量子コンピューターの開発がすすんでいます。グローバルな情報処理システムが世界をかえようとしています。人間主体の情報処理が重要になってきます。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』(2018年5月号)の連載「量子の世界」第3回では量子コンピューターをとりあげています。
コンピューターでは、数も文字も画像も音声も、すべての情報が 0 と 1 で表現されます。通常のコンピューターでは、電気信号の有無に 0 と 1 を対応させ(電気信号なし=0、あり=1)、メモリーとよばれる装置にこれを記憶させます。
たとえば「N」という文字は「1001110」のように表現され、 0 と 1 は、コンピューター内の最小単位であり「ビット」とよばれ、 0 と 1 が7個ある場合は「7ビット」といいます。
コンピューターは、メモリー内のビットの情報を、1秒間に何億回という高速で書きかえるなどして計算をおこなったり、文字や画像をディスプレーに表示したりするための処理(プロセシング)をおこなっています。
量子コンピューターもビットを次々と処理することで計算などをおこなう点は通常のコンピューターとかわりませんが、ビットが「量子ビット」になります。量子ビットは、 0 と 1 の両方を同時にあらわすことができる特殊なビットです。量子ビットを「観測」すると 0 と 1 の重ね合わせの状態がこわれて、通常のビットとおなじように 0 と 1 のどちらかにきまります。
コンピューターの性能をきめるもっとも重要な要素は処理速度(プロセシングのスピード)であることはいうまでもありません。処理速度をあげるために世界の大企業が開発競争をしてきたのであり、その究極が量子コンピューターだというわけです。
これと似ていて、人間がおこなう情報処理(人間主体の情報処理)でも、情報処理能力のたかい人には、心のなかの処理速度(プロセシングのスピード)が速いという特徴がみられます。これは、インプットあるいはアウトプットが速いということではかならずしもありません。みかけの現象にとらわれないように注意してください。仕事ができる人の本質はプロセシング能力が高いということであり、ものすごく速くキーボードをうったり、とても高速で移動したり、もくもくと作業をしたり、いそがしそうにいつもしているということではかならずしもありません。
したがってプロセシング能力を高める訓練が重要なのであり、そのための「加速」訓練体系も存在します。速読法などはその例です(注)。
それはともかく、量子コンピュータの開発は、今日のグローバリゼーション、ビッグデータ解析、人工知能開発などと密接にかかわっているといえるでしょう。これらの進歩は、世界をこんご大きくかえていくとかんがえられます。
場合によっては、グローバルな情報処理システムをもっている一部の人々と、それ以外の大多数の人々とのあいだに大きな格差がうまれてくるかもしれません。Google や IBM・Facebook・Microsoft・Apple・Amazon などの動向に無関心ではいられません。
格差にまきこまれないためのひとつの方法は、人間主体の情報処理を実践し、人それぞれが情報処理能力をたかめ、コンピューターを人間のための道具としてつかっていくということではないでしょうか。コンピューターが “主役” になって、人間はそれにあわせればいいという社会に希望はありません。
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テーマをきめて情報処理訓練をする
▼ 参考文献
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』(2018年5月号)ニュートンプレス、2018年5月7日発行
▼ 注:参考文献
栗田昌裕著『頭の回路が変わる1冊10分の速読法』(ロング新書) 2010年
電子などのミクロな物質は、たとえるなら「右向きに回転すると同時に、左向きに回転する」といったように、同時に複数の状態をとることができます。このような状態の「重ね合わせ」を利用して、多数の計算を同時に行ってしまおうというのが「量子コンピュータ」です。
量子コンピュータが実現すれば、既存のコンピューターを圧倒的に上まわる計算速度でさまざまな問題が解けるようになると期待されています。そのため、IBM や Google などの世界的企業がきそって量子コンピュータの開発を進めています。
コンピューターでは、数も文字も画像も音声も、すべての情報が 0 と 1 で表現されます。通常のコンピューターでは、電気信号の有無に 0 と 1 を対応させ(電気信号なし=0、あり=1)、メモリーとよばれる装置にこれを記憶させます。
たとえば「N」という文字は「1001110」のように表現され、 0 と 1 は、コンピューター内の最小単位であり「ビット」とよばれ、 0 と 1 が7個ある場合は「7ビット」といいます。
コンピューターは、メモリー内のビットの情報を、1秒間に何億回という高速で書きかえるなどして計算をおこなったり、文字や画像をディスプレーに表示したりするための処理(プロセシング)をおこなっています。
量子コンピューターもビットを次々と処理することで計算などをおこなう点は通常のコンピューターとかわりませんが、ビットが「量子ビット」になります。量子ビットは、 0 と 1 の両方を同時にあらわすことができる特殊なビットです。量子ビットを「観測」すると 0 と 1 の重ね合わせの状態がこわれて、通常のビットとおなじように 0 と 1 のどちらかにきまります。
コンピューターの性能をきめるもっとも重要な要素は処理速度(プロセシングのスピード)であることはいうまでもありません。処理速度をあげるために世界の大企業が開発競争をしてきたのであり、その究極が量子コンピューターだというわけです。
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これと似ていて、人間がおこなう情報処理(人間主体の情報処理)でも、情報処理能力のたかい人には、心のなかの処理速度(プロセシングのスピード)が速いという特徴がみられます。これは、インプットあるいはアウトプットが速いということではかならずしもありません。みかけの現象にとらわれないように注意してください。仕事ができる人の本質はプロセシング能力が高いということであり、ものすごく速くキーボードをうったり、とても高速で移動したり、もくもくと作業をしたり、いそがしそうにいつもしているということではかならずしもありません。
したがってプロセシング能力を高める訓練が重要なのであり、そのための「加速」訓練体系も存在します。速読法などはその例です(注)。
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それはともかく、量子コンピュータの開発は、今日のグローバリゼーション、ビッグデータ解析、人工知能開発などと密接にかかわっているといえるでしょう。これらの進歩は、世界をこんご大きくかえていくとかんがえられます。
場合によっては、グローバルな情報処理システムをもっている一部の人々と、それ以外の大多数の人々とのあいだに大きな格差がうまれてくるかもしれません。Google や IBM・Facebook・Microsoft・Apple・Amazon などの動向に無関心ではいられません。
格差にまきこまれないためのひとつの方法は、人間主体の情報処理を実践し、人それぞれが情報処理能力をたかめ、コンピューターを人間のための道具としてつかっていくということではないでしょうか。コンピューターが “主役” になって、人間はそれにあわせればいいという社会に希望はありません。
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人間が主体になった情報処理をすすめる - コンピューターは道具 -
テーマをきめて情報処理訓練をする
▼ 参考文献
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』(2018年5月号)ニュートンプレス、2018年5月7日発行
▼ 注:参考文献
栗田昌裕著『頭の回路が変わる1冊10分の速読法』(ロング新書) 2010年