巨大な昆虫標本コレクションの一部をみることができます。昆虫学では、専門家・在野の研究家・アマチュア研究家の協力が欠かせません。昆虫少年の心をもちつづけて調査・研究をつづけている人々がいます。
国立科学博物館で特別展「昆虫」が開催されています(注1)。第5展示室「昆虫研究室」では、昆虫の調査・研究方法とその成果について紹介しています。
昆虫は、もっとも身近に観察することができる野生動物であり、自然科学の材料の宝庫として重要です。
昆虫の基礎研究は昆虫の分類研究であり、そのためには、昆虫採集・標本製作・形態観察などをおこなわなければなりません。形態観察では、肉眼観察にくわえ顕微鏡観察、最近では、電子顕微鏡観察や CT スキャンなどのハイテクもつかいます。
昆虫には、いまだに知られていないものがたくさん存在するため、このような分類研究が今でもさかんにおこなわれています。昆虫の世界は地球上にのこされたフロンティアであり、昆虫学は、未知な世界にいどむエキサイティングな研究分野であるといってよいでしょう。
こうした研究をささえるのが昆虫標本コレクションです。コレクションづくりには、大学や博物館の専門家だけでなく、昆虫を愛する在野の研究家やアマチュア研究家もおおきな役割をはたしています。とてもすぐれた標本コレクションをつくった人々も多数おり、特別展の会場では、彼らのコレクションの一部が紹介されています。
スメタナコレクション
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棲み分けて共存する - 特別展「昆虫」第3展示室(国立科学博物館)-
昆虫も情報処理をしている - 特別展「昆虫」第4展示室(国立科学博物館)-
少年の心をわすれない - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(1)-
相似と相異に着目する - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(2)-
昆虫の構造と機能 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
昆虫の社会 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
【閲覧注意:Gの部屋】自分の家の環境にも心をくばる - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
分化とシステム化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
特別展「昆虫」(国立科学博物館)(まとめ)
▼ 注1
特別展「昆虫」
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年7月13日~10月8日
▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『特別展 昆虫』(図録)読売新聞社・フジテレビジョン発行、2018年
昆虫は、もっとも身近に観察することができる野生動物であり、自然科学の材料の宝庫として重要です。
昆虫の基礎研究は昆虫の分類研究であり、そのためには、昆虫採集・標本製作・形態観察などをおこなわなければなりません。形態観察では、肉眼観察にくわえ顕微鏡観察、最近では、電子顕微鏡観察や CT スキャンなどのハイテクもつかいます。
昆虫には、いまだに知られていないものがたくさん存在するため、このような分類研究が今でもさかんにおこなわれています。昆虫の世界は地球上にのこされたフロンティアであり、昆虫学は、未知な世界にいどむエキサイティングな研究分野であるといってよいでしょう。
こうした研究をささえるのが昆虫標本コレクションです。コレクションづくりには、大学や博物館の専門家だけでなく、昆虫を愛する在野の研究家やアマチュア研究家もおおきな役割をはたしています。とてもすぐれた標本コレクションをつくった人々も多数おり、特別展の会場では、彼らのコレクションの一部が紹介されています。
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スメタナコレクション
アレッシュ=スメタナ氏(1931年〜)はカナダ農務省生物資源部門にながく勤務しながら、生涯をかけて、ハネカクシ類(コウチュウ目)のコレクションをつくりました。長年にわたり世界各地を旅して標本を収集し、また昆虫の命名も多数しました。
藤田宏コレクション
藤田宏氏(1953年〜)は有限会社むし社の代表取締役であり、半世紀にわたってアマチュア昆虫界をひきいてきたカリスマ的存在です。クワガタムシやカミキリムシを中心としたコレクターで、『世界のクワガタムシ大図鑑』をみずから執筆、刊行し、またその他の昆虫グループについても図鑑や図説を多数刊行しています。これらは、昆虫研究の基礎資料として重宝されています。
新井久保コレクション
新井久保氏(1924〜2012年)はカミキリムシやチョウの収集家で、南米アマゾン各地を精力的に調査し、多数の標本を収集しました。そのおおくは、自宅を改築した「アマゾン昆虫館」で公開されていました。たいへん貴重なコレクションであり、南米の昆虫研究の基盤となるものです。
五十嵐邁コレクション
五十嵐邁氏(1924〜2008年)はチョウ類の研究家であり、実業家や作家としてもしられていました。日本蝶類学会の発起人・初代会長・名誉会長も歴任しました。研究成果は、『世界のアゲハチョウ』『アジア産蝶類生活史図鑑 1巻』『同2巻』などの著書としてもまとめられています。これらは、昆虫分類学やアジア地域の昆虫研究の基盤となるものです。
岸田康則コレクション
岸田康則氏(1949年〜)は、田園調布雙葉学園、宝仙学園で教鞭をとる一方、ガ類の研究を長年おこない、『日本産蛾類標準図鑑』の刊行では中心的な役割をはたしました。また自身のコレクションと研究成果をもとに、図鑑『世界の美麗ヒトリガ』も出版しました。
彼らはかつて、昆虫にみせられた昆虫少年でした。そして少年の心を一生もちつづけ、生涯をかけて昆虫を調査し研究しました。昆虫標本コレクションはその努力の結晶です。
世の中には、子供のころの初心を大きくなってからもわすれずに地道に努力をつづける人々がいます。そこには、金もうけや出世のためではなく、仕事上 必要にせまられたというのでもなく、昆虫がすきでひたすらつづけてきたという姿勢があります。学校の「理科」で高得点をとるためにというのともちがいます。無我無心といった心境がうかがえます。
昆虫学のような野外を調査・研究する分野では大学や博物館の専門家だけでなく、在野の研究家・アマチュア研究家も非常に大きな役割をはたしています。専門家が調査するといっても、生涯をかけて調査できる地域、あるきまわれる範囲には限界があるからです。地球は広大ですから、専門家・在野の研究家・アマチュア研究家が協力しないと全世界をとてもカバーできません。昆虫学には、このような共同研究の重要性がとくに顕著にあらわれます。
第5展示室で、巨大な昆虫標本コレクションなどをみていると、プロ・アマをとわず、昆虫を愛するたくさんの人々の共同研究の成果が感じられてきます。そしてそこには、「昆虫少年の心」がつらぬいているのです。昆虫学者や昆虫研究家たちは少年のような目をもっていました。またそのような観察眼が必要です。
昆虫学とはかぎらず、地理学・生態学・人類学・地質学といったフィールドサイエンス(野外科学)には昆虫学に似た特徴があり、無機的・機械的ないわゆる科学技術とはまったくことなる もっと純粋なおもしろさがあります。
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彼らはかつて、昆虫にみせられた昆虫少年でした。そして少年の心を一生もちつづけ、生涯をかけて昆虫を調査し研究しました。昆虫標本コレクションはその努力の結晶です。
世の中には、子供のころの初心を大きくなってからもわすれずに地道に努力をつづける人々がいます。そこには、金もうけや出世のためではなく、仕事上 必要にせまられたというのでもなく、昆虫がすきでひたすらつづけてきたという姿勢があります。学校の「理科」で高得点をとるためにというのともちがいます。無我無心といった心境がうかがえます。
昆虫学のような野外を調査・研究する分野では大学や博物館の専門家だけでなく、在野の研究家・アマチュア研究家も非常に大きな役割をはたしています。専門家が調査するといっても、生涯をかけて調査できる地域、あるきまわれる範囲には限界があるからです。地球は広大ですから、専門家・在野の研究家・アマチュア研究家が協力しないと全世界をとてもカバーできません。昆虫学には、このような共同研究の重要性がとくに顕著にあらわれます。
第5展示室で、巨大な昆虫標本コレクションなどをみていると、プロ・アマをとわず、昆虫を愛するたくさんの人々の共同研究の成果が感じられてきます。そしてそこには、「昆虫少年の心」がつらぬいているのです。昆虫学者や昆虫研究家たちは少年のような目をもっていました。またそのような観察眼が必要です。
昆虫学とはかぎらず、地理学・生態学・人類学・地質学といったフィールドサイエンス(野外科学)には昆虫学に似た特徴があり、無機的・機械的ないわゆる科学技術とはまったくことなる もっと純粋なおもしろさがあります。
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昆虫も情報処理をしている - 特別展「昆虫」第4展示室(国立科学博物館)-
少年の心をわすれない - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(1)-
相似と相異に着目する - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(2)-
昆虫の構造と機能 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
昆虫の社会 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
【閲覧注意:Gの部屋】自分の家の環境にも心をくばる - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
分化とシステム化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
特別展「昆虫」(国立科学博物館)(まとめ)
▼ 注1
特別展「昆虫」
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年7月13日~10月8日
▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『特別展 昆虫』(図録)読売新聞社・フジテレビジョン発行、2018年