物事の起源(始まり)を知ることはその分野をトータルにとらえることに役立ちます。
グレアム=ロートン・ジェニファー=ダニエル著『起源図鑑』は、この世界のあらゆるものはどこから来たのか、森羅万象の始まりをおいもとめる図鑑です。52 のキーワードを解説し、わたしたちの知的好奇心をみたしてくれます。




第1章 宇宙
  • 物質、空間、時間の起源
  • 星と銀河の起源
  • 元素の起源
  • 隕石の起源
  • 暗黒物質と暗黒エネルギーの起源
  • ブラックホールの起源

第2章 地球
  • 太陽系の起源
  • 月の起源
  • 大陸と海の起源
  • 天候の起源
  • 土の起源
  • 大気の起源
  • 石油の起源

第3章 生命
  • 生命の起源
  • 複雑な細胞の起源
  • 性行動の起源
  • 昆虫の起源
  • 恐竜の起源
  • 目の起源
  • 睡眠の起源
  • 人間の起源
  • 言語の起源
  • 友情の起源
  • ヘソのゴマの起源

第4章 文明
  • 都市の起源
  • 貨幣の起源
  • 葬送の起源
  • 料理の起源
  • 家畜の起源
  • 宗教の起源
  • 酒の起源
  • 所有の起源
  • 衣服の起源
  • 音楽の起源
  • 衛生管理の起源

第5章 知識
  • 文字の起源
  • ゼロの起源
  • 計測の起源
  • 時間の測定の起源
  • 政治の起源
  • 化学の起源
  • 量子力学の起源

第6章 発明
  • 車輪の起源
  • ラジオの起源
  • 飛行の起源
  • QWERTY キーボードの起源
  • コンピューターの起源
  • X線の起源
  • 偶然の発見の起源
  • 抗菌薬の起源
  • インターネットの起源
  • ロケット科学の起源


わたしがとくに注目したのはつぎの項目です。
  • 物質、空間、時間の起源(宇宙の起源)
  • 太陽系の起源(地球の起源)
  • 生命の起源
  • 目の起源
  • 人間の起源
  • 都市の起源(文明の起源)
  • 文字の起源(情報社会の起源)

物質、空間、時間の起源(宇宙の起源)
約 138 億年前、ビッグバンという現象がおこり、宇宙がはじまりました。このときに物質・時間・空間も生じました。銀河が、たがいにとおざかりつつあるという観測結果から、宇宙は膨張しているということがわかり、もしそうだとするならば、膨張の始まり つまり宇宙の始まりがあったにちがいないとかんがえらました。

太陽系の起源(地球の起源)
約 46 億年前、天の川銀河の片隅で、もやもやした物質(水素ガスとヘリウムガス、塵)から太陽と原子惑星系円盤が形成されました。原子惑星系円盤にふくまれる塵は、太陽を周回するうちに衝突して凝集し、しだいに大きくなって微惑星となりました。重力の作用がおおきな役割をはたしました。

生命の起源
生命の起源についてはまだわかっていません。岩石中にのこる生命の痕跡などから、約 38 億年前に生命が誕生したことはわかっています。海底にあったアルカリ熱水噴出孔で、岩石・海水・二酸化炭素がであって最初の生命がうまれたという仮説があります。

目の起源
5億 4100 万年前(カンブリア紀初期)、目をもった最初の生物である三葉虫が出現たことが化石の研究からわかりました。その目は複眼であり、昆虫の目に似ていたようです。目が発生したことにより、動物は光をとらえて、環境(外界)を認知する能力を飛躍的にのばすことができました。

人間の起源
今から約 700 万年前、チンパンジーの系統から最初の人類がわかれました。チンパンジーと人類のちがいは二足歩行をするかどうかです。そのご人類は進化をつづけてさまざまな属が出現し、今から約 20 万年前にアフリカで、わたしたちホモ・サピエンスがうまれたという仮説が化石などの研究から提案されています。

都市の起源(文明の起源)
メソポタミア地域では、紀元前 8000 年ぐらいから人間の定住地がぽつぽつと誕生していました。紀元前 3500 年頃になると、ユーフラテス川のほとりにあるウルクが、まさに都市とよべるほどの大きな規模に成長しました。約 2.5 平方キロメートルのひろさに約5万人がすんでいたようです。都市の出現は文明のはじまりも意味します。初期の文明は都市文明でした。

文字の起源(情報社会の起源)
本格的な文字がうまれる前から記号や絵文字はありました。しかし複雑な言葉を書きとることができる本物の文字は、5300 年前ごろ、メソポタミア文明のシュメール人の諸都市にあらわれました。文字の読み書きは、人間の行為のなかでもとくに高度な能力のひとつです。本格的な情報化は 1990 年代からはじまりましたが、およそ 5000 年まえにわたしたち人間は、情報化の最初の第一歩をしるしていたといってもよいでしょう。




物事の起源を知ることは、その分野をトータルにとらえるために役立ちます。それは、その物事の基本的な原形のほとんどがきわめて単純な状態でそもそも始めにあったとおもわれることが多いからです。始めにすべてがあったといってもよいでしょう。

したがってその物事や分野の全体像を手っとりばやく知ろうとおもったら、その起源(始まり)をしらべてみるとよいです。

これは、時系列で物事をたどっていく歴史的・物語的な思考とはことなります。時系列で順番にたどっていく方法も重要ですが、これには時間がかかります。これに対して起源論は、すべてが一点にふくまれているといった感じでとらえることができます。

あたらしい勉強や仕事・プロジェクトを始めるときも最初の決断にすべてがあります。始めにすべてがあるのは、生命あるいは宇宙の基本原理のひとつかもしれません。

ところで始まりがあれば終わりもあります。始まりがあったことが終わりを生じさせます。始まりがなければ終わりもありません。したがって起源とともに終末も重要です。しかしこれは別の機会に論じたいとおもいます。


▼ 参考文献
グレアム=ロートン・ジェニファー=ダニエル著(佐藤やえ訳)『起源図鑑 ビッグバンからへそのゴマまで』ディスカヴァー・トゥエンティワン、1917年12月15日