デザインについて理解をふかめることができました。あらゆる分野でデザインが必要です。シンボルマークには情報が統合されています。
企画展「デザインあ展 in TOKYO」(注1)の関連イベントとして、企画展の総合ディレクターをつとめる佐藤卓さんのトークイベント「デザインて、なんだろう?」が開催されました(注2)。佐藤卓さん自身のうみだしてきた作品とその制作プロセスの紹介をとおして、デザインとは何か、アイデアはどのようにしてうまれるのかについて理解をふかめることができました。 


ニッカ、ピュアモルト の瓶は、ウイスキーをのみおわったら瓶をすてるのではなく、ほかのものをいれる容器としてつかえるデザインにしました。ラベルも、水であらえば簡単におちるようにしました。ただしそのことはどこにも説明していません。自分で発見するよろこびがあったほうがおもしろいです。

ロッテ、チューインガム をリニューアルするときには、それまでつかわれていたペンギンのデザインをいかしまた。2羽目のペンギンだけは手をあげています。人は、何かをみつけると他人にはなしたくなるものです。

千鳥屋、チロリアン の箱には、カラフルな民族衣装をきた5人のチロリ人をえがきました。5人の口をよくみると、左から「チ」「ロ」「リ」「ア」「ン」といっています。

大正製薬、ゼナ では、何だかわからないマークをつくりました。しかし見る人は何かを感じるはずです。

ロッテ、キシリトールガム では、まったくあたらしい商品、まったくあたらしいデザインをしました。

金沢21世紀美術館 では、上空からみたら建物の構造がそのままシンボルマークになることがわかりました。

明治、おいしい牛乳 では、あたりまえのことをあたりまえに表現しました。

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これら以外にも多数のデザインが紹介されました(注3)。

佐藤卓さんは、仕事の依頼がきたら徹底的な取材をまずします。先方の話をききます。関係各所にでかけます。古本屋にもいきます。多様な情報をたくさん内面にインプットするということでしょう。

そして自我をすてて、自分を無にします。するとデザインがおのずとうかびあがってきます。あるいはおりてきます。ただしうかびあがってくるまでには時間がかかることがあるので、いくつもの仕事を同時並行にすすめて、ある仕事に関してうかんでくるまでのあいだに、ほかの仕事をすすめるといったやり方をしています。ひとつの仕事がいきづまったときにはほかの仕事にとりくみます。並列的な処理をしているということでしょう。

今日は情報量がとてもおおい時代なので、デザインにかぎらず何とか目立たせよう、目立とうとする人がいますが、それではうまくいきません。目立たせようとするのではなく、本質を統合して表現するようにします。そのためにはその本質を事前に把握しておかなければなりません。すると表現されたもの(アウトプットされたもの)は結果的に単純になります。世のなかに情報量がおおいからこそ、単純なものほどわかりやすいということになります。

デザインの手本としては自然がもっともすぐれています。自然のデザインからたくさんのことをまなべます。デザインの視点から自然をみなおすことも大事でしょう。

そしてあらゆるものの関係のなかでデザインがうまれます。依頼者との信頼関係も重要です。デザインは、それをうけとった人がここちよさを体で感じるようなものがのぞましいです。またうけとった人がみずから想像できる仕掛けや余地をつくっておきます。

デザインは言葉や論理ではなく、視覚的・直観的であるので、理屈をすっとばして相手の心のなかに直接はいりこみます。するとその人は行動をおこしやすくなります。

今日、高度情報化社会になり、デザインを必要としない分野はひとつもありません。デザインは分野のひとつではなく、仕事をすすめるとき、アウトプットをするとき、あらゆる分野でデザインが必要です。

なお今回の話を、人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からとらえなおすとつぎのようになるのではないかとおもいます。

  1. 大量インプット
  2. 並列プロセシング
  3. 統合アウトプット

まずは、多種多様な情報を大量に内面にインプットする努力が必要です。仕事は、いくつもの仕事(課題)を並列的にすすめます。そして多様な情報を統合してアウトプット(表現)します。


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イメージとアイデアをうみだす - 企画展「デザインあ展 in TOKYO」(日本科学未来館)-

▼ 注1
企画展「デザインあ展 in TOKYO」
特設サイト
※ 写真撮影が許可されています。
会場:日本科学未来館(1階 企画展示ゾーン)
会期:2018年7月19日~10月18日



▼ 注2
佐藤卓氏 トークイベント「デザインて、なんだろう?」(企画展「デザインあ展 in TOKYO」関連イベント)
会場:日本科学未来館(7階 未来館ホール)
日時:2018年9月16日 16:30~18:00

▼ 注3(参考サイト)
株式会社 TSDO(佐藤卓さんのオフィス)
※ デザインの実例が参考になります。