嗅覚の仕組みを理解し、匂いを活用すれば、生活の質をたかめることができます。
日本科学未来館のメディアラボ第19期展示として「匂わずにいられない!~奥深き嗅覚の世界~」が公開されています(注)。

会場では匂いを実際にかいで理解をふかめることができます。実体験することが重要です。


  • あなたの匂いセンサーの感度は? 
  • 複雑な匂いをかぎわけられる? 
  • 2つの匂いをくみあわせると何の匂いに?
  • すきな匂い、きらいな匂いで気分はどうなる?
  • 悪臭はどう解消する?
  • 匂いは愛にもなる?
  • 匂いを言葉で表現してみよう!


わたしたちが匂いを感じるのは、「匂い物質」が物から空中にまいあがっているからです。匂いごとにことなるかたちの分子が存在します。ヒトの鼻の内側には、約 400 種類もの匂いセンサー「嗅覚受容体」が存在していて、空中をまう匂い物質がこのセンサーにぴったりはまるのが匂いの第1場面(インプット)です。

嗅覚受容体は匂い物質をとらえると、その情報を脳におくります。脳は情報を処理して匂いを認知します。脳の情報処理が匂いの第2場面(プロセシング)です。


180327 匂い
図 匂いを感じる仕組み


このように、身のまわりの空中には匂い物質がただよっているのであって、匂いそのものがただよっているわけでないことに注意してください。匂いそのもは脳がつくりだしているのであり、情報処理によって生じるのです。

いいかえると人間や動物は、匂いという “情報” によって、どんな物質がちかくにあるのかを察知しているのです。

匂いの世界は大きくひろがっていますが、嗅覚は、視覚や聴覚・味覚にくらべると、一般の人々はあまり重視していないこともあり、とらえにくい状況になっています。そこで会場では、「匂いを表す言葉」が紹介されていました。これをみれば、匂いの世界の大きなひろがりがわかります。匂いは言葉で表現することがむずかしく、物や味にたとえる場合が多いです。


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一般的に匂いは、複数の匂い物質がくみあわさって生じます。さまざまな匂い物質が一度に鼻にはいると、反応したセンサーのくみあわせによって、単純な足し算ではない、まったく質のことなる匂いが生じます。

料理の匂い、部屋の香り、入浴剤、医療現場などで不快な匂いをやわらげるなど、匂いはさまざまな場面で利用できます。

誰にも、すきな匂いときらいな匂いがあるように、匂いは感情に直接はたらきかけます。いいかえれば、脳を活性化させたり感情をととのえるために匂いがつかえます。嗅覚の仕組みを理解し、匂いを活用すれば生活の質をあげることができます。


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▼ 注
メディアラボ第19期展示「匂わずにいられない!~奥深き嗅覚の世界~」
場 所: 日本科学未来館 3階 常設展「メディアラボ」
会 期: 2017年12月13日~2018年5月21日