大スクリーンにうつしだされるバーチャルリアリティ映像をみながら伊能忠敬の日本全図を大観できます。
伊能忠敬(1745-1818)没後 200 年を記念して、バーチャルリアリティ作品『伊能忠敬の日本図』が、東京国立博物館のミュージアムシアターで再上演されています(注)。

東京国立博物館所蔵の重要文化財「日本沿海輿地図」の高精細デジタルアーカイブデータを元に制作されたバーチャルリアリティ映像が、横幅 6.6 メートル、高さ 3.7 メートルの大型スクリーンにうつしだされ、「伊能忠敬の日本図」を詳細に鑑賞することができます。ナビゲータがリアルタイムで「日本図」を操作し、そのうえを実際にあるいているような、飛んでいるような気分になって日本各地をめぐります。




伊能忠敬は、1745に、上総国(千葉県中央部)九十九里浜のほぼ中央の 小関村(こぜきむら)(現在は九十九里町)で生まれました。

50 歳のときに江戸にでて深川黒江町に隠宅をかまえ、新進の天文学者・高橋至時に入門、天文・暦学・測量を勉強し、観測所を自宅につくって天体観測をおこないました。あまりに熱心なので、師匠の高橋至時は「推歩先生」というあだ名を忠敬につけたといいます。

そして 1800年、忠敬 55 歳のときに第1次測量(蝦夷地)を開始したのをかわきりに、第2次測量(伊豆・東日本東海岸)、第3次測量(東北日本海沿岸)、第4次測量(東海・北陸)、第5次測量(近畿・中国)、第6次測量(四国)、第7次測量(九州第1次)、第8次測量(九州第2次)、第9次測量(伊豆諸島)、第10次測量(江戸府内)と、全国の測量をおこない日本地図をつくり、1818年、73 歳で生涯をとじました。

しかし地図はまだ完成していなかったため弟子たちが作業を継続、3年後の 1821 年に完成、それは『大日本沿海輿地全図』と名づけられました。大図 214 枚、中図 8 枚、小図 3 枚という大作でした。

この日本全図は、今日の衛星画像とくらべてもきわめて正確にできており、その後の日本の国づくりに多大な貢献をすることになりました。

なお東京国立博物館・本館1階の 15 室では、『九州沿海図大図』の一部が展示されています(2018年5月13日まで)。

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東京国立博物館のミュージアムシアターは今年1月にリニューアルオープンし、それまで以上にあかるく色彩感のある表現ができるようになりました。

超高精細4K映像をうつしだす迫力の大スクリーンは『伊能忠敬の日本図』をあざやかにうつしだし、かつての姿を再現、まるで実物にふれられるかのような空間をたのしむことができます。

忠敬らが、どのような方法で測量をし、それを地図にえがいていったのかも解説しています。

これらをみていると、地表から上空にまいあがるような気分になれます。上空から地表をみたらどうなるか? 上空からの視点ももつことがとても大事です。




このようなバーチャル技術は、文化財のあたらしい観賞方法を提供します。ナビゲーターによるライブ上演というのもいいです。ナビゲーターが、バーチャルリアリティ映像をその場で操作しながら進行するスタイルが、あたかも自分がその場にいるかのような臨場感をうみだします。映像空間のなかを移動しながら、時空をこえた文化の旅ができます。


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東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)

▼ 注
VR 作品「伊能忠敬没後200年特別上演 伊能忠敬の日本図」
会場:東京国立博物館・東洋館 地下1階・ミュージアムシアター
会期:2018年4月25日~2018年7月1日(毎週:水・木・金・土・日・祝)