恐竜はどこへいったのか。常識はくつがえされます。事実と想像、データと仮説を区別して認識する必要があります。
『ナショナルジオグラフィック』(2018年5月号)のシリーズ「鳥たちの地球」では、鳥の起源と進化について解説しています。




「恐竜は絶滅した」
誰もがしる科学の常識です。しかしその常識がくつがえされました。


1億 5000 万年ほど前に生息していた始祖鳥は、現生鳥類の最も古い祖先と考えられていて、恐竜と鳥の特徴を併せもっていた。

1996年、羽毛に覆われた恐竜 シノサウロプテリクス・プリマの化石が発見されれる。この「羽毛恐竜」は、鳥と恐竜の特徴を併せもつ奇妙な姿をしている。

2005年、南極で見つかった 6700 万年前の化石、太古の鳥ベガビス・イアアイは現生のカモとよく似ていたことがわかった。ベガビス・イアアイの骨格には現在の鳥にしかない特徴が見られ、この鳥が現生鳥類の祖先であることを示していた。

2014年、現生の 48 種の鳥の遺伝情報をくまなく調べ、現在の鳥類が小惑星衝突の直後に急速に多様化したと結論づける研究が発表された。(6600 万年前(中生代白亜紀末)、宇宙から飛来した小惑星が地球に衝突し、地表をやきつくしたことが地球科学的な研究から知られている。)

最新の遺伝情報と化石記録を基にした研究によれば、ダチョウやアヒル、ニワトリの祖先は白亜紀後期に出現し、6600万年前に起きた大量絶滅の時代を乗り切った。

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以上のようなデータから、恐竜のある種が鳥に進化したという仮説がたてられます。つまり、恐竜は完全に絶滅したのではなく、その一部は、鳥に進化して生きのこったというわけです。このようなことがわかってきたことは近年の進化論の大きな進歩です。

遺伝子解析や化石記録から、現在しられている1万種をこす鳥類のすべてが、ティラノサウルス・レックスに代表される「獣脚類恐竜」から進化したとかんがえられています。中生代白亜紀には、現生鳥類の祖先にあたる3つのグループが出現し、その後、さまざまな種へと進化し、鳥類の系統樹は急速に枝をひろげていきました。

進化論的な大きな時間のながれのなかで生命をとらえなおすならば、生命とは、変動する環境のなかで、進化によって環境に適応して生きのこっていく存在です。進化とは適応戦略であるということもできます。




「恐竜の絶滅から人間はなまべ!」とおしえようとした学者がかつてはいましたがそうではなく、「恐竜の進化から人間はまなべ!」ということになりました。常識はくつがえされました。

恐竜にかぎらず世の中では、常識がくつがえされることがよくあります。するとわかいときに身につけた知識が役立たなくなります。役立たないどころか老害になります。

したがって環境の変化、時代の転換に柔軟に対応できるようにしておいたほうがよいです。そのためには、何がデータで何が仮説か、どれが事実でどれが想像かを区別して認識しておくことが大切です。

  • データ(事実)
  • 仮 説(想像)


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▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック 日本版』(2018年5月号)日経ナショナルジオグラフィック社