樹木は景観をきめる重要な要素です。高木と低木、針葉樹形と広葉樹形などの樹木の形はその地域の自然環境を反映しています。樹形から気候が想像できます。
植物園をあるいていたり旅行をしていたりすると、景観をきめる要素として植物が大きな存在であることがわかります。とくに樹木の形が重要です。そこで今回は、樹木の形についてかんがえてみたいとおもいます。
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。筑波実験植物園で撮影しました。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
■ 高木と低木
背が高い木を高木、背が低い木を低木といいます。高木は背が高いだけでなく、1本の幹がはっきりしています。それに対して低木は、根元ちかくから数本に枝分かれし、中心となる幹が明瞭ではありません。
■ 針葉樹形と広葉樹形
針葉樹形は先のとがった樹形であり、広葉樹形は丸みをもった樹形です。
針葉樹形は、1本の幹でつらぬかれているものが多く、樹形全体は円錐形で上端ほどほそまり、重心がひくくみえます。葉も、マツやスギのようにほそくとがったものが多いです。円錐形になるのは、横にでる側枝よりも幹となる主軸が速くのびるためであり、この形は、高緯度地域のななめの太陽光線をもっとも効果的にうけることができるといわれています。
針葉樹には高木が多いですが、沿岸域にはえるハイビャクシンや高山帯のハイマツは低木です。
ハイマツの茎は弾力性にとみ、成長がおそく、幹の直径が数センチメートルしかなくても樹齢が 200 年をこえるものもあります。葉の密度がたかく、おなじ長さの枝をくらべるとほかのマツ類の3倍の葉をつけます。非常にいりくんだ群落も形成しています。これらによって、高山の強風と積雪にたえられるようになっています。
カラマツは一般的には幹がまっすぐのび、樹高 30 メートルに達する円錐形の樹形ですが、富士山5合目などの森林限界付近では、ぺたりと地面にはってはえており、本来の高木針葉樹形を想像できません。これは、強風や低温・やせ地に適応するためです。
マツ科の植物は、おどろくべき適応力をもっていて、みずからの樹形を変化させながら北半球の亜寒帯に大森林を形成し、多くの種を分化させました。
他方、広葉樹形は、太枝から小枝へと順次分枝し、大きな丸い樹冠(枝や葉がしげっている部分)をもち、見た目の重心が高いところにあります。一般的に幅の広い葉をもちます。
広葉樹も、若木のときは主軸の伸びが中心ですが、その後は、横枝の伸びが中心になって樹冠の幅をひろげます。太陽光線を全身でうけようとしているようです。
■ 茎や根の形態が木の形になる
板根、マングローブ植物、呼吸根、支持根群など、特殊な形態をもつ樹木もあります。これらは熱帯でみられ、熱帯の環境に適応しながら進化したとかんがえられます。
このように樹木は環境に適応していきているのであり、その形は偶然ではなく、自然環境(気候)を反映しています。したがって樹形をみることによってその地域の自然環境を想像することができます。樹形は、環境の指標になるといってもよく、樹形をみて景観をみることは気候を想像するための重要な方法です。気候あるいは気候帯についてしることは、地球や地球環境問題について認識をふかめることにつながります。
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▼ 参考文献
「樹木の科学」milsil(自然と科学の情報誌)63, 国立科学博物館, 2018年5月
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。筑波実験植物園で撮影しました。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
■ 高木と低木
背が高い木を高木、背が低い木を低木といいます。高木は背が高いだけでなく、1本の幹がはっきりしています。それに対して低木は、根元ちかくから数本に枝分かれし、中心となる幹が明瞭ではありません。
- 高木:はっきりした1本の幹をもつ。
- 低木:根元ちかくから枝分かれする。
■ 針葉樹形と広葉樹形
針葉樹形は先のとがった樹形であり、広葉樹形は丸みをもった樹形です。
針葉樹形は、1本の幹でつらぬかれているものが多く、樹形全体は円錐形で上端ほどほそまり、重心がひくくみえます。葉も、マツやスギのようにほそくとがったものが多いです。円錐形になるのは、横にでる側枝よりも幹となる主軸が速くのびるためであり、この形は、高緯度地域のななめの太陽光線をもっとも効果的にうけることができるといわれています。
針葉樹形(ヒノキ/ヒノキ科)
針葉樹には高木が多いですが、沿岸域にはえるハイビャクシンや高山帯のハイマツは低木です。
ハイビャクシン(ヒノキ科)
ハイマツの茎は弾力性にとみ、成長がおそく、幹の直径が数センチメートルしかなくても樹齢が 200 年をこえるものもあります。葉の密度がたかく、おなじ長さの枝をくらべるとほかのマツ類の3倍の葉をつけます。非常にいりくんだ群落も形成しています。これらによって、高山の強風と積雪にたえられるようになっています。
カラマツは一般的には幹がまっすぐのび、樹高 30 メートルに達する円錐形の樹形ですが、富士山5合目などの森林限界付近では、ぺたりと地面にはってはえており、本来の高木針葉樹形を想像できません。これは、強風や低温・やせ地に適応するためです。
マツ科の植物は、おどろくべき適応力をもっていて、みずからの樹形を変化させながら北半球の亜寒帯に大森林を形成し、多くの種を分化させました。
他方、広葉樹形は、太枝から小枝へと順次分枝し、大きな丸い樹冠(枝や葉がしげっている部分)をもち、見た目の重心が高いところにあります。一般的に幅の広い葉をもちます。
広葉樹形(イヌブナ)
広葉樹も、若木のときは主軸の伸びが中心ですが、その後は、横枝の伸びが中心になって樹冠の幅をひろげます。太陽光線を全身でうけようとしているようです。
- 針葉樹形:ななめの太陽光線を効果的にうける。
- 広葉樹形:太陽光線を全身でうける。
■ 茎や根の形態が木の形になる
板根、マングローブ植物、呼吸根、支持根群など、特殊な形態をもつ樹木もあります。これらは熱帯でみられ、熱帯の環境に適応しながら進化したとかんがえられます。
板根(ながくのびた不安定な幹をささえます)
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このように樹木は環境に適応していきているのであり、その形は偶然ではなく、自然環境(気候)を反映しています。したがって樹形をみることによってその地域の自然環境を想像することができます。樹形は、環境の指標になるといってもよく、樹形をみて景観をみることは気候を想像するための重要な方法です。気候あるいは気候帯についてしることは、地球や地球環境問題について認識をふかめることにつながります。
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▼ 参考文献
「樹木の科学」milsil(自然と科学の情報誌)63, 国立科学博物館, 2018年5月