人間活動による生物の大量絶滅がすすんでいます。生物多様性がうしなわれます。エコツーリズムにひとつの活路があります。
井田徹治著『生物多様性とは何か』(岩波新書)は、具体的な取材にもとづいて記者の立場から解説した生物多様性に関する入門書です。
注目されるのは第3章「世界のホットスポットを歩く」です。
「生物多様性のホットスポット」は、スタンフォード大学のノーマン=マイヤーズ博士らが提案した概念であり、2000 年に、25ヵ所のホットスポットがまず選定されました。その条件はつぎのとおりでした。
マダガスカル、ニューカレドニア、ブラジル中央部の大平原セラード、ブラジル大西洋岸に発達するアトランティック・フォレスト、ニュージーランドなどが選定されました。2005年には、日本も、ホットスポットに追加されました。
第3章では、おびやかされるホットスポットについてなまなましく報告しています。
そのほか、ニューカレドニア、ブラジル、インドシナ半島、日本での取材結果が報告されています。
現在、開発中心の政策を世界の国々はおしすすめており、環境破壊をくいとめるのはむずかしい状況です。利己心と欲望にもとづく開発はとどまるところをしりません。先進国や新興国では天然資源への需要がかつてないほど増大し、開発途上国における資源開発が急務になっています。環境保全活動を開発が圧倒しています。
こうして地球規模での生物多様性の喪失がつづいていきます。
地球上では、生物の大量絶滅がこれまでもありました。古生物学によると、5回の大絶滅をこれまでに生物は経験してきています。
そして今日、地球史上における第6回目の大量絶滅が進行中です。今までとはちがい今回は、人間という特定の生物の活動によってひきおこされています。人間は、ほかの生物はほろんでも、自分たちは生きのこればいいとおもっています。
しかし実際にはそうはいきません。大量絶滅がすすんで生物多様性がうしなわれれば、人間社会にとっても大きな損失になることは本書でものべられているとおりです。
また人心の荒廃もすすんでいます。ODA(政府開発援助)の開発事業をやりすぎて心があれてしまった開発専門家がいます。"開発屋" は利己の世界におちいっていきます。さらにその国の住民までもが開発ビジネスにまきこまれ、心の荒廃をすすめていきます。お金が手にはいるならば何をやっても・・・
こうしたなかで、解決策のひとつとして有力視されているのがエコツーリズムです。現在、先進国を中心に観光業が大発展しつつあり、観光産業は、工業社会にかわる情報産業社会における代表的な産業になるとかんがえられています。この観光産業のなかに、エコツアーが徐々に浸透してきており、発展途上国のような今までは僻地とおもわれていたところでもエコツアーがおこなわれるようになってきています。
論じているだけでは問題は解決できないので、このような具体的な実践をしていくことがもとめられます。
▼ 関連記事
生物多様性の減少をくいとめる -『生物多様性』(ニュートン別冊)-
生物多様性と種を保全する - 大英自然史博物館(7)-
多様な自然環境を保全する - 日本絶滅危惧植物展(2)(新宿御苑・大温室)-
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生物多様性の宝庫をまもる - ズーラシア「アマゾンの密林」-
▼ 参考文献
井田徹治著『生物多様性とは何か』(岩波新書)岩波書店、2010年6月18日
第1章 生物が支える人の暮らし
第2章 生命史上最大の危機
第3章 世界のホットスポットを歩く
第4章 保護から再生へ
第5章 利益を分け合う - 条約とビジネス
終 章 自然との関係を取り戻す
注目されるのは第3章「世界のホットスポットを歩く」です。
「生物多様性のホットスポット」は、スタンフォード大学のノーマン=マイヤーズ博士らが提案した概念であり、2000 年に、25ヵ所のホットスポットがまず選定されました。その条件はつぎのとおりでした。
- 自生する植物種の 0.5 %以上が固有種であるか、1500 種以上の固有種が自生している。
- かつ、もともとあった植生の少なくとも 70 %がすでに失われてしまった。
マダガスカル、ニューカレドニア、ブラジル中央部の大平原セラード、ブラジル大西洋岸に発達するアトランティック・フォレスト、ニュージーランドなどが選定されました。2005年には、日本も、ホットスポットに追加されました。
第3章では、おびやかされるホットスポットについてなまなましく報告しています。
マダガスカル
現在、アンダシベ国立公園のすぐ近くのアンバトビーで、日本の住友商事などがカナダや韓国の企業と共同で大規模なニッケル開発を進めており、採掘のため全長 220 キロにもなるパイプラインの建設工事が進んでいる。
しかしパイプラインがラムサール条約の登録湿地の中を通るし、建設によって森林の分断が決定的になる。土砂の流出につながるので行わないとしていた雨季の工事が行われているし、森林再生計画の対象地域にはパイプラインを通さないとの約束も守られていない。
2009年8月、マダガスカルのレストランで、絶滅が懸念されているキツネザルが売られていたことが発覚、袋に入れられた多数の死骸が注目を集めた。アフリカ大陸などでは、このような「ブッシュミート(森の肉)」が大量に消費されるようになり、ビジネスになっている。
2009 年3月、軍の指示を得た野党指導者ラジョエリナ氏が自らの大統領就任を宣言、政情不安となり、暴動が発生した。国立公園内での違法伐採と中国市場などに向けた木材の密輸が急増、武装した暴徒により、多くのレンジャーが国立公園から追い出された。新政府も、木材の収入源に目をつけ、これまでの規制を緩和する方針を示している。
そのほか、ニューカレドニア、ブラジル、インドシナ半島、日本での取材結果が報告されています。
現在、開発中心の政策を世界の国々はおしすすめており、環境破壊をくいとめるのはむずかしい状況です。利己心と欲望にもとづく開発はとどまるところをしりません。先進国や新興国では天然資源への需要がかつてないほど増大し、開発途上国における資源開発が急務になっています。環境保全活動を開発が圧倒しています。
こうして地球規模での生物多様性の喪失がつづいていきます。
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地球上では、生物の大量絶滅がこれまでもありました。古生物学によると、5回の大絶滅をこれまでに生物は経験してきています。
そして今日、地球史上における第6回目の大量絶滅が進行中です。今までとはちがい今回は、人間という特定の生物の活動によってひきおこされています。人間は、ほかの生物はほろんでも、自分たちは生きのこればいいとおもっています。
しかし実際にはそうはいきません。大量絶滅がすすんで生物多様性がうしなわれれば、人間社会にとっても大きな損失になることは本書でものべられているとおりです。
また人心の荒廃もすすんでいます。ODA(政府開発援助)の開発事業をやりすぎて心があれてしまった開発専門家がいます。"開発屋" は利己の世界におちいっていきます。さらにその国の住民までもが開発ビジネスにまきこまれ、心の荒廃をすすめていきます。お金が手にはいるならば何をやっても・・・
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こうしたなかで、解決策のひとつとして有力視されているのがエコツーリズムです。現在、先進国を中心に観光業が大発展しつつあり、観光産業は、工業社会にかわる情報産業社会における代表的な産業になるとかんがえられています。この観光産業のなかに、エコツアーが徐々に浸透してきており、発展途上国のような今までは僻地とおもわれていたところでもエコツアーがおこなわれるようになってきています。
論じているだけでは問題は解決できないので、このような具体的な実践をしていくことがもとめられます。
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生物多様性の宝庫をまもる - ズーラシア「アマゾンの密林」-
▼ 参考文献
井田徹治著『生物多様性とは何か』(岩波新書)岩波書店、2010年6月18日