オレキシンは、睡眠と覚醒のきりかえをつかさどる物質です。オレキシンが分泌されていないときは睡眠状態になり、オレキシンが分泌されると覚醒状態になります。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2018年7月号の「トップランナー」では睡眠と覚醒について解説しています。



筑波大学の柳澤教授は、オレキシンが覚醒状態を維持する物質であることを 1999 年に『Cell』で報告した。

オレキシンは、脳の視床下部の後部にある「オレキシンニューロン」でつくられ、そこから主に、覚醒中枢へと分泌される。そして覚醒中枢の表面にある「受容体」に結合すると、覚醒中枢が活性化し、その結果、脳の活性化(覚醒)が引きおこされる。

オキシロンの分泌がさかんなときは、覚醒中枢が優勢になり覚醒状態が維持される。そして、オキシロンの分泌が弱まると睡眠中枢が優勢になり、睡眠へと切りかわる。

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このように、「オレキシンニューロン」のはたらきの強弱で、睡眠・覚醒のきりかえがおこなわれています。オレキシンこそ、睡眠と覚醒のきりかえをつかさどる物質だったというわけです。

睡眠と覚醒には、ねむりをもたらす「睡眠中枢」、覚醒をひきおこす「覚醒中枢」、オレキシンを分泌するオレキシンニューロンの三者が重要な役割をはたしています。オレキシンが分泌されていないときは睡眠中枢が活発になり、オレキシンが分泌されると覚醒中枢が活性化されます。睡眠中枢と覚醒中枢は、一方が活動しているときはもう一方の活動はおさえれれるという「シーソー」の関係にあります。シーソーがどちらにかたむくかで睡眠か覚醒かがきまります。




わたしたちは毎日ねむり、人生のおよそ3分の1をねむってすごします。なぜねむるのか? それは、身体の健康を維持するためだけでなく、情報の処理(プロセシング)をすすめるためであることが近年あきらかになってきています。ねむっているあいだにプロセシングがすすみます。ねむることはサボることではありません。

このようなことが知られていなかった時代には、睡眠時間をけずって試験勉強などをおこなっていた人々がいましたが、そのようなことをしていてはいけません。内面への情報のインプットをしたら、十分な睡眠をとり、目覚めたら、アウトプットをしっかりするという習慣が大事です(図)。

180617 睡眠
図 睡眠と情報処理


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▼ 参考文献
『Newton』(2018年7月号)、ニュートンプレス、2018年7月7日