環境とはなにか? 環境問題の本質は? 推理法でいどむことができます。地球の謎、人類の謎とあわせて推理するといろいろなことがわかってきます。人口抑制と循環型文明への転換が必要です。
『名探偵コナン推理ファイル 環境の謎』(小学館学習まんがシリーズ)は推理まんがと学習記事によって環境の謎にいどんでいくためのガイドブックです。名探偵コナンと一緒になって推理をすすめていきます。
こんなにも多くの環境問題が発生しています。この背景には、世界の人口が驚異的に増えていることがあります。
20 世紀のはじめの世界の人口は 15〜16 億人でしたが、2000 年になると 60 億人を突破しました。100 年で人口は約4倍になりました。19 世紀の 100 年間での人口増加は約5億人だったことをかんがえると、この増加は爆発的です。国連の人口統計によると、このまま増えつづけると 2050 年には約 90 億人になるといいます。

人口が増えれば、水や食料、資源・エネルギーがもっと必要になります。そのために開発がすすみ自然環境が破壊され、公害が発生し、野生動物が絶滅においこまれます。こうして上記のような環境問題が深刻になります。
現在、世界の人口の4分の3を開発途上国がしめ、このままゆくと 2030 年には、開発途上国の人口が世界の 85 %になります。先進国の人口は横ばいになっていますので、開発途上国の人口問題に世界はとりくんでいかなければなりません。
もうひとつは、浪費型の社会からリサイクル社会への転換がもとめられます。もっといえば、開発・浪費型から循環型への文明の大転換が必要です。近代文明(科学技術文明あるいはグローバル文明)はヨーロッパ文明が先がけになって構築されていますが、今後は、東洋の文明がみなおされなくてはなりません。
どうしてこのようなことになったのか? それは、ヒト(ホモ・サピエンス)と自然環境の歴史から推理できます。
ヒトとそれ以外の動物との大きなちがいのひとつは、身体と自然環境が直接しているかどうかにあります。動物は、自然環境と直接していますが(図1)、ヒトは、衣服をきて自然環境と間接しています(図2)。ヒトの場合は身体と環境のあいだに衣服があります。これが重要です。たとえば寒冷な地域で生活しようとおもったら、厚手の衣服をつくってたくさん着こめばいいわけです。


あるいは動物とちがってヒトは住居をつくりだしました。住居は、自然環境からの作用をやわらげ、ヒトをまもります。
ヒトは、衣服や住居をつくりだしたことによって、寒冷地など、本来は生息できなかった過酷な環境にも適応できるようになりました。
またヒトは、さまざまな道具をつくりだしました。狩猟をするときには槍をつかって獲物をとらえました。素手のときよりも効率的に食料がえられます。そのほかの石器や工具などもつくりだし、動植物が比較的すくない地域にも適応していきました。
あるいは海という自然環境にも進出しました。海のなかを裸でおよいでいるだけだとほかの動物とおなじですが、ヒトは、舟をつくって海にこぎだしました。航海術もあみだしました。
このようにして、ヒトは地球上のほとんどの環境に適応し、世界中に拡散しました。ほかの動物は本来の生息環境でしか生きられませんが、ヒトは、地球上のほとんどの地域で生活できるようになりました。こうして人口爆発のための基盤ができあがりました。
このような衣服・住居・石器・工具・舟や、それらをつかった生活様式・行動様式は総称して「文化」とよぶことができます。ヒトは文化をもった生き物です(図3)。
文化が発展してくると、農耕地をつくりだしたり土木工事をはじめたり、自然環境の改変もおこなうようになります。自然はヒトが支配しコントロールできるといった誤解はこのときにはじまりました(注)。

自然環境からヒトがうける作用(自然環境→文化→ヒト)は「インプット」、自然環境にヒトがあたえる作用(ヒト→文化→自然環境)は「アウトプット」といってもよいです。
こうして文化が高度化してくると、それは「文明」ということができます。文明の発展はどどまるところをしらず、今日にいたっています。
現代人は、資源をつかいはたす一方で強力なアウトプットをおこなっていて、リサイクルをほとんどまったくおこなっていません。「ゴミ」は、どんどんすてればいいとおもっています。
近代文明は、巨大化する一方で循環のシステムをもたないため、ヒトと自然環境は調和せず、システムはバランスをくずしています。これが環境問題の本質です。
アウトプットしたものが環境を循環してインプットにふたたびいかされる、アウトプットがあらたなインプットにつながるような仕組みをつくらなければなりません。
▼ 関連記事
真実への推理 - 名探偵コナン 科学捜査展(日本科学未来館)-
地球の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 地球の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
人類の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 人類の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
環境の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 環境の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
▼ 参考文献
青山 剛昌原作・高月紘監修『名探偵コナン推理ファイル 環境の謎』(小学館学習まんがシリーズ)小学館、2006年3月20日
▼ 関連書籍
原作/青山剛昌、監修/島村英紀、まんが/阿部ゆたか・丸伝次郎、シナリオ/平良隆久 『名探偵コナン推理ファイル 地球の謎』(小学館学習まんがシリーズ)小学館、2003年8月20日
青山 剛昌原作・佐倉統監修『名探偵コナン推理ファイル 人類の謎」(小学館学習まんがシリーズ)小学館、2010年6月20日
▼ 注
自然はヒトが支配しコントロールできるという誤解はヨーロッパ文明においてとくにひろまりました。日本では、ヨーロッパ文明を徹底的に模倣しはじめた明治維新以後にひろまりました。
地球の危機
- 人口増加
- 食糧不足
- 森林の減少
- 砂漠化
- 野生動物の絶滅危機
- 酸性雨
- 化学物質・環境ホルモン
- 廃棄物問題
- 資源不足
- エネルギー問題
- 大気汚染
- 水不足
- 温暖化
こんなにも多くの環境問題が発生しています。この背景には、世界の人口が驚異的に増えていることがあります。
20 世紀のはじめの世界の人口は 15〜16 億人でしたが、2000 年になると 60 億人を突破しました。100 年で人口は約4倍になりました。19 世紀の 100 年間での人口増加は約5億人だったことをかんがえると、この増加は爆発的です。国連の人口統計によると、このまま増えつづけると 2050 年には約 90 億人になるといいます。

人口が増えれば、水や食料、資源・エネルギーがもっと必要になります。そのために開発がすすみ自然環境が破壊され、公害が発生し、野生動物が絶滅においこまれます。こうして上記のような環境問題が深刻になります。
現在、世界の人口の4分の3を開発途上国がしめ、このままゆくと 2030 年には、開発途上国の人口が世界の 85 %になります。先進国の人口は横ばいになっていますので、開発途上国の人口問題に世界はとりくんでいかなければなりません。
もうひとつは、浪費型の社会からリサイクル社会への転換がもとめられます。もっといえば、開発・浪費型から循環型への文明の大転換が必要です。近代文明(科学技術文明あるいはグローバル文明)はヨーロッパ文明が先がけになって構築されていますが、今後は、東洋の文明がみなおされなくてはなりません。
- 浪費型社会 → リサイクル社会
- 開発型文明 → 循環型文明
*
どうしてこのようなことになったのか? それは、ヒト(ホモ・サピエンス)と自然環境の歴史から推理できます。
ヒトとそれ以外の動物との大きなちがいのひとつは、身体と自然環境が直接しているかどうかにあります。動物は、自然環境と直接していますが(図1)、ヒトは、衣服をきて自然環境と間接しています(図2)。ヒトの場合は身体と環境のあいだに衣服があります。これが重要です。たとえば寒冷な地域で生活しようとおもったら、厚手の衣服をつくってたくさん着こめばいいわけです。

図1 〈動物-自然環境〉のモデル

図2 〈ヒト-衣服-自然環境〉のモデル
あるいは動物とちがってヒトは住居をつくりだしました。住居は、自然環境からの作用をやわらげ、ヒトをまもります。
ヒトは、衣服や住居をつくりだしたことによって、寒冷地など、本来は生息できなかった過酷な環境にも適応できるようになりました。
またヒトは、さまざまな道具をつくりだしました。狩猟をするときには槍をつかって獲物をとらえました。素手のときよりも効率的に食料がえられます。そのほかの石器や工具などもつくりだし、動植物が比較的すくない地域にも適応していきました。
あるいは海という自然環境にも進出しました。海のなかを裸でおよいでいるだけだとほかの動物とおなじですが、ヒトは、舟をつくって海にこぎだしました。航海術もあみだしました。
このようにして、ヒトは地球上のほとんどの環境に適応し、世界中に拡散しました。ほかの動物は本来の生息環境でしか生きられませんが、ヒトは、地球上のほとんどの地域で生活できるようになりました。こうして人口爆発のための基盤ができあがりました。
*
このような衣服・住居・石器・工具・舟や、それらをつかった生活様式・行動様式は総称して「文化」とよぶことができます。ヒトは文化をもった生き物です(図3)。
文化が発展してくると、農耕地をつくりだしたり土木工事をはじめたり、自然環境の改変もおこなうようになります。自然はヒトが支配しコントロールできるといった誤解はこのときにはじまりました(注)。

図3 〈ヒト-文化-自然環境〉システム
自然環境からヒトがうける作用(自然環境→文化→ヒト)は「インプット」、自然環境にヒトがあたえる作用(ヒト→文化→自然環境)は「アウトプット」といってもよいです。
こうして文化が高度化してくると、それは「文明」ということができます。文明の発展はどどまるところをしらず、今日にいたっています。
現代人は、資源をつかいはたす一方で強力なアウトプットをおこなっていて、リサイクルをほとんどまったくおこなっていません。「ゴミ」は、どんどんすてればいいとおもっています。
近代文明は、巨大化する一方で循環のシステムをもたないため、ヒトと自然環境は調和せず、システムはバランスをくずしています。これが環境問題の本質です。
アウトプットしたものが環境を循環してインプットにふたたびいかされる、アウトプットがあらたなインプットにつながるような仕組みをつくらなければなりません。
▼ 関連記事
真実への推理 - 名探偵コナン 科学捜査展(日本科学未来館)-
地球の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 地球の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
人類の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 人類の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
環境の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 環境の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
▼ 参考文献
青山 剛昌原作・高月紘監修『名探偵コナン推理ファイル 環境の謎』(小学館学習まんがシリーズ)小学館、2006年3月20日
▼ 関連書籍
原作/青山剛昌、監修/島村英紀、まんが/阿部ゆたか・丸伝次郎、シナリオ/平良隆久 『名探偵コナン推理ファイル 地球の謎』(小学館学習まんがシリーズ)小学館、2003年8月20日
青山 剛昌原作・佐倉統監修『名探偵コナン推理ファイル 人類の謎」(小学館学習まんがシリーズ)小学館、2010年6月20日
▼ 注
自然はヒトが支配しコントロールできるという誤解はヨーロッパ文明においてとくにひろまりました。日本では、ヨーロッパ文明を徹底的に模倣しはじめた明治維新以後にひろまりました。