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「音楽建築空間」が構築されています。音楽をきいてイメージします。音を、イメージに変換すると情報処理がすすみます。
企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」が東京・六本木の 21_21 DESIGN SIGHT で開催されています(注1)。

音楽を、音色や音域・音量・リズムといったさまざまな要素によってデザインされた構造物(アーキテクチャ)であるととらえなおし、ひとつの楽曲と複数の映像作品をくりかえし再生することで「音楽建築空間」の構築をこころみるというめずらしい企画展です。

会場では、小山田圭吾(Cornelius)作曲、中村勇吾作詞の『AUDIO ARCHITECTURE』という曲がくりかえし再生され、8人の映像作家がそれぞれに音楽を解釈し、うかんできたイメージを表現しています。そしてすべての映像が統合されたおおきな「音楽建築空間」が構築されています。

たとえば大西景太「Cocktail Party in the AUDIO ARCHITECTURE」では、「カクテルパーティー効果」を表現しています。気になる人の声は、ざわざわしたパーティー会場でもききわけられるものです。音をきくときには聴覚だけでなくほかの感覚もはたらきます。さまざまな要素がひとつの場に統合されてはたらきます。

映像作家でなくても、音楽をききながらイメージをおもいうかべることができます。イメージ訓練のためにもっと積極的に音楽をつかってみるとよいでしょう。音楽をききながら目をとじて自由にイメージしてみます。効果的な訓練法です。


 

たとえば映画では映像が先にあって、あとから作曲家が音楽をつけるのが普通ですが、オペラではその逆に音楽がまずあって、演出家が音楽を解釈して、イメージして舞台をつくっていきます。したがっておなじ曲でもオペラにはさまざまな「バージョン」があります。

あるいは他者の話(声、言葉)をききながらイメージしてもよいです。言葉をきいて、言葉でかんがえるよりも、イメージをしたほうが情報の処理がすすみます。

音楽や言葉などの音をきくときには聴覚がはたらき、これは耳からの情報のインプットです。そして音をイメージに変換するのは心のなかでのプロセシングです。その結果を、多くの場合は言葉に変換してアウトプットします。あるいはアーティストでしたら絵をかいたり、音楽を演奏したりします(図1)。

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図1 情報処理のしくみ




もうひとつ、音楽をきくときに反射音もきくという方法があります。音楽は音の芸術であり、時間の芸術ですから、前から後ろに1次元的にながれていくものです。しかし音は、部屋のなかの壁や天井・床などに反射して響きます。この反響もきくことによって音響の空間を認知することができます。たとえば目の不自由な人は、反射音をきいて建物や壁や障害物などとの距離関係を知覚しており、これと似ています。

音響空間の認知は音楽ファンは普通にやっていますし、作曲家や演奏家は、時間的にだけでなく空間的にも音楽を表現しようとしています。時間的なるものを空間的にもあらわします。

このように、聴覚を空間に展開することによっていちじるしく情報処理がすすみ、表現の幅もひろがります。

ややむずかしい話になりましたが、今回の企画展は、こうした情報処理のしくみを自覚するよい機会です。しくみが自覚できれば日々の生活や訓練・実践も充実し、アウトプットもすすみます。
 
 
すべての感覚を大きくひらいて情報処理をすすめる - 広瀬浩二郎著『触る門には福来たる』-

▼ 注1
会場:21_21 DESIGN SIGHT
会期:2018年6月29日〜10月14日