気象学の基本知識を身につけておくと天気予報がよくわかります。
非常につよい台風24号が、九州や四国の一部を暴風域にまきこみながら北東へすすんでいます。
気象庁の発表によりますと、台風24号は、2018年9月30日午後3時には、高知県足摺岬の南60キロの海上を1時間に45キロの速さで北東へすすんでいるとみられます。中心の気圧は950ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は60メートル、中心の南側190キロ以内と北側150キロ以内では、風速25メートル以上の暴風がふいています。
台風24号は、30日夕方から夜にかけて、四国や近畿にかなり接近して上陸するおそれがあり、東日本や北日本をふくむ各地で記録的な暴風や高潮になるおそれがあるほか、各地で大雨となる見込みで厳重な警戒が必要です。
ここで、台風など、気象現象を生みだす基本要素についてあらためて確認しておきたいとおもいます。
これらの基本要素を手がかりにして気象現象をみていきたいとおもいます。
「雲」とは、空気にふくまれていた水蒸気からできた水滴や氷の粒「雲粒」があつまったものです。雲粒は、雲のなかでほかの雲粒とくっついてしだいに成長し、水滴の粒が大きくなると落下速度が大きくなり、途中で蒸発せずに地表にとどきます。これが「雨」です。
「台風」とは、秒速17.2メートル以上の風をともなう「熱帯低気圧」のことであり、熱帯低気圧とは、熱帯の海水面で発生する低気圧のことです。熱帯の海面で上昇気流が発生すると、豊富にある水蒸気がつぎつぎに水滴にかわり、背の高い「積乱雲」をつくります。これが台風のもとになります。積乱雲から放出される熱があらたな積乱雲をつぎつぎに生みだして巨大化していきます。
台風は、巨大化をつづけながら、回転もします。この回転の遠心力により台風の中心付近の雲はしだいに周囲へよせられていきます。そして台風のつよさが最盛期になると「眼」とよばれる雲のない空間ができます。この眼が、はっきりとみえる台風ほど強大で、風が強い傾向にあります。今回の台風24号でも眼がはっきりみえます。また「眼の壁」は、台風のなかでもっとも雨のつよい場所のひとつであり、警戒が必要です。
あたたかい赤道付近では上昇気流が発生、北へむかう気流はコリオリの力によって北半球では東にそれていきます。北緯30度付近に到達すると、一部の空気は下降気流となって地表にもどり、もどった気流は、コリオリの力によって南西にむかいます。こうして低緯度付近で南西にすすむ風が「貿易風」です。
赤道付近で発生した上昇気流のうち、日本上空などの北緯30度をこえた大気は、コリオリの力によって、ほぼ真東にむかってふくようになります。その結果、地球を西から東へむかって一周する大気のながれができます。これが「偏西風」です。偏西風を利用することで、たとえばヨーロッパから日本へむかう飛行機は、その逆よりも飛行時間が1時間も短縮されます。日本では、偏西風があるために天気は西からかわりりやすく、西の方が雨ならいずれ雨がふると予測できます。
2月なかばになると「春一番」がふきます。これは、日本海にある低気圧にむかって、太平洋側にある高気圧からふきこむ風です。
6月上旬〜7月下旬にかけては「梅雨」にはいります。オホーツク海高気圧からふきだす風と、太平洋高気圧からふきだす風が日本列島のうえで衝突します。衝突してできる境界を「梅雨前線」とよびます。ここではたえまなく水蒸気が供給され、上昇気流によって雲が発生し、ひろい範囲で雨がふります。
秋になると、日射量がへるために太平洋高気圧の勢力がよわまり、そのかわりに偏西風がつよまります。偏西風にのって、中国大陸付近で発生した高気圧と低気圧が交互に日本にやってきます。偏西風にのって東へ移動する高気圧を「移動性高気圧」といいます。
冬のシベリアの内陸地方では、日射量のすくなさと放射冷却によって地表がひえ、高度1〜2キロメートルの空気の層がひやされて下降します。こうしてできるのがシベリア高気圧です。日本列島の西側にシベリア高気圧が、日本列島の東側に低気圧がある状態を「西高東低の気圧配置」とよびます。シベリア高気圧から低気圧にむかって風がふき、日本列島をはしる山脈にぶつかって雪をふらせます。
せまい範囲で突然発生する予測のむずかしい豪雨は「ゲリラ豪雨」とよばれます。積乱雲が発達し局地的な大雨をもたらします。複数の積乱雲が線状につらなった雨域は「線状降水帯」いいます。24時間以内に中心気圧が低下する低気圧が「爆弾低気圧」で、大雨・雷雨・突風を発生させることがあるので警戒が必要です。
このような気象に関する基礎的な知識をもっているだけで天気予報がよくわかるようになります。
今日では、現在地の天気情報をリアルタイムでスマホでみることができます。3時間前までさかのぼって雲のうごきをみたり、1〜6時間さきまでの雲のうごきの予測をみることもできます。また「ひまわり8号」の衛星画像もみることができます。
大雨や台風がちかづいてくるようでしたら、これらの情報を頻繁にチェックし、避難の準備をすすめます。土砂災害や洪水にそなえます。
▼ 関連記事
ハザードマップ・大雨警報・避難 -「西日本豪雨」(Newton 2018.10号)-
「重ねるハザードマップ」を利用して土砂災害にそなえる
居住地の地形と地質を確認しておく - 土砂災害対策 -
スーパー台風にそなえる -「スーパー台風の到来を予測せよ」(Newton 2017.11号)-
集中豪雨にそなえる -『天気予報の科学』-
▼ 参考文献
『気象のきほん』(Newtonライト)ニュートンプレス、2018年
気象庁の発表によりますと、台風24号は、2018年9月30日午後3時には、高知県足摺岬の南60キロの海上を1時間に45キロの速さで北東へすすんでいるとみられます。中心の気圧は950ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は60メートル、中心の南側190キロ以内と北側150キロ以内では、風速25メートル以上の暴風がふいています。
台風24号は、30日夕方から夜にかけて、四国や近畿にかなり接近して上陸するおそれがあり、東日本や北日本をふくむ各地で記録的な暴風や高潮になるおそれがあるほか、各地で大雨となる見込みで厳重な警戒が必要です。
ここで、台風など、気象現象を生みだす基本要素についてあらためて確認しておきたいとおもいます。
- 気象に最も大きな役割を果たす要素は気温です。
- 上空ほど寒く、暖かい空気と冷たい空気の入れかわりが気象現象を生みます。
- 「上昇気流」こそ、天気を変化させる重要要素です。
- 寒気と暖気の接する境界が「前線」です。
- 強く暖められた場所では上昇気流が発生し、地表の気圧は低くなります。「低気圧」です。
- 上空にのぼった空気は冷やされて離れた場所で下降気流になって地表にもどり、地表の気圧が高くなります。「高気圧」です。
- 地表付近では、高気圧から低気圧に向かって風が吹きます。
これらの基本要素を手がかりにして気象現象をみていきたいとおもいます。
「雲」とは、空気にふくまれていた水蒸気からできた水滴や氷の粒「雲粒」があつまったものです。雲粒は、雲のなかでほかの雲粒とくっついてしだいに成長し、水滴の粒が大きくなると落下速度が大きくなり、途中で蒸発せずに地表にとどきます。これが「雨」です。
「台風」とは、秒速17.2メートル以上の風をともなう「熱帯低気圧」のことであり、熱帯低気圧とは、熱帯の海水面で発生する低気圧のことです。熱帯の海面で上昇気流が発生すると、豊富にある水蒸気がつぎつぎに水滴にかわり、背の高い「積乱雲」をつくります。これが台風のもとになります。積乱雲から放出される熱があらたな積乱雲をつぎつぎに生みだして巨大化していきます。
台風は、巨大化をつづけながら、回転もします。この回転の遠心力により台風の中心付近の雲はしだいに周囲へよせられていきます。そして台風のつよさが最盛期になると「眼」とよばれる雲のない空間ができます。この眼が、はっきりとみえる台風ほど強大で、風が強い傾向にあります。今回の台風24号でも眼がはっきりみえます。また「眼の壁」は、台風のなかでもっとも雨のつよい場所のひとつであり、警戒が必要です。
あたたかい赤道付近では上昇気流が発生、北へむかう気流はコリオリの力によって北半球では東にそれていきます。北緯30度付近に到達すると、一部の空気は下降気流となって地表にもどり、もどった気流は、コリオリの力によって南西にむかいます。こうして低緯度付近で南西にすすむ風が「貿易風」です。
赤道付近で発生した上昇気流のうち、日本上空などの北緯30度をこえた大気は、コリオリの力によって、ほぼ真東にむかってふくようになります。その結果、地球を西から東へむかって一周する大気のながれができます。これが「偏西風」です。偏西風を利用することで、たとえばヨーロッパから日本へむかう飛行機は、その逆よりも飛行時間が1時間も短縮されます。日本では、偏西風があるために天気は西からかわりりやすく、西の方が雨ならいずれ雨がふると予測できます。
2月なかばになると「春一番」がふきます。これは、日本海にある低気圧にむかって、太平洋側にある高気圧からふきこむ風です。
6月上旬〜7月下旬にかけては「梅雨」にはいります。オホーツク海高気圧からふきだす風と、太平洋高気圧からふきだす風が日本列島のうえで衝突します。衝突してできる境界を「梅雨前線」とよびます。ここではたえまなく水蒸気が供給され、上昇気流によって雲が発生し、ひろい範囲で雨がふります。
秋になると、日射量がへるために太平洋高気圧の勢力がよわまり、そのかわりに偏西風がつよまります。偏西風にのって、中国大陸付近で発生した高気圧と低気圧が交互に日本にやってきます。偏西風にのって東へ移動する高気圧を「移動性高気圧」といいます。
冬のシベリアの内陸地方では、日射量のすくなさと放射冷却によって地表がひえ、高度1〜2キロメートルの空気の層がひやされて下降します。こうしてできるのがシベリア高気圧です。日本列島の西側にシベリア高気圧が、日本列島の東側に低気圧がある状態を「西高東低の気圧配置」とよびます。シベリア高気圧から低気圧にむかって風がふき、日本列島をはしる山脈にぶつかって雪をふらせます。
せまい範囲で突然発生する予測のむずかしい豪雨は「ゲリラ豪雨」とよばれます。積乱雲が発達し局地的な大雨をもたらします。複数の積乱雲が線状につらなった雨域は「線状降水帯」いいます。24時間以内に中心気圧が低下する低気圧が「爆弾低気圧」で、大雨・雷雨・突風を発生させることがあるので警戒が必要です。
*
このような気象に関する基礎的な知識をもっているだけで天気予報がよくわかるようになります。
今日では、現在地の天気情報をリアルタイムでスマホでみることができます。3時間前までさかのぼって雲のうごきをみたり、1〜6時間さきまでの雲のうごきの予測をみることもできます。また「ひまわり8号」の衛星画像もみることができます。
大雨や台風がちかづいてくるようでしたら、これらの情報を頻繁にチェックし、避難の準備をすすめます。土砂災害や洪水にそなえます。
▼ 関連記事
ハザードマップ・大雨警報・避難 -「西日本豪雨」(Newton 2018.10号)-
「重ねるハザードマップ」を利用して土砂災害にそなえる
居住地の地形と地質を確認しておく - 土砂災害対策 -
スーパー台風にそなえる -「スーパー台風の到来を予測せよ」(Newton 2017.11号)-
集中豪雨にそなえる -『天気予報の科学』-
▼ 参考文献
『気象のきほん』(Newtonライト)ニュートンプレス、2018年