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沖縄の地質・岩石(平行法で立体視ができます)
地質学・動物学・気候学などのデータから、ヒト(旧石器人)が海をわたって琉球列島にやってきたという仮説がたてられます。
企画展「沖縄の旧石器時代が熱い!」が東京・上野の国立科学博物館で開催されています(注)。

ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -

つぎのような発見がありました。


琉球列島の旧石器時代遺跡
  • 那覇市の山下町第一洞穴遺跡:3 万 6500 年前の人骨が発見された(日本最古)。
  • 南城市のサキタリ洞遺跡:3 万 5〜6000 年前のヒトが食べた動物遺骸が発見された。


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日本最古の人骨(山下町第一洞穴人骨) 


これらの事実(データ)から、琉球列島にヒトがやってきたのは 3 万 7000 年前ごろではないだろうかという仮説がたてられます。

それではどのようにしてヒトはやってきたのか? あるいてやってきたのか、舟でやってきたのか?

そこで琉球列島の地質学的な調査・研究が必要になります。地質学者によると、琉球は、もともとは列島ではなくてユーラシア大陸の一部でしたが、大陸東端の縁辺部が地殻変動により分離、太平洋側へ移動してきて列島になりました。この変動は、更新世(258 万〜1 万 2000 年前)の間におこったとされ、およそ 100 万年以上前には琉球列島は現在のような列島になっていました。したがってヒトがやってきた4〜3万年前には琉球列島は大陸と海でへだてられていたといえます。

また琉球列島には、ここにしかいない固有種がたくさん生息しています。


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ヤンバルクイナ(沖縄島北部の固有種)



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イリオモテヤマネコ(西表島の固有亜種)



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ハブ(琉球列島の固有種)



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イシカワガエル(奄美大島・沖縄島北部の固有種)とナミエガエル(沖縄島北部の固有種)


固有種がおおいという事実(データ)も琉球列島が大陸と海でへだてられていたことをしめしています。動物たちは海をこえて移動することはできないため、大陸と海でへだてられ隔離された島々において独自の進化をとげたというわけです。

また気候変動による海水面の上下も考慮しておかなければなりません。3〜4万年前は氷期であり、海水面は今よりも約 80 メートル低かったことがしられています。氷期には、氷河や氷床が陸地に生じるため海水がへり、海水面がさがります。しかし琉球列島の周囲は水深がふかいので、それでも大陸と地続きになることはありませんでした。また今から約2万年前にはもっと寒くなり、海水面は今よりも約 120〜130 m 低くなりましたが、それでも大陸と地続きにはなりませんでした(下図)。


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図 約2万年前の陸域の分布(黄色の部分)


以上のことから、約 3 万 7000 年前ごろに、舟で海をわたって、ヒト(旧石器人)が台湾付近から琉球列島にやってきたと推理できます。




大海にのりだすためには、舟をつくるだけでなく、航海技術も必要であり、大きな技術革新がこのころにおこったといえるでしょう。

それは、人類史的にみれば、飛行機をつかって空へ、宇宙船をつくって宇宙へということにも匹敵するおおきな革新であったにちがいありません。わたしたち日本人の祖先にはこのような革新的な人々もいたのです。

ところで上記の仮説がただしいとすると、台湾〜琉球以外の地域ではどうだったのでしょうか? やはり、おなじ時期に大海にのりだしていった人々がいたのでしょうか? 興味がつきません。


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▼ 注
企画展「沖縄の旧石器時代が熱い!」
会場:国立科学博物館・日本館1階・企画展示室
会期:2018年4月20日~6月17日