海鳥の種数・個体数が激減しています。保護活動が急務になっています。
『ナショナルジオグラフィック』2018年7月号のシリーズ「鳥たちの地球」では海鳥をとりあげています。




ペルー北部沖に浮かぶロボス・デ・アフエラ島。1907 年の白黒写真でペルーペリカンのコロニーがあった場所が、2017 年には鳥の墓場と化していた。飢えや大雨で大半のひなが死んだとみられる。この島では過去 100 年にわたり、肥料になるグアノ(鳥のふんの堆積物)の採掘や獲物となる魚の乱獲、気候変動などにより、海鳥の数が激減してきた。

「日が沈むと、1匹のハツカネズミが現われてミズナギドリの巣穴に入り、少し様子をうかがってから、ひなを食べ始めました」
天敵を知らずに進化してきたため、海鳥は、(人間が持ち込んだ)ハツカネズミにまったく無防備だ。今では年間 200 万羽のひながハツカネズミに殺されている。(南大西洋に浮かぶ英領ゴフ島)

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海鳥のおよその種数は 360 種(6億 3000 羽)であり、そのうち、危機的状況にある種数は 110 種(8000 万羽)です。1950 年代から継続的な調査がはじまって以降、世界の海鳥の個体数は7割ちかく減少しました。海鳥には、分類学上の9つの「目」に属する鳥がふくまれていますが、いずれも脅威にさらされています。

具体的な脅威はつぎのとおりです。

  • 外来種と人間活動で巣があらされます。
  • 光害で、巣立ち直後の鳥の方向感覚がうしなわれます。
  • 海に流出した油で羽毛がよごれ、防水力が低下します。
  • 油とプラスチックの毒素が鳥の体内に蓄積します。
  • 漁業の乱獲により鳥の栄養源がうばわれます。
  • 漁業の網や針にかかって溺死する鳥がいます。
  • 海水温の上昇で、鳥の菜食水域がとおざかります。

海鳥をまもるためにはこれらの脅威をとりのぞかなければなりません。

たとえばカリフォルニア州のファラロン島では、卵の乱獲や刺し網漁による混獲でウミガラスが激減しましたが、刺し網漁などの禁止により生息数が回復してきています。またニュージーランドチャタム諸島では、絶滅が危惧されるチャタムアホウドリのあらたな繁殖地をつくり、絶滅からすくうプロジェクトがはじまりました。

海鳥は、人里はなれた島々で繁殖するケースがおおく、一生の大半を海の上ですごすため、彼らが姿を消したとしてもそれに気がつく人々はすくないかもしれません。また海鳥の生態を知るためにはグローバルな視点をもたなければなりません。このような点で、ナショナルジオグラフィックの今回の記事はとても貴重です。まずは海鳥について知り、そして保護活動を早急にはじめなければなりません。


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▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本語版』(2018年7月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2018年