大型で複雑な最初の生物はフラクタル構造の体をもっていました。フラクタルに注目することは重要なことです。
『ナショナルジオグラフィック』( 2018年4月号)では「生命が複雑になったとき」について解説しています。生命はいかにして、単純な微生物から大きくて複雑な生物へ進化したのでしょうか? 5億 7000 万年前の化石にその手がかりがありました。




北米大陸の最東端に近いカナダのニューファンドランド島。その南東部にミステイクン・ポイントと呼ばれる岬がある。生命の進化に関する極めて深遠にして不可思議な謎を解く鍵を握る場所として知られている。

この岬に残る5億 7000 万年前の化石は、大型で生物学的に複雑な生き物たちの、地球上で最古の証拠なのだ。


複雑で大型の生物は、約5億 7000 万年前の化石にはじめてあらわれます。この時代は、生物の爆発的進化がおこったカンブリア紀(カンブリア爆発)より前の時代であり、「エディアカラ紀」とよばれ、この時代の生物を「エディアカラ生物群」といいます。

エディアカラ生物群はわたしたちからみるとかなり変わった生物であり、目も頭も尾も、口も内蔵も肛門もなかったようで、現生種との類縁も類似性もありません。栄養は、体内にしみこませて摂取していたという仮説がたてられています。ニューファンドランド島でみつかった化石からは、小枝がつらなったような形状により体の表面積がふえ、海水から栄養分を吸収しやすくなったのではないかと想像されています。

エディアカラ生物群の体の構造をしらべたところ、同一のパターンが小さくなりながらくりかえされていく、フラクタル構造になっていました。一つの大きな葉状体は、さらに小さな葉状体で構成され、これが3〜4段階くりかえされて基本形ができていたのです。

こうした生物が大型化できたのはこのフラクタル構造のおかげかもしれません。これによって体の強度が増し、表面積が大きくなりました。あるいはそれが進化の早道だったとかんがえる学者もいます。




わたしは、このようなフラクタル構造にとくに注目しています。一見すると、大きくて複雑な構造であっても、よくみると、フラクタル構造がみとめられることがよくあります。

すると意外にも簡単に、大きくて複雑な構造が理解できてしまいます。

自然界にはいたるところにフラクタルが存在します。自然界どころか人間界にもフラクタルがあります。それどころか宇宙全体がフラクタルになっているとかんがえている人々もいます。フラクタルは宇宙の原理のひとつかもしれません。


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▼ 文献
『ナショナルジオグラフィック日本版』(2018年4月号)日経ナショナルジオグラフィック社