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キヤノン EOS R SYSTEM の展示
(平行法で立体視ができます)
一眼レフカメラからミラーレスカメラへ、カメラの歴史がかわります。カメラは情報機器になりました。写真に、メッセージをこめて発信することが重要です。
2018年9月5日、キヤノンは、35mm フルサイズの CMOS センサーを搭載したミラーレスデジタルカメラ「EOS R」を発表しました。9月15日、東京・品川にあるキヤノン S タワーで体験イベントが開催されたのでいってきました。

ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -



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カメラ本体「EOS R」にくわえ、新設計の「RF レンズ」4本、マウントアダプター4個も展示されていました。キヤノンのデジタルカメラ全体のなかではハイアマチュアモデルに位置します。



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撮影コーナーがあり、実機を手にしてためし撮りができました。メモリーカードは SanDisk SD UHS-II がつかわれていました(データはもちかえれません)。



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EOS R を手にしてみると、キヤノン一眼レフカメラの上位モデル(EOS 5D)と同程度の性能をもつにもかかわらず、小型で軽量になっています。軽快にもちあるけるでしょう。新開発の電子ビューファインダーはたいへん見やすく、従来の一眼レフカメラの場合は撮影してから写真を確認していましたが、このカメラでは、電子ビューファインダーあるいはカメラ背面のモニターをみながら、撮影するまえに各種設定をかえながら画像の確認ができます。撮るまえに写真がわかる。このメリットははかりしれません。また内部にミラーがないのでミラー・ショックもなく、ぶれもおきにくいです。今後、ハイアマチュアモデルのデジタルカメラを買う人は、一眼レフカメラではなくミラーレスカメラを選択したほうがよいでしょう。なお写真のレンズは、RF24-105mm F4 L IS USM であり、あたらしい RF マウントのレンズです。




従来の一眼レフカメラでは、レンズがとらえた光をカメラのなかにある鏡に反射させて、光学ファインダーを通して画像を見ます。ドイツ語のシュピーゲル・レフレックス(鏡の反射)が「レフ」の語源です。「一眼」とは、二眼カメラではなく、レンズ1本をつかうということです。一眼レフカメラは、20世紀中盤以降から現在にいたるまで、フィルムカメラからデジタルカメラの時代まで、レンズ交換可能なカメラの主流となってきた方式です。

これに対してミラーレスカメラでは、ミラーがないかわりに、レンズがとらえた光をデータに変換し、それを処理して、電子ビューファインダーや液晶モニターうつしだして画像を見ます。この仕組みによって、あかるさや色味、背後のボケなどを撮影前に確認することができます。撮影の失敗がなくなり、写真の精度があがります。ミラー・システムがない分、カメラを小型・軽量にもできます。

ミラーレスカメラといえば、キヤノン EOS M シリーズなど、さまざまな機種がすでに発売されています。しかし今回の EOS R は、イメージセンサー(CMOS センサー)にフルサイズ(35mm フイルムとおなじサイズ)のものをつかっているのが大きな特徴です。イメージセンサーが従来のものよりも大型なのでより高画質な写真が撮れます。

このようなフルサイズ・ミラーレスデジタルカメラは、ソニーがすでに、多数のラインアップを発売しています。またニコンも、2018年8月23日に、同社初となるフルサイズ・ミラーレスカメラ「ニコン Z 7」と「ニコン Z 6」を発表しました。フルサイズ・ミラーレス市場の競争が激化してきました。

一眼レフカメラはカメラ史上における偉大な発明でした。しかしミラーレスへ時代は変わります。これは、フィルムカメラからデジタルカメラに変わったときに匹敵する大きな転換であるといってもよいでしょう。

今回の体験イベントでは、著名な写真家によるセミナーもおこなわれ、EOS R で撮影したうつくしい写真の数々も見ることができました。わたしには、ソニーのカメラで撮った写真にくらべて、より自然な発色が印象的でした。ソニーのカメラは、彩度やコントラストがややきつく、どぎつい発色になる場合がありますが、草や葉のグリーン、空や海のブルーなど、ナチュラルなうつくしさが EOS R ではたのしめました。

ミラーレスカメラを買うときには、カメラの機能やスペックだけでなく、画質の特徴も事前にチェックしておいたほうがよいです。おもに何を撮影するのかによっても選択はちがってくるでしょう。




EOS R の大口径マウント、CMOS センサー、DIGIC 8 が高画質を実現します。

■ 大口径マウント
EOS EF マウントの大口径 54mm を継承し、レンズを肥大化させずに光学性能をたかめています。あかるい高画質レンズの開発が可能になりました。

■ ショートバックフォーカス
レンズの最後部と CMOS センサーを近接して配置、光学設計の自由度をたかめました。一眼レフカメラではミラーのあった空間を光学的に有効活用できるため、カメラとレンズを小型にできます。

■ 新マウント通信システム
12ピンの電子接点により通信速度を大幅に向上させ、フォーカス、ズーム、しぼり、手ぶれ補正、レンズの諸収差などの情報をレンズからカメラ側へ瞬時に伝達します。

■ 約3030万画素、35mm フルサイズ CMOS センサー
高画質と高感度・低ノイズ化を両立した、約3030万画素、35mm フルサイズ CMOS センサー(キヤノン製)を搭載し、RF レンズに対応した光学設計の最適化をはかり、たかい解像力を発揮、フルサイズという大型センサーがうつくしい「ボケ味」を最大限にひきだします。ゆたかでなめらかな階調表現、ひろいダイナミックレンジも実現しています。

■ EOS R の頭脳、映像エンジン DIGIC 8
レンズがとらえた光を CMOS センサーがうけとめる。その素材を、あますところなく画像へと反映させるのが映像エンジン DIGIC 8 です。先進の画像処理技術により、高感度で鮮明な1枚をえがきます。4K/30p のムービーなどの機能も実現します。

■ デュアルセンシング IS
静止画で最大5段分の手ブレを補正します。レンズのジャイロセンサーにくわえ、カメラの CMOS センサーの画像情報からブレ量を検出、2つの情報を比較解析することで高感度の補正をすることができます。

■ 情報 ISO 感度 最高 40000 を達成
CMOS センサーと映像エンジン DIGIC 8 により高感度性能が大幅に向上、常用 ISO 感度は、静止画で100〜40000 を実現しました。光量のすくないシーンでもこれまで以上に鮮明な1枚に仕上げます。

■ 電子ビューファインダー(EVF)
光学ファインダーでは見えなかった低輝度の状況下でも、あかるい電子ビューファインダー(EVF)により視界は鮮明になります。

■ ポートレート撮影に効果、瞳 AF
被写体の瞳を自動的に検知し、ピンポイントでフォーカスを瞳にあわせることができます。

■ バリアングル液晶モニター
アングルに自由を。液晶モニターが自由に可動します。無理のない姿勢で撮影できます。

■ マウントアダプター
既存の EF レンズ・EF-S レンズもつかえます。EF レンズの表現力をいかし、可能性を拡張します。





EOS R にこめたキヤノンのメッセージは “Reimagine optical excellence”、EOS R の「R」はここからきています。そして「もう一度、イメージングシステムを創造する」といいます。一眼レフからミラーレスへ。過去の実績を延長するのではなく、あらたな一歩をしるす。ここに技術革新があります。

しかしこの背後には、もっとおおきな時代の転換があります。かつては写真はプリントするものでしたが、今では、SNS やウェブサイトに発信(アウトプット)するものになりました。写真の共有もおこなわれるようになりました。写真は、記録やおもい出をこえて情報発信の手段として一般的になり、カメラは、単なる光学機器ではなく情報機器の一種になりました。インターネットをつかった巨大な情報処理システムのなかに位置づけられるようになりました。スマホの一機能としてカメラがついているのもその例です。

写真は、自分が見てたのしむということもあるでしょうが、それ以上に他者に見せる、見てもらうことが重要になってきました。写真に、どのようなメッセージをこめればよいか? 何をアウトプットするか? 誰もがかんがえなければなりません。


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▼ 参考サイト
キヤノン EOS R
特設サイト