オオムラサキの巨大模型
(交差法で立体視ができます)
昆虫の生態を展示・解説しています。昆虫の多様性は環境の多様性を反映しています。昆虫は、棲み分けて共存しています。
東京・上野の国立科学博物館で特別展「昆虫」が開催されています(注1)。第3展示室では「昆虫の生態」について展示・解説しています。
ステレオ写真は交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
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立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
里山の昆虫
昆虫は、食べ方も多様です。昆虫の口は口器(こうき)とよばれ、食べ物に応じて形がことなっています。
かむ:トンボ、カマキリ、バッタ、スズメバチ、チョウやガの幼虫、アリのなかま(アギトアリのなかま)などは、食べ物をかんでこまかくしてから体内にとりこみます。
吸う:チョウ、ガ、セミ、カなどは、植物の花の蜜や動物の血液など、液体を食べ物とします。
なめる:ハエ、アブ、カブトムシ、クワガタなどはなめることによって栄養をとりこみます。
*
昆虫の適応力・生命力はとてもつよく、どこにいっても昆虫を見かけることができます。第3展示室では、市街地、里山、奥山、草地、洞窟、渓流、池や沼、海といった環境ごとに昆虫たちの生活をのぞいています。
市街地:ほかの動物たちとはちがい市街地にも昆虫は普通に住んでいます。チョウやガ、セミ、アリ、ハチといった昆虫たちが公園の草木や道端の植え込み・街路樹などを住みかにしてくらしています。シロアリ、ゴキブリ、カ、ハエ、ノミなど、人の生活する建物のなかまではいってきているものもいます。
里山:里山には、人の手がくわえられた林(雑木林)がひろがります。クヌギやコナラに代表される多様な種類の樹木がみられ、その樹液や花・葉などを餌とするカブトムシやクワガタムシ、カミキリムシ、スズメバチ、ヤママユなど、大型の昆虫も多く生息しています。ヤママユは、翅をひろげると 10 cm 以上にもなる大型のガです。
奥山:人里からはなれた奥山には、ブナやミズナラなどの林を住みかとする昆虫など、ここでしかみられない昆虫も多く生息します。ミヤマクワガタ、ミヤマカラスアゲハなど、ミヤマ(深山)が名前にはいった昆虫の多くは奥山を中心に生息します。
草地:バッタ、コオロギ、キリギリス、ウスバキトンボ、オオカマキリ、ジャノメチョウなどが生息します。
洞窟:光がはいらず、湿度がたかく、餌もすくない特殊な環境ですが、カマドウマのなかま、メクラチビゴミムシのなかまなどが生息します。
渓流:カワトンボ、カワゲラなどが生息します。
池や沼:ゲンゴロウ、タガメ、アメンボなどが生息します。
海:昆虫にとって進出がむずかしかった環境ですが、ウミアメンボなどが生息します。
このように昆虫は、地球上のいたるところでそれぞれの環境に適応して生息しています。昆虫の多様性は、地球の環境の多様性もしめします。昆虫の多様性は環境の多様性を反映しています。
また昆虫は、名づけられているものだけでも約 100 万種にものぼる膨大な種数をもつ生き物ですが、めちゃくちゃにいりくんで生きているのではなく、棲み分けをしています。棲み分けることによって無用な「抗争」をさけ、全体として共存しています。
また昆虫は、市街地など、人間の領域でも普通に生きています。進化論的にみると巨大なトンボなどがかつてはいましたが、現在の昆虫は、体を小さくすることによって人間やほかの生物との無用な「抗争」をさけ、ほかの生物とも共存しています。体の大きさが極端にちがう場合は、おなじ地域内にいても、それぞれの生きている「世界」はことなり、棲み分けのような仕組みがはたらきます。巨大なトンボがいまでも生きていたら人間と「けんか」になってしまいますが、小さなトンボでしたら問題はなく、むしろ、トンボやチョウがとんでいるのをみて心がいやされるという人が多いのではないでしょうか。
このように昆虫と環境を生態学的・空間的にみた場合、棲み分けは、共存の仕組みとして有効にはたらいていることがわかります。
昆虫は、4 億 8000 万年前に地球上に誕生して以来、さまざまな環境に適応しながら進化してきました。あらたな環境に適応するということは空白地域に進出するということであり、そのときに進化もおこり、結果として、地球のあらゆる地域に昆虫は分布するようになりました。
このような進化論的・時間的過程が生態学的・空間的にあらわれたのが今日みられる昆虫の棲み分けであるといってもよいでしょう。時間的なるものが空間的になっているということです。
このような考察ができるのも、昆虫が、おどろくべき多様性をもち、汎世界的に分布しているからです。昆虫からまなべることはたくさんあります。
▼ 関連記事
多様で神秘的な世界 - 特別展「昆虫」の概観(国立科学博物館)-
昆虫の進化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
昆虫の多様性 - 特別展「昆虫」第2展示室(国立科学博物館)-
棲み分けて共存する - 特別展「昆虫」第3展示室(国立科学博物館)-
昆虫も情報処理をしている - 特別展「昆虫」第4展示室(国立科学博物館)-
少年の心をわすれない - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(1)-
相似と相異に着目する - 特別展「昆虫」第5展示室「昆虫研究室」(2)-
昆虫の構造と機能 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
昆虫の社会 - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
【閲覧注意:Gの部屋】自分の家の環境にも心をくばる - 特別展「昆虫」(国立科学博物館)-
分化とシステム化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
特別展「昆虫」(国立科学博物館)(まとめ)
▼ 注1
特別展「昆虫」
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年7月13日~10月8日
▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『特別展 昆虫』(図録)読売新聞社・フジテレビジョン発行、2018年
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このように昆虫は、地球上のいたるところでそれぞれの環境に適応して生息しています。昆虫の多様性は、地球の環境の多様性もしめします。昆虫の多様性は環境の多様性を反映しています。

図 昆虫と環境のモデル
また昆虫は、名づけられているものだけでも約 100 万種にものぼる膨大な種数をもつ生き物ですが、めちゃくちゃにいりくんで生きているのではなく、棲み分けをしています。棲み分けることによって無用な「抗争」をさけ、全体として共存しています。
また昆虫は、市街地など、人間の領域でも普通に生きています。進化論的にみると巨大なトンボなどがかつてはいましたが、現在の昆虫は、体を小さくすることによって人間やほかの生物との無用な「抗争」をさけ、ほかの生物とも共存しています。体の大きさが極端にちがう場合は、おなじ地域内にいても、それぞれの生きている「世界」はことなり、棲み分けのような仕組みがはたらきます。巨大なトンボがいまでも生きていたら人間と「けんか」になってしまいますが、小さなトンボでしたら問題はなく、むしろ、トンボやチョウがとんでいるのをみて心がいやされるという人が多いのではないでしょうか。
このように昆虫と環境を生態学的・空間的にみた場合、棲み分けは、共存の仕組みとして有効にはたらいていることがわかります。
昆虫は、4 億 8000 万年前に地球上に誕生して以来、さまざまな環境に適応しながら進化してきました。あらたな環境に適応するということは空白地域に進出するということであり、そのときに進化もおこり、結果として、地球のあらゆる地域に昆虫は分布するようになりました。
このような進化論的・時間的過程が生態学的・空間的にあらわれたのが今日みられる昆虫の棲み分けであるといってもよいでしょう。時間的なるものが空間的になっているということです。
このような考察ができるのも、昆虫が、おどろくべき多様性をもち、汎世界的に分布しているからです。昆虫からまなべることはたくさんあります。
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分化とシステム化 - 特別展「昆虫」第1展示室(国立科学博物館)-
特別展「昆虫」(国立科学博物館)(まとめ)
▼ 注1
特別展「昆虫」
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年7月13日~10月8日
▼ 参考文献
国立科学博物館・読売新聞社編集『特別展 昆虫』(図録)読売新聞社・フジテレビジョン発行、2018年