伝統文化をいかし、イベントをおこないながら、ハヤブサの人工繁殖をしている人々がいます。
『ナショナルジオグラフィック』2018年10月号の「シリーズ 鳥たちの地球」ではハヤブサをとりあげています。
狩りの相棒として、人間と独自の関係をきずいてきたハヤブサですが絶滅が危惧されれいます。中東のドバイで繁殖にとりくんでいる人々がいます。
アラブには、鷹狩り(ハヤブサなどをつかっておこなう狩り)の伝統があります。古代メソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」をみると、現在のイラクには約4000年前から鷹狩りがあったことがうかがえます。ハヤブサは、越冬のためにアジアからアフリカへわたる際にアラビア半島を通過します。アラブの遊牧民ベドウィンたちはそこでハヤブサをつかまえて訓練し、鷹狩りをし、狩りの時期がおわるとはなしていました。
現在では、世界の鷹匠の半数以上がアラビア半島一帯にすんでいます。ヨーロッパでは鷹狩りは、王侯貴族の趣味のたしなみでしたが、ここでは、アラビア砂漠でいきぬいていく生活手段でした。銃が到来するまではハヤブサが人々の生活をささえていました。鷹狩りは、アラブの文化のなかで重要な位置をしめ、イスラム教の聖典コーランのなかでもハヤブサがとらえたものは清浄なので食べてもよいとみとめています。
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの王子は、一般市民も鷹狩りに親しめるようにと、2000年代の初頭にハヤブサの競技会をはじめました。決められた距離のなかで、おとりをいかにはやくつかまえるかをきそいます。これによってハヤブサを飼育する人が急増しました。
王子らは、ハヤブサの人工繁殖もおこない、この活動をスコットランドにもひろげています。雄の精液を採取して人工授精をし、ハヤブサとシロハヤブサの交雑することもおこなっています。いずれは、人工繁殖させたシロハヤブサを野外にはなして、北極圏の個体数の減少に歯止めをかけたいそうです。
このような活動が動物保護や環境保全になるのかどうかはもうしばらく様子をみなければわかりませんが、一般市民も参加して、伝統文化をいかし、イベントをおこなうというとりくみは日本その他の国でも参考になるとおもいます。教育的・思想的に提言をしているだけだと効果があがらないことはこれまでの歴史がしめしているとおりです。
それにしても、アラビア半島一帯に鷹狩りの伝統文化があったことはしりませんでした。渡り鳥と人間のかかわりのなかで伝統文化がうまれたのであり、自然環境と住民とのやりとりのなかから地域に根差した文化がうまれることの事例(証拠)として重要です。これは外来文化とはちがいます。
▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本版』日経ナショナルジオグラフィック社、2018年
狩りの相棒として、人間と独自の関係をきずいてきたハヤブサですが絶滅が危惧されれいます。中東のドバイで繁殖にとりくんでいる人々がいます。
ハヤブサの密輸はまだ世界の多くの地域で続いている。保護活動家たちの報告によると、ハヤブサやセーカーハヤブサは渡りの経路であるパキスタンで捕獲され、中東の裕福な買い手に引き取られるという。ロシア北極圏のシロハヤブサも密輸されている。現在では、絶滅危惧種に指定されているのはセーカーハヤブサだけだが、一部の地域でシロハヤブサの数が減少しているという報告もある。生息域の消失と違法取引が重なり、さらに気候変動の影響も加わって、特に北極圏ではハヤブサの存続が危ぶまれている。
アラブには、鷹狩り(ハヤブサなどをつかっておこなう狩り)の伝統があります。古代メソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」をみると、現在のイラクには約4000年前から鷹狩りがあったことがうかがえます。ハヤブサは、越冬のためにアジアからアフリカへわたる際にアラビア半島を通過します。アラブの遊牧民ベドウィンたちはそこでハヤブサをつかまえて訓練し、鷹狩りをし、狩りの時期がおわるとはなしていました。
現在では、世界の鷹匠の半数以上がアラビア半島一帯にすんでいます。ヨーロッパでは鷹狩りは、王侯貴族の趣味のたしなみでしたが、ここでは、アラビア砂漠でいきぬいていく生活手段でした。銃が到来するまではハヤブサが人々の生活をささえていました。鷹狩りは、アラブの文化のなかで重要な位置をしめ、イスラム教の聖典コーランのなかでもハヤブサがとらえたものは清浄なので食べてもよいとみとめています。
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの王子は、一般市民も鷹狩りに親しめるようにと、2000年代の初頭にハヤブサの競技会をはじめました。決められた距離のなかで、おとりをいかにはやくつかまえるかをきそいます。これによってハヤブサを飼育する人が急増しました。
王子らは、ハヤブサの人工繁殖もおこない、この活動をスコットランドにもひろげています。雄の精液を採取して人工授精をし、ハヤブサとシロハヤブサの交雑することもおこなっています。いずれは、人工繁殖させたシロハヤブサを野外にはなして、北極圏の個体数の減少に歯止めをかけたいそうです。
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このような活動が動物保護や環境保全になるのかどうかはもうしばらく様子をみなければわかりませんが、一般市民も参加して、伝統文化をいかし、イベントをおこなうというとりくみは日本その他の国でも参考になるとおもいます。教育的・思想的に提言をしているだけだと効果があがらないことはこれまでの歴史がしめしているとおりです。
- 伝統文化
- イベント
それにしても、アラビア半島一帯に鷹狩りの伝統文化があったことはしりませんでした。渡り鳥と人間のかかわりのなかで伝統文化がうまれたのであり、自然環境と住民とのやりとりのなかから地域に根差した文化がうまれることの事例(証拠)として重要です。これは外来文化とはちがいます。
▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本版』日経ナショナルジオグラフィック社、2018年