筑波実験植物園内の「世界の生態区」をあるいていくと、さまざまな気候帯の風景をみて比較することができます。生態系や自然環境についての理解がふかまります。
茨城県つくば市にある筑波実験植物園は、国立科学博物館が植物学の研究と普及をすすめるためにつくった植物園であり、およそ 14 ヘクタール(東京ドームおよそ3個分、140000 平方メートル)の敷地に 7000 種類をこえる植物を植栽している世界有数の植物園です(注)。

園内は、「世界の生態区」と「生命を支える多様性区」に区分され、「世界の生態区」は以下のような構成になっています。

ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -


世界の生態区

■ 高山帯〜亜高山帯
  • 岩礫地植物(山地性)
  • 水性植物(高山帯の湿原)

■ 温帯
  • 冷温帯落葉広葉樹林
  • 温帯性針葉樹林
  • 常緑広葉樹林
  • 暖温帯落葉広葉樹林
  • 低木林(高地性、低地性)
  • 山地草原(高地性、低地性)
  • 砂礫地植物(山地性、海岸性)
  • 岩礫地植物(海岸性)
  • 水生植物(山間の沢沿い、山間の湿地、水田・ため池、低地の湿地)

■ 熱帯〜亜熱帯
  • サバンナ温室
  • 水性植物温室
  • 熱帯雨林温室(山地林室・低地林室)



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岩礫地植物(山地性)
山岳地帯の岩場には、低温と強風に耐え、母岩の風化した砂礫やわずかな土壌を利用した固有の植物が育成し、うつくしい花をさかせます。石灰岩や蛇紋岩など、母岩の性質によって種類がことなることもあります。渓流の岩場などに生育する植物もうえてあります。



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冷温帯落葉広葉樹林
中部日本の標高 800〜1600 m 付近の山地にみられる林です。ブナ・ミズナラ・カエデ類が多く、秋の紅葉はみごとです。ブナ林はこの林の代表的なものであり、シラカバに代表される高原の雰囲気も感じられます。



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温帯性針葉樹林
中部日本の 1000 m 前後の山地から低地にかけては、常緑性のモミ・ツガ・ヒノキ・スギなどを種とした針葉樹林がみられます。東北地方では、落葉広葉樹林が混生し、西南日本では常緑広葉樹林が混生しています。



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常緑広葉樹林
葉に光沢のある常緑の木々が優占する日本の暖地林の代表的な樹林です。照葉樹林ともいい、日本では、沖縄から東北地方南部までみられます。シイやカシ類が多く生育し、タブノキなども混生します。林床はくらく、シダ類やキンラン・マンリョウなどがはえます。



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暖温帯落葉広葉樹林
多くの場合、常緑広葉樹林を伐採した跡地に二次的にできる林です。コナラ・クヌギ・イヌシデ・クリなどがおもな樹種であり、冬から春にかけては林床があかるくなるので、カタクリやフクジュソウのような植物も生育します。夏には、カブトムシなど、樹液にあつまる昆虫もみられます。



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山地草原(低地性)
秋の七草など、草原にみられる植物がうえてあります。中部日本の低山地から海岸にかけては、風衝地(風がつよい所)や、放牧などの人手がくわわったためにできた草原がみられます。



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低木林(低地性)
海岸から山地にかけての風当たりのつよい場所や森林の伐採跡地などでは、背のひくい樹木(低木)がみられます。ここには、標高がひくく、あたたかい場所でみられる、ヤマツツジやモチツツジなどのツツジ類、ハコネウツギの仲間があり、春には色とりどりの花を咲かせます。



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砂礫地植物(海岸性)
海岸の砂浜では、つよい潮風、砂の移動、波のしぶきをかぶるなど、きびしい条件にたえて生活しているハマナシ(ハマナス)・ハマゴウ・ハマヒルガオのような植物がみられます。



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水生植物
河川の氾濫原・湖沼・湿原などに生育する水性植物です。「山間の沢沿い」「山間の湿地」「水田・ため池」「高山帯の湿原」のエリア別にうえてあります。気候や土壌のほかに水質が各環境の水性植物の種類をきめる重要な要素になります。



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サバンナ(温室)
アメリカ・アフリカ・オーストラリアなどの乾燥地の植生を再現しています。降水量のすくない地域では、草原や木のまばらな林がみられます。そこでは、茎や葉に水をためたり、乾季に落葉するといった適応進化がおこり、変わった形やくらしかたの植物が生育しています。



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熱帯雨林(温室)
生命力みなぎる、アジアの熱帯雨林の植生を、低地林と山地林にわけて再現しています。




このように、筑波実験植物園の「世界の生態区」をあるいてそれぞれの生態区を比較してみると、生態系あるいは気候によって景観がずいぶんちがうことがよくわかります。植物は、景観をきめる要素としてとても大きな役割をはたしています。

筑波実験植物園は、植物や生態系や景観の多様性をみごとに再現しています。比較的短時間で「地球の自然旅行」ができ、自然環境の多様性をしることができます。


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▼ 注
国立科学博物館 筑波実験植物園
園内マップ
利用案内



■ バス利用の場合
つくば駅(つくばセンター)バス乗り場
5番から「テクノパーク大穂」行、「筑波実験植物園前」下車すぐ
6番から「筑波大学循環左回り」、「天久保二丁目」下車 徒歩8分
時刻表(2017.11.1および2017.9.16 現在)
※ 時刻は予告なく変更になることがあります。

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