気候・農業・民族に注目すると世界の気候帯がみえてきて、地球の理解がすすみます。
水野一晴著『世界がわかる地理学入門』は、気候・地形・動植物と人間生活から世界を解説した地理学の入門書です。




第1章 熱帯気候
第2章 乾燥・判乾燥気候
第3章 寒帯・冷帯気候
第4章 温帯気候


■ 熱帯気候
熱帯気候は、熱帯雨林気候とサバナ気候にわけられます。

熱帯雨林気候
  • 年間降水量は 2000 mm 以上あり、気温の年較差より日較差が大きく、午後からはスコールとよばれるはげしい雨がふります。
  • ラトソルとよばれる貧栄養の赤土土壌が分布します。
  • 熱帯雨林は、3〜5層の層構造をなした層構造をなして、最上層は高さ 30 〜 50 m に達します。
  • ゴリラ・チンパンジー・ボノボ・オランウータンなどの大型類人猿が生息しています。

サバナ気候
  • 夏は、熱帯収束帯の影響下で雨季、冬は、亜熱帯高圧帯の影響で乾季となります。
  • サバンナとよばれる疎林と背丈の高い草原からなります。
  • ライオン・キリン・ゾウ・カバなどが生息しています。

■ 農業
熱帯地域でつくられている代表的な農作物は天然ゴム・カカオ・コーヒーなどです。
  • 天然ゴムは、熱帯雨林気候の低地に適しています。
  • カカオも、熱帯雨林気候の低地に適しています。
  • コーヒーは、サバナ気候の高原・丘陵に適しています。土壌は、有機質に富む肥沃土、火山性土壌をこのみ、火山帯や高地が適し、とくに、ブラジルのテラローシャの土壌は最適とされます。

■ 民族
たとえばカメルーン東南部を中心に分布するバカ・ピグミーの人々は、焼畑農業によって、バナナ・トウモロコシ・キャッサバ・タロイモ・ピーナッツ・カカオなどを栽培しており、カカオは、彼らの主要な現金獲得源となっています。

ピグミーとは、成人男性の平均身長が 150 cm 以下の集団のことを呼ぶ名で、その語源は、ギリシャ語の「ひじからこぶしまでの長さ」をあらわす単位だといわれています。体が小さくなったのは、森林のなかでもスムーズに行動できるための適応だとかんがられています。




地理学は、地球上の膨大な情報をあつかっていてとっつきにくいとおもう人が多いかもしれません。学校でも、典型的な暗記科目でおもしろくなかったという人がいました。

そこで上記のように、気候・農業・民族の三者にまずは注目して、気候と民族の相互作用のいとなみとして農業をとらえなおしてみるとよいとおもいます。そしてこれら三者がつくりだすシステム(体系)を想像すれば、それがひとつの気候帯ということになります。


180416a 熱帯
図1 気候帯のモデル


このような気候帯が地球上にいくつか分布しているとかんがえるとわかりやすくなります。

図1のモデルは図2のように抽象化することもできます。

180416 熱帯
図2 〈人間-環境〉システムのモデル


農業というのは、植物を栽培したり家畜を飼育したりする産業であり、これは、人間が自然に手をいれる行為です。それは、完全な自然でもなく完全な人工でもない領域であり、半自然とみなせます。

人間は、自然環境に一方的に支配されるのではなく、自然環境にはたらきかけをし、自然環境を改善することもおこなってきました。このような動的ないとなみを見なおしてみるとよいでしょう。

このような見方をすれば、情報(データ)や資料がならべられているだけの一般教養としての地理学が、全体的に地球を理解するための方法として再生されてきます。


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▼ 参考文献
水野一晴著『世界がわかる地理学入門』筑摩書房、2018年3月10日