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昆虫の巨大模型
(交差法で立体視ができます)
記載・分類からはじまり、構造と機能の分析的研究をへて、生態学的研究、昆虫の進化論へと昆虫研究は発展してきました。標本観察とフィールドワークをふまえて、さまざまな昆虫たちの相似と相異に着目すれば、類縁関係と系統を類推することができます。
特別展「昆虫」(国立科学博物館)は昆虫についてまなべるよい機会でした。膨大な昆虫標本と展示演出で昆虫の世界をわかりやすく解説していました。

昆虫学は、専門家・在野の研究家・アマチュア研究家たちの協力によって発展してきました。彼らは、昆虫少年の心をもちつづけて調査・研究をしていました。


分類
昆虫たちは実に多様であり、たくさんの種類があってわかりにくい印象をもちますが、昆虫のグループ(目(もく))を参照し、それぞれの場所(環境)ごとに昆虫相をみていくと理解がふかまります。

昆虫の分類は昆虫学のもっとも基礎的な研究です。さまざまな昆虫たちの相似と相異に気がつけば、対象を識別することができ、昆虫たちの類縁関係と進化を類推することができます。


構造と機能
昆虫の身体はとても精巧な構造をもっており、その機能はとても高性能です。構造と機能は密接な関係にあり、構造即機能が昆虫が存続している現象であるといってよいでしょう。3D 空間のなかで昆虫の構造をとらえるとともに、時間的な変化もしっかりみるようにします。


環境
昆虫とその環境とをセットにして「昆虫-環境」システムをとらえるようにすると昆虫の能力がよく理解できます。昆虫も、「インプット→プロセシング→アウトプット」をしています。

環境への昆虫の適応能力はとてもたかく、また昆虫は、生態系のなかで重要は役割をになっています。たとえばゴキブリは人間にきらわれていますが森林生態系においていなくてはならない存在です。

地球には、さまざまな種類の昆虫たちがいますが、彼らは、棲み分けることによって地球上で共存しています。昆虫の多様性は、地球上の環境の多様性を反映しています。昆虫は、環境についてかんがえなおす機会をあたえてくれます。


社会
昆虫は、社会をつくっていきています。会場では、アリとシロアリの巣や生活様式についてくわしく紹介していました。個体をこえた高次元な生命の場がみとめられます。


進化
昆虫は、地球上のさまざまなな環境にたくみに適応しながら進化してきました。昆虫の起源は4億8000万年前と推定されています。古生代の後期に大繁栄し、その後は、身体を小さくしながら進化しました。大きな動物と共存しながら生態系をつくりだしました。進化と生態系の形成をとおして、生命の場は、分化しつつシステム化することに気がつくことが大事です。




以上のように昆虫の研究は、さまざまな昆虫の観察・記載・分類をする分類学的研究からはじまり、昆虫の化学分析、DNA 分析、構造・機能の分析などの分析的研究をへて、生態学的研究や進化論といった総合的研究へ発展します。ここには、〈記載・分類→分析→総合〉とった3段階の過程がみとめられ、フィールドワークと類推はこのような段階をふみしめながら実践すると効果的です。実際にはこの方法は、昆虫学以外のあらゆる課題に応用することができます。

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図1 認識の3段階モデル


▼ 記事リンク
多様で神秘的な世界 - 特別展「昆虫」の概観(国立科学博物館)-
昆虫の進化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
昆虫の多様性 - 特別展「昆虫」第2展示室(国立科学博物館)-
棲み分けて共存する - 特別展「昆虫」第3展示室(国立科学博物館)-
昆虫も情報処理をしている - 特別展「昆虫」第4展示室(国立科学博物館)-
少年の心をわすれない - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(1)-
相似と相異に着目する - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(2)-
昆虫の構造と機能 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
昆虫の社会 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
【閲覧注意:Gの部屋】自分の家の環境にも心をくばる - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
分化とシステム化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
特別展「昆虫」(国立科学博物館)(まとめ)

▼ 注1
特別展「昆虫」
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年7月13日~10月8日
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▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『特別展 昆虫』(図録)読売新聞社・フジテレビジョン発行、2018年