人体のなかでは、さまざまな器官がネットワークをつくってコミュニケーションをしています。
特別展「人体 - 神秘への挑戦 -」が東京・上野の国立科学博物館で開催されています(注)。先人たちの探究の歴史・功績と、最先端の研究という2つの軸から、人体研究の成果を紹介するという企画です。


第1展示室 人体理解へのプロローグ
 
第2展示室 現代の人体理解とその歴史
(1)循環器系・泌尿器系
(2)神経系
(3)消化器系・呼吸器系
(4)運動器系
(5)人体の発生と成長

・NHKスペシャル 人体
・ネットワークシンフォニー
・体内美術館 
 
第3展示室 人体理解の将来にむけて


第1展示室 人体理解へのプロローグ
人体理解のために、精巧な人体模型が数多くつくられました。なかでも、18世紀以降にヨーロッパで作製され、博物館や教育機関でもちいられた「ワックスモデル」は、詳細な解剖技術と精緻な造形技術がつくり上げた精密な芸術品ともいえるものです。

また紙粘土製の人体模型「キンストレーキ」は、高価な蝋製模型の代用としてフランス人解剖学者オヅーが開発したのがはじまりです。はオランダ語で「人工の死体」を意味する「Kunstlijk」が名前の由来です。


第2展示室 現代の人体理解とその歴史
(1)循環器系・泌尿器系
循環器系は、体内にはりめぐらされた物質運搬の巨大ネットワークです。ヒトの血液は体重の 13 分の1程度、体重 60 キログラムのヒトでおよそ 4.6 リットルです。ひとりのヒトの血管の総延長は約 10 万キロメートルにもおよび、その大部分は毛細血管です。

泌尿器系は、体内で生じた老廃物、とくに窒素代謝産物や水分を体外に排出する系です。血液から老廃物を濾過する役割をもつのが左右1対の腎臓です。


(2)神経系
神経系は、体の情報ネットワークの本体です。脳と脊髄をあわせた中枢神経と、そこからでて体の各部に分布する末梢神経にわけられます。

神経系は、外界や身体内部でおきた刺激を中枢にはこび、その情報をもとに判断をくだし、身体各部にある筋肉や分泌腺に指令をつたます。

刺激→判断→指令

脳を構成する主体は神経細胞であり、それは、電気信号を発して情報をやりとりする特殊な細胞であることがあきらかになっています。


(3)消化器系・呼吸器系
消化器系は、食物中の栄養素を体内に吸収できるように分解して貯蔵するはたらきをもちます。食物が通過する管である消化管と、中身がつまっている実質臓器である唾液腺・肝臓・膵臓などの消化腺からなります。

呼吸器は、大気中の酸素をとりこんで血液に供給し、血液中の二酸化炭素を排出するガス交換をおこないます。生体が活動するためのエネルギーは、消化器系で吸収した栄養を酸素とむすびつけることによってえられます。この結果として二酸化炭素が発生します。


(4)運動器系
運動器は、身体をうごかすための器官系であり、体をささえる役割をもつ骨格系と、骨に付着して関節での運動をおこなう筋系があります。


(5)人体の発生と成長
ヒトの発生は受精によってはじまり、遺伝的なプログラムによって制御され、さまざまな段階をへて進行します。


第3展示室 人体理解の将来にむけて
人体は、これまでは、中枢神経系によって一元的に支配されているとかんがえられてきましたが、近年の研究により、それぞれの臓器同士がコミュニケーションをとるネットワークが体の維持に重要な役割をはたしていることがあきらかになりました。

展示会場内にある「ネットワークシンフォニー」の部屋では、それぞれの器官がネットワークをつくって情報のやりとりをしていることを体感できます。ここではすべての器官が響きあっています。さまざまな響きがあつまると「シンフォニー」になります。シンフォニーの本質は共鳴であり、共鳴は調和がないと生じません。いいかえると共鳴があるところには調和があります。心身において一番重要なのは調和です

そして今後、人体を構成する DNA 情報の総体であるゲノムの解析がすすむことで、わたしたちの体がどのようなプログラムによってつくられ、どのようにして維持されているかがさらにくわしくわかってくるとかんがえられています。

また、さまざまな環境要因が人体のプログラムに変化をつけくわえていることもあきらかになってきました。人体と環境の相互作用の研究もすすんでいます(図)。

180414 人体
図 人体と環境のモデル


人体について関心がないという人はいないでしょう。しかし勉強している暇がないかもしれません。そのような場合には本展が役立ちます。重要なポイントを展示品をつかってわかりやすく解説しています。2時間もあれば人体の概要がつかめます。「人体概論」として最適です。人体は、病気になってから勉強すればいいというものではありません。


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▼ 注
特別展「人体 神秘への挑戦」
国立科学博物館のサイト
特設サイト
会場:国立科学博物館
会期:2018年3月13日~6月17日
※ 一部をのぞき写真撮影は許可されていません。