動物保護区は、エコツーリズムなどで活用すべきです。
『ナショナルジオグラフィック』2018年6号では、北極圏国立野生動物保護区の危機について報告しています。

米国アラスカ州にある北極圏国立野生動物保護区で原油掘削事業がはじまろうとしています。米連邦議会が掘削を可決しました。極北の辺境にひろがる野生動物の楽園が存亡の危機にさらされようとしています。




カリブーは春になると、北極圏国立野生動物保護区の沿岸部にある平原に移動し、そこで6週間過ごす。

この保護区には、北米のクマ3種(アメリカグマ、ホッキョクグマ、ハイイログマ)がすべて生息している。

ジャコウウシは、少数の群れが年間を通して沿岸部の平原で暮らす。

夏の間、200 種以上の渡り鳥がこの保護区で過ごす。鳥たちはオーストラリア以外のすべての大陸からやってくる。 

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北極圏国立野生動物保護区にはゆたかな生態系がこのようにひろがる一方で、地下には、約 77 億バレル相当の原油がねむっているとされます。

アラスカ州は財政赤字に現在くるしんでいます。そしてアラスカ州の政治家たちは石油を手にいれようと必死です。

しかし米国では現在、アラスカ州以南で掘削されるシェールオイルと天然ガスが潤沢にいきわたっていて、辺境の原油を掘削しても採算がとれないと指摘する経済学者もいます。

そうだとすると何のための掘削なのでしょうか? アラスカ州の財政というよりも、誰の利益を最大化しようとしているのでしょうか? 問題の奥にある本質を追求することが重要です。

そもそも保護区に指定された区域を開発するというのは矛盾しているわけで、長期的・歴史的にみれば動物保護区はそのままにし、エコツーリズムなどで活用した方がよいでしょう。

日本をはじめ世界各地でも同様なことがおこっています。現代は、野生動物大量絶滅の時代です。


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▼ 参考文献
『ナショナル ジオグラフィック 日本版』(2018年6月号)日経ナショナルジオグラフィック社