひらくほど、ピントのあう範囲がせばまり、背景がぼけ、シャッター速度がはやくなります。これは、絞りをひらけばひらくほど一度にとりこめる光量が増すため、シャッターをあけている時間はみじかくてよくなるからです。

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図2 絞りとF値の関係の模式図 

図2では、右側ほど、背景がぼけやすくなります。シャッター速度があがり、ぶれにくくなります。

したがって背景をぼかした写真を撮ろうとおもったら絞りをあける設定にします(F値をさげます)。高級なレンズほどちいさいF値で撮影することができるので、余裕がでてきたら、F値のちいさいレンズに買いかえるという選択肢があります。ここに、レンズ交換式一眼カメラをつかうひとつの意義があります。


ISO 感度
ISO 感度の設定は、まずは「ISO オート」にしておけばよいでしょう。最適な ISO 感度をカメラが自動で選択してくれます。

ISO 感度は、カメラが光を感じる度合いを数値でしめしたものです。高い数値(高感度)にするほどシャッター速度ははやくなり、絞りを絞り込んでもはやいシャッター速度で撮影できます。ぶれにくくなります。くらい場所や夜の撮影では高感度撮影がとくに威力を発揮します。ただし高感度になるほど画質がわるくなり、ザラザラとしたノイズがでてくるので注意してください。



交換レンズ
レンスの種類
レンズは焦点距離によって広角・標準・望遠にわけられます。焦点距離とは、イメージセンサーからレンズの焦点までの距離(単位 mm)のことです。焦点距離がみじかいほどひろい範囲をうつせ(広角レンズ)、焦点距離がながいほどとおくのせまい範囲をうつせます(望遠レンス)。
  • 広角レンズ
  • 標準レンズ
  • 望遠レンズ

レンズは、焦点距離が変えられるズームレンズと変えられない単焦点レンズがあります。一般的には、ズームレンズをつかうと便利です。
  • ズームレンズ
  • 単焦点レンズ

レンズの特徴
広角レンズ、望遠レンズ、ズームレンズなど、レンズはうつる範囲がかえられるだけでなく、さまざまな作画効果をうみだします。

広角レンズ(ズームレンズの広角側)
  • 焦点距離がみじかくなる。
  • ひろい範囲がうつせる。
  • ピントがあいやすくなる。
  • 遠近感が強調される。

望遠レンズ(ズームレンズの望遠側)
  • 焦点距離がながくなる。
  • とおくのものがおおきくうつせる。
  • おおきなボケがでやすくなる。
  • 背景がちかづく(圧縮効果)。
  • 手ブレしやすくなる。

たとえばズームレンズの望遠側をつかって絞りをあけるほど(F値をさげるほど)背景ボケの描写ができます。


35mm判換算とは
写真の画角(うつる範囲)はレンズの焦点距離とセンサーサイズできまります。デジタル一眼はセンサーサイズが機種ごとにことなるため、おなじ焦点距離のレンズをつかっても画角が変化します。これだとわかりにくいため、35mm 判フィルムの画角におきかえた数値が 35mm 判換算値であり、「○○mm 相当の画角」というあらわしかたをします。

実焦点距離が 50mm のレンズをつけたとき、センサーサイズによって 35mm 判換算値は以下のようにことなります。
  • フルサイズ:50mm X 1倍 = 50mm
  • APS-C サイズ:50mm X 1.5倍 = 75mm 相当
  • APS-C サイズ(キヤノン):50mm X 1.6倍 = 80mm 相当
  • マイクロフォーサーズ:50mm X 2倍 = 100mm 相当

たとえば 焦点距離 が 18mm〜55mm と表示されているキヤノンのズームレンズを APS-C サイズ(キヤノン)のカメラでつかった場合は、実際の画角は 28.8mm〜88mm になります。このようにセンサーサイズがフルサイズではないカメラでは画角に注意してください。

通常、レンズの仕様・性能はレンズの名前でわかるようになっています。たとえばキヤノンの標準ズームレンズ「EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM」ではつぎのとおりです。
  • EF-S : キヤノン APS-C サイズ専用レンズ
  • 18-55mm : 焦点距離
  • F3.5-5.6 : 広角のときのF値が3.5、望遠のときのF値が5.6
  • IS : 手ぶれ補正機能
  • STM : 高性能モーター

2本目のレンズ
一般的には、標準ズームレンズが最初のレンズになりますので、2本目は、広角ズームレンズか望遠ズームレンズということになるでしょう。風景などを撮るなら広角ズームレンズ、動物やスポーツ選手などを撮るなら望遠ズームレンズといった選択が普通です。

レンズの性能をしめす基本的な値は開放F値(最小F値)です。F値がちいさいほど、ボケを大きくすることができ、暗所でも有利であり、当然、F値がちいさいレンズほど高額になります。

2本目のレンズとしては、コストパフォーマンスのいいサードパーティー製のレンズも検討するとよいでしょう。カメラメーカーがつくる純正レンズよりも安価でありながら品質や性能はほとんどかわりません。タムロンやシグマといったレンズメーカーの製品には魅力的なものがおおいです。キヤノン・ニコン・ソニー・ペンタックスといったカメラメーカーのそれぞれのマウントに対応したものを発売しています。購入時には、レンズのマウントに注意してください。


高倍率ズームレンズ
高倍率ズームレンズは、28〜300mm といった、広角から望遠までを網羅する万能レンズです。レンズを何本ももちあるきたくない旅や登山などで威力を発揮します。レンズ交換が必要ないのでシャッターチャンスをのがすこともありません。場合によっては、最初のレンズとしてもよいです。ただし画質は若干おちる場合があるので注意してください。


単焦点レンズ
単焦点レンズはズームのきかないレンズですが、開放F値がちいさく、うつくしいボケ味をだせる高性能レンズが比較的安価で手にはいります。ちいさくてコンパクトなものがおおく、もちはこびも便利でであり、スナップ撮影にも適しています。
 

マクロレンズ
花や昆虫をおおきく撮影したいときなどに威力を発揮します。あたかも、自分がちいさな世界にとびこんだような感覚にひたれます。

 

カメラの保管と手入れ
カメラ、とくにレンズにとって一番おそろしいのがカビです。レンズにカビがはえたら大変なので、カメラ用のドライボックスにいれて保管しておくとよいでしょう。ナカバヤシなどから、コスパにすぐれた製品が発売されています。防カビ剤もあります。カビがもしはえてしまったらメーカ修理にだしましょう。そのほかに、ブロアーやレンズクリーナーなどもあるとよいです。クリーニングキットがおすすめです。


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写真は、撮れば撮るほどいい写真が撮りたくなります。ほかの人の撮った写真の良し悪しもみえてきます。プロの写真はやっぱりすばらしい。

撮影の腕をみがくことももちろん必要ですが、なるべく高性能のカメラをつかうことによって技術不足をおぎなうことができます。

デジタル一眼はむずかしいとおもっている人がいますが、簡単撮影モードをつかえばシャッターをおすだけで誰でも簡単にいい写真が撮れます。むずかしいことはなにもありません。ミラーレスのレンズキットがおすすめです。


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▼ 参考文献
河野鉄平著『大人のためのデジタル一眼入門』インプレス、2015年