ミンミンゼミの巨大模型
(交差法で立体視ができます)
昆虫の能力について展示・解説しています。昆虫も、「インプット→プロセシング→アウトプット」をしています。「昆虫-環境」システムをとらえるようにします。
東京・上野の国立科学博物館で特別展「昆虫」が開催されています(注1)。第4展示室では「昆虫の能力」について展示・解説しています。見る、聞く、音をだす、フェロモンをだす、飛ぶ、あるく、およぐ、はねるといった昆虫の能力について理解をふかめることができます。
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音を出す
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特別展「昆虫」(国立科学博物館)(まとめ)
▼ 注1
特別展「昆虫」
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年7月13日~10月8日
▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『特別展 昆虫』(図録)読売新聞社・フジテレビジョン発行、2018年
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昆虫は、つぎの器官から視覚情報をえています。
- 複眼
- 単眼
- 中枢神経系内部の光受容器
- (幼虫の)側単眼
複眼は、頭部の両側に1対の器官として存在し、1個の複眼は多くの場合ドーム状で、多数の個眼が放射状にあつまってできています。複眼を構成する個眼の数は、ショウジョウバエでは約 800、モンシロチョウでは約 6000、アゲハチョウでは約 12000 とされています。
一方、単眼は、最大3個が、両方の複眼の中間の頭頂部に位置しています。単眼は、昆虫がとんでいるときに体の方向を把握し、姿勢をただすために、地平線を境とした明暗の知覚をになっているとかんがえられています。
昆虫の成虫では、視覚的情報を感知して脳につたえているのは複眼です。
図1に、電磁波の波長と周波数と、ヒト・ミツバチ・モンシロチョウの可視領域をしめしました。ミツバチやモンシロチョウは、ヒトが感じることのできない紫外線を感じることができます。多くの昆虫において紫外線が可視領域にはいっています。
図1 電磁波と可視領域
聞く
たとえばセミの場合は、腹部基部の腹側に鼓膜があり、そこで音を感知しています。あるいはコオロギでは、前脚の頸節の内側に楕円形の鼓膜があり、そこで空気の振動を感知しています。セミやコオロギ以外の多くの昆虫では、脚の付け根にちかい腿節に内臓される「弦音器官」で空気振動を感知します。
音を出す
もっともよくあるケースは摩擦式の発音です。段々になった刻み目のような規則的な部分(ヤスリ状器)を、かたいつめのような部分(発音爪)でひっかいて摩擦音をだします。コオロギやキリギリスのようないわゆる「鳴く虫」はこの方法で音をだします。
またセミは摩擦式ではなく、腹部の基部背面の方に発音器と共鳴室をもっています。V字状の筋肉がはげしく収縮と弛緩をくりかえすことによって小さな音が連続して鳴き声となり、共鳴室で増幅されて大きな鳴き声が発生します。
フェロモン
フェロモンは、人間は感じることのできない希薄な化学物質であり、昆虫体内で生産され、同種の別個体によって感知されます。その機能によってつぎのようなものがあります。
- 性フェロモン
- 集合フェロモン
- 警報フェロモン
- 道しるべフェロモン
たとえばアリのながい行列は、道しるべフェロモンをアリがだすためにできるとかんがえられます。
飛ぶ
昆虫は、約 38 億年におよぶ生物の歴史のなかで大気中を飛べるようになったはじめての生物です。化石の記録からは、約4億年前の古生代デボン紀には空飛ぶ昆虫が出現していたことがわかっています。昆虫は、2対4枚の翅をはげしくはばたかせることによって空中に飛びだし、また空中の一点に静止(ホバリング)できます。
あるく
多くの昆虫はあるくことができます。昆虫の成虫の脚は基本的に3対6本です。地面ばかりでなく、壁をはいあがることもできるし、天井からぶらさがることもできます。
およぐ
アメンボやミズスマシのように水面だけで生活するもの、ゲンゴロウやナベブタムシのように水中にずっともぐっていられるものなど、さまざまな水生昆虫がいます。
はねる
バッタ・コオロギ・キリギリスといったバッタ目のなかまなど、おどろくほど敏捷にはねる昆虫がいます。
以上の能力をモデル化(図式化)すると図2のようになります。

昆虫が見たり聞いたりすることは、電磁波や音の振動を感じて環境から情報をとりいれることです。あるいはほかの個体がだすフェロモンを感じることも情報をとりいれることです。これらはインプットといってもよいでしょう。インプットされた情報は脳におくられ(昆虫にも脳があります)、処理されます(プロセシング)。そして音をだしたり、フェロモンをだしたり、飛んだり、あるいたり、およいだり、はねたりします。これらはまとめて、アウトプットとよんでもよいでしょう。
このような「インプット→プロセシング→アウトプット」は情報処理と簡略によんでもよいでしょう。すなわち昆虫も情報処理をおこなっています。このような能力があるからこそ昆虫も環境に適応できるわけです。
このように昆虫と環境は、きってもきれない関係にあり、両者は一体になってひとつのシステムをつくりだしています。昆虫の生命システムとはこのような〈昆虫-環境〉システムであるとかんがえるとわかりやすいです。いいかえると昆虫だけをみていても昆虫はわかりません。つねに、環境とセットにしてみていかなければなりません。
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以上の能力をモデル化(図式化)すると図2のようになります。

図2 昆虫の生命システム
昆虫が見たり聞いたりすることは、電磁波や音の振動を感じて環境から情報をとりいれることです。あるいはほかの個体がだすフェロモンを感じることも情報をとりいれることです。これらはインプットといってもよいでしょう。インプットされた情報は脳におくられ(昆虫にも脳があります)、処理されます(プロセシング)。そして音をだしたり、フェロモンをだしたり、飛んだり、あるいたり、およいだり、はねたりします。これらはまとめて、アウトプットとよんでもよいでしょう。
- インプット:見る、聞く、フェロモンを感じる
- プロセシング:情報を処理
- アウトプット:音をだす、フェロモンをだす、飛ぶ、あるく、およぐ、はねる
このような「インプット→プロセシング→アウトプット」は情報処理と簡略によんでもよいでしょう。すなわち昆虫も情報処理をおこなっています。このような能力があるからこそ昆虫も環境に適応できるわけです。
このように昆虫と環境は、きってもきれない関係にあり、両者は一体になってひとつのシステムをつくりだしています。昆虫の生命システムとはこのような〈昆虫-環境〉システムであるとかんがえるとわかりやすいです。いいかえると昆虫だけをみていても昆虫はわかりません。つねに、環境とセットにしてみていかなければなりません。
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少年の心をわすれない - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(1)-
相似と相異に着目する - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(2)-
昆虫の構造と機能 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
昆虫の社会 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
【閲覧注意:Gの部屋】自分の家の環境にも心をくばる - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
分化とシステム化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
特別展「昆虫」(国立科学博物館)(まとめ)
▼ 注1
特別展「昆虫」
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年7月13日~10月8日
▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『特別展 昆虫』(図録)読売新聞社・フジテレビジョン発行、2018年