循環器系と泌尿器系は、恒常的に人体を維持していくために重要な役割をはたしています。心臓や腎臓にも生物進化の過程がきざまれています。
特別展「人体 - 神秘への挑戦 -」が東京・上野の国立科学博物館で開催されています(注)。第2展示室(1)では「循環器系と泌尿器系」について展示・解説しています。
循環器系は、体内にはりめぐらされた物質運搬のネットワークです。心臓からでた「動脈」は枝分かれしながら全身にひろがり、やがて臓器のなかで毛細血管網となります。そこからもどる血液は「静脈」をとおって心臓にかえります。
血液は、心臓から肺にはこばれてガス交換をおこなう一方、腸管からの血液をあつめる静脈は、いったん肝臓にはいって解毒や栄養に関する代謝がおこなわれたあとに心臓にもどされます。
血液は、体中の器官が必要とする酸素や栄養、そして結果として排出される二酸化炭素と老廃物、さらにホルモンや筋肉でつくられた熱もはこびます。また最近、臓器同士が命令をつたえあう情報物質もはこんでいることがあきらかになりました。
ヒトをふくむ哺乳類の心臓内部は、血液をうけいれる左右の「心房」と、血液をおくりだす左右の「心室」の2心房2心室で構成されます。
全身の組織から二酸化炭素をあつめた血液(静脈血)は右心房にもどり右心室から肺へおくりだされます。肺におくられた血液はガス交換によって酸素をふくんだ血液(動脈血)となって左心房にもどります。これを「肺循環」といいます。
左心房にもどった血液は左心室から全身へおくりだされ、全身の組織に酸素を供給し、二酸化炭素をあつめて右心房にもどります。これを「体循環」といいます。
心臓を経由するこのようなことなる2つの経路は陸上生活に適応した哺乳類と鳥類で確立しました。
魚類は、エラをつかって水中で酸素をとりこむのでほとんどの魚類は肺をもたず、1心房1心室の体循環のみのシステムをもちます。
両生類とワニをのぞく爬虫類は2心房1心室(体循環と不完全な肺循環)の心臓をもちます。
このように、「魚類→両生類・爬虫類→哺乳類・鳥類」と進化してきた過程が心臓の構造にもきざまれています。
泌尿器系は、体内で生じた老廃物、とくに窒素代謝産物や水分を体外に排出するしくみです。
血液から老廃物を濾過する役割をもつのが左右1対の腎臓であり、後腹壁で背骨の両脇に位置しています。
腎臓は、生体内で細胞が正常な機能をいとなむために、水や電解質の量を調整することで体内環境の恒常性をたもつ重要なしくみもになっています。
腎臓も、「魚類→両生類・爬虫類→哺乳類」という進化によって発達してきました。水からはなれた哺乳類は、陸上生活にともなって大量の水を体内からうしなうことになりましたが、濃縮したすくない尿を排泄するしくみを腎臓において発達させることでこれに対処し、陸上生活を可能にしました。
展示会場では、ほかの動物の標本と比較しながら人間の臓器をみることができ、これによって人体についての理解がふかまるだけでなく、生物の進化についても発展的に認識できるようになっています。言葉だけでとらえるのではなく、さまざまな動物の臓器の標本を実際にみてみるとおもしろいです。
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▼ 注
特別展「人体 神秘への挑戦」
国立科学博物館のサイト
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年3月13日~6月17日
※ 一部をのぞき写真撮影は許可されていません。
循環器系は、体内にはりめぐらされた物質運搬のネットワークです。心臓からでた「動脈」は枝分かれしながら全身にひろがり、やがて臓器のなかで毛細血管網となります。そこからもどる血液は「静脈」をとおって心臓にかえります。
- 動脈
- 静脈
血液は、心臓から肺にはこばれてガス交換をおこなう一方、腸管からの血液をあつめる静脈は、いったん肝臓にはいって解毒や栄養に関する代謝がおこなわれたあとに心臓にもどされます。
- 肺:ガス交換
- 肝臓:解毒・代謝
血液は、体中の器官が必要とする酸素や栄養、そして結果として排出される二酸化炭素と老廃物、さらにホルモンや筋肉でつくられた熱もはこびます。また最近、臓器同士が命令をつたえあう情報物質もはこんでいることがあきらかになりました。
ヒトをふくむ哺乳類の心臓内部は、血液をうけいれる左右の「心房」と、血液をおくりだす左右の「心室」の2心房2心室で構成されます。
- 2心房
- 2心室
全身の組織から二酸化炭素をあつめた血液(静脈血)は右心房にもどり右心室から肺へおくりだされます。肺におくられた血液はガス交換によって酸素をふくんだ血液(動脈血)となって左心房にもどります。これを「肺循環」といいます。
左心房にもどった血液は左心室から全身へおくりだされ、全身の組織に酸素を供給し、二酸化炭素をあつめて右心房にもどります。これを「体循環」といいます。
- 肺循環
- 体循環
心臓を経由するこのようなことなる2つの経路は陸上生活に適応した哺乳類と鳥類で確立しました。
魚類は、エラをつかって水中で酸素をとりこむのでほとんどの魚類は肺をもたず、1心房1心室の体循環のみのシステムをもちます。
両生類とワニをのぞく爬虫類は2心房1心室(体循環と不完全な肺循環)の心臓をもちます。
このように、「魚類→両生類・爬虫類→哺乳類・鳥類」と進化してきた過程が心臓の構造にもきざまれています。
- 魚類:1心房1心室(体循環のみ)
- 両生類とワニをのぞく爬虫類:2心房1心室(体循環と不完全な肺循環)
- 哺乳類と鳥類:2心房2心室(体循環と肺循環)
*
泌尿器系は、体内で生じた老廃物、とくに窒素代謝産物や水分を体外に排出するしくみです。
血液から老廃物を濾過する役割をもつのが左右1対の腎臓であり、後腹壁で背骨の両脇に位置しています。
腎臓は、生体内で細胞が正常な機能をいとなむために、水や電解質の量を調整することで体内環境の恒常性をたもつ重要なしくみもになっています。
腎臓も、「魚類→両生類・爬虫類→哺乳類」という進化によって発達してきました。水からはなれた哺乳類は、陸上生活にともなって大量の水を体内からうしなうことになりましたが、濃縮したすくない尿を排泄するしくみを腎臓において発達させることでこれに対処し、陸上生活を可能にしました。
*
展示会場では、ほかの動物の標本と比較しながら人間の臓器をみることができ、これによって人体についての理解がふかまるだけでなく、生物の進化についても発展的に認識できるようになっています。言葉だけでとらえるのではなく、さまざまな動物の臓器の標本を実際にみてみるとおもしろいです。
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運動器系でアウトプットする - 特別展「人体 - 神秘への挑戦 -」(国立科学博物館)-
プログラムと環境要因の相互作用 - 特別展「人体 - 神秘への挑戦 -」(国立科学博物館)-
特別展「人体 - 神秘への挑戦 -」(国立科学博物館) - まとめ -
人体の構造と進化をみる -『人体新書 ILLUSTRATED』(Newton別冊)-
▼ 注
特別展「人体 神秘への挑戦」
国立科学博物館のサイト
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年3月13日~6月17日
※ 一部をのぞき写真撮影は許可されていません。