SNS には落とし穴があります。自分にとって都合のよい情報ばかりにひたっていると判断をあやまります。「ノイズ」も大切にした方がよいです。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2018年7月号の「from Miraikan」では SNS の落とし穴について解説しています。



Twitter や Facebook などの SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用することで、好みや価値観の似た人の意見ばかりが自分のまわりに集まり、つごうのよい情報しか入ってこなくなるという現象がおきています。(中略)これによって、自分の意見が社会全体がもつ一般的な意見だという錯覚を招くというのです。この状況は、部屋(チェンバー)の中で自分の声が増幅されてひびくようす(エコー)にたとえて「エコー・チェンバー現象」とよばれています。

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SNS では、他者とつながりやすい一方で、他者とのつながりを簡単に断つこともできます。また人間には、自分の信じたい情報を信じやすい特性があります。これらの要因により、意見のあわない人とのつながりは断ち、自分に似ている意見の人とのつながりは増やすということをくりかえすことで「エコー・チェンバー現象」が発生するといいます。

具体的には SNS には、自分の好みの情報を発信している人や、共通の人物を介してつながっている人と直接つながりをもつ(友達になる/フォローする)ことを推奨する機能がついています。結果として、「類は友を呼ぶ」ということになり、自分に都合のよい情報ばかりがあつまってきます。




「類は友を呼ぶ」と昔からいいますが、「類は“情報”を呼ぶ」と今日ではいうことができます。そもそも情報には、似ているものがあつまるという原理があります。

この原理をうまくつかって情報処理をすすめる技術もありますが、その前の情報収集(取材)の段階では、都合のよい情報、かたよった情報だけをあつめるのはのぞましくありません。課題をめぐって 360 度の視角から多様な情報をあつめた方が、時間はややかかってもただしい判断ができるということが経験的に知られています。

したがって「SNS 中毒」におちいることなく、さまざまな媒体からさまざまな情報をあつめる努力をしなければなりません。新聞や書籍も利用した方がよいです。紙媒体のそれらも重要な役割を実はもっています。新聞記事などで、自分には興味のない記事のことを「ノイズ」といい、これがいいんです。知識や関心がひろがります。またリアル書店や図書館もいいです。

アイデアが発想されるときには異質な情報の統合ということがしばしばおこります。「ノイズ」から予期せぬことをおもいつくこともよくあります。


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▼ 参考文献
『Newton』(2018年7月号)、ニュートンプレス、2018年7月7日