犬は、嗅覚や聴覚が人よりもすぐれています。犬は、伴侶動物として人をたすけてきました。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2018年7月号の「Newton Special」では、人の「パートナー」として欠かせない犬について解説しています。



嗅覚を生かしてはたらく犬たちがいます。たとえば、ドーベルマンなどが指定されている「警察犬」や、災害時などに人をさがす「救助犬」、そして空港や港の税関で麻薬などをみつけだす「探知犬」です。

犬は、嗅覚で深さ20メートル近い水中の遺体をさがしだせるといいます。遺体から発せられたガスが水面に上がってきたところをかぎとるのです。また、人の尿をかがせて、がんを早期発見する研究も行われています。

犬は、においの種類によっては、人間の限界より1億分の1の濃度でも検知可能とされています。鼻の中には、におい物質のセンサーである「受容体」を持つ細胞があります。その細胞がある嗅上皮が入りくんでいて広いことなどが、すぐれた嗅覚の秘密だと考えられています。

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犬の鼻の中(鼻腔)には、無数の神経細胞(嗅神経細胞)をふくむ粘膜が存在します。この領域を「嗅上皮」とよびます。嗅神経細胞にあるセンサー(受容体)に匂い物質がくっつくと電気信号が発生し、それが脳につたわり、それを脳が処理して匂いが生じます。匂い物質そのものが脳につたわるわけではありません。人にくらべて犬は、嗅上皮の面積がずっと大きいため嗅覚がよいとかんがえられます。

ところで犬は耳もよく、人には聞こえない5万ヘルツ(50kHz)前後の超音波まで聞きとることができます。

一方、犬の目はあまりよくありません。人の視野は、約 120 度の範囲を立体的に見ることができ、赤・緑・青を識別できる色覚をもちますが、犬は、立体的に見える範囲は 60 度ほどで、色覚は赤を判別しにくい状態です。

犬は、すくなくとも2万年前からわたしたち人といっしょにくらしてきました。犬は、人のたりない能力をおぎない、人に協力してきました。犬は「伴侶動物」としてこれからも重要な役割をはたしていくでしょう。


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▼ 参考文献
『Newton』(2018年7月号)、ニュートンプレス、2018年7月7日