アマゾン川流域の森林破壊がすすんでいます。先住民たちは孤立しています。人類が本来もっていた貴重な文化が地球上からきえようとしています。
『ナショナルジオグラフィック』2018年10月号はアマゾン川流域でくらす孤立部族(先住民)を特集しています。



ブラジル東部のアマゾン川流域に位置するマラニョン州ではここ数年、広さ4150平方キロのアラリボイア先住民居留地などの保護された森林を破壊する違法伐採が横行し、それに対抗するため、自警団が次々に結成されてきた。森林破壊に伴い、野生動物もだんだんと姿を消し、アマゾン川のいくつもの支流の水源となっている湖も次々に干上がっている。

縮小し続ける森の中心部に追い込まれたアワの人々はとりわけ脆弱だが、存続が危ぶまれる孤立部隊は彼らだけではない。今も世界に残る孤立部隊の大半はアマゾン川流域に集中していて、この地域全体で推定50〜100のこうした部族がいるとみられ、その人口は合計で5000人ほどにのぼる。


機械文明から独立した場所でうけつがれてきた人類本来の生活様式の痕跡が地球上からきえようとしています。人類がもっていた伝統的な遺産がなくなり、機械文明に毒された画一的な社会で世界がみたされようとしています。

現在、およそ600人いるアワの人々のうち、推定100人程度が森のなかを移動し、狩猟採集生活をおくっています。アワの人々の孤立した集団は4ヵ所ある居留地のうちの3ヵ所にいますが、そのなかでも、アラリボイアの中心部にくらす60〜80人は、ほとんど外部と接触したことがなく、今でも弓矢で狩りをし、自然の恵みだけをたよりにくらしています。

彼らがいるマラニョン州にあった森林の75%はすでに消滅し、樹木は一部にしかのこっていません。のこされた森林は法律で保護されていますが違法伐採があとをたたず、違法伐採の犯罪網がアワの人々をおびやかしています。先住民の権利擁護団体、サバイバル・インターナショナルは、2012年、アワを「世界でも最も存続が危ぶまれる部族」として、緊急の保護をうったえました。

ブラジル先住民協会も、ブラジルの300あまりの専従部族の声を政治に反映させる活動にとりくんでいます。

しかし先住民問題を担当する政府機関、国立先住民保護基金は、ブラジル国会内の企業支持勢力により予算が大幅に削減され、孤立部族の保護は困難な状況になっています。先住民は自力で森をまもらなければなりません。


広さ1730平方キロのカル先住民居留地。そのすぐそばには鉄道が敷かれ、鉄鉱石を満載した貨物列車が日に何度も通過する。世界最大の露天掘りの鉄鉱山、カラジャス鉱山から大西洋に臨む港湾まで900キロを走る列車だ。港に到着した鉄鉱石は船積みされて、主に中国へ輸出される。2017年の産出量は1億4700万トンにのぼった。

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アマゾンの奥地で採掘された鉄鉱石は地球の反対側まではこばれます。これは、グローバル時代の産業技術、機械文明の勝利を象徴しています。

鉄道がきて、先住民の土地は分断され、いくつもの共同体がばらばらになりました。入植者や土地投機でかせごうとする人々がどっとおしよせました。先住民は銃声におびえ、白人たちがはなった犬に襲撃されました。




アワの人々は、「カラワラ」という神聖な儀式をおこないます。


裸で立った5、6人の長老の頭や手足、胸に、女性たちがオウギワシとトキイロコンドルの翅をつける。

「長老たちが真の人間、つまりアワであることをカラワラに示すために、羽根をつけるのです。白人と間違えられて殺されないようにね」

この世のものならぬ哀調を帯びた詠唱が流れるなか、長老たちは閉ざされた小屋の周りを踊って回って、恍惚状態にはいっていった。(中略)祖先の霊から与えられた恵みを、愛する家族に吹きかける。


この儀式をとおして、森でくらしていた時代にたちかえることができます。祖先が森をみまもり、人間たちをまもってくれます。人間が本来もっていいた貴重な文化がここにはまだのこっています。

しかし文化を破壊する機械文明がもうそこまでせまってきています。人類と地球を最終的に破滅へみちびく機械文明。アマゾンの現実は地球の縮図とかんがえたほうがよいでしょう。全体の動向が部分にあらわれています。


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▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本版』日経ナショナルジオグラフィック社、2018年