地球は「一つ」であるとともに、多様性にみちあふれています。「一つ」と多様性は矛盾せず、多様性の統一がおこっているのが地球です。
『ナショナルジオグラフィック』(2018年3月号)では「宇宙飛行士が見つめた私たちの星」と題して、宇宙から地球をみた宇宙飛行士たちの言葉を紹介しています。




天国そのものがこのような姿に違いありません。この惑星は一つの楽園なのだと思います。(マイク・マッシミーノ)

地球は一つなのです。すべての地球人が地球を周回できたなら、事態は少し違う方向に向かうと思います。(カレン・ナイバーグ)

地球を周回しているとき、それまでにないほど、地上の人々とのつながりを強く感じた。(クリス・ハドフィールド)

人類が末長く地球に住み続けたいなら、一つの家族として力をあわせないといけないでしょう。(サマンサ・クリストフォレッティ)

宇宙で私たちは国籍に関係なく共通の言葉で話し、互いに理解し合うのです。地球上で同じことができないものでしょうか?(ゲンナジー・パダルカ)

地球を眺めて楽しんだり、写真を撮ったりするだけでなく、その姿を多くの人にとって意味のあるものにしたいと感じた。(キャシー・サリバン)

宇宙から見た地球の姿を芸術作品にしたい。(ニコール・スコット)

宇宙から地球の海を目にし、その極めて多様で鮮烈な色合いに魅了された。(リーランド・メルビン)

小惑星の衝突から地球を守る。(エド・ルー)

地球は今でも青くて美しいですが、現代文明が地球を傷つけていることも忘れてはなりません。(野口聡一)


宇宙飛行士たちの数々の「証言」は、地球は「一つ」であり、「一つ」でしかありえないことを証明しています。

しかし地表にいる人間からみると、地球は、多様性にみちあふれていてまとまりがないように見えます。地球は渾沌(カオス)であるといってもよいでしょう。

  • 地球は一つである。
  • 地球は多様性にみちている(渾沌、カオス)。

地球は一つ、しかし多様である。一つであることと多様性は一見すると矛盾するようですが、矛盾していません。

地球は多様性をたもちつつ、一つの体系(システム)をつくっています。地球では、多様性の統一という現象がおこっています(注)。

進化論的にいえば多様性は分化によって生じます。地球は分化しつつ、統一されています。分化と統一、一見すると矛盾するようなことがおこって調和が生じています。宇宙からみた地球がこのことを証明しました。そもそもシステムというのはこういうものです。

  • 分化
  • 統一



そして生命をはぐくむという点において地球は特筆すべき存在になっています。


地球が生命を育める 13 の要因
    1. 生命を育むのに不可欠な炭素の循環
    2. 有害な電磁波をブロックするオゾン層
    3. 自転軸の揺れを安定させている月
    4. 多様な生物を支える変化に富んだ地表
    5. 太陽からの嵐をそらす地磁気
    6. 生命が存在できる 太陽からの程よい距離 
    7. 巨大ガス惑星との安全な距離
    8. 安定していて長持ちする太陽
    9. 活発な核を支える地球の原料
    10. 遠くから守ってくれる巨大な惑星
    11. 銀河の残骸から惑星を守ってくれる太陽
    12. 危険が少ない太陽系の公転軌道
    13. 恒星の密集領域から遠いロケーション


生命というものが、地球の多様性をさらにゆたかなものにしています。地球の分析的研究によってこのようなことがあきらかになってきました。

宇宙から撮影した地球の写真を見て、地球を大観した宇宙飛行士たちの言葉をかみしめ、さらに分析的にも地球をとらえてみれば、地球の全体象と仕組みが今まで以上に認識できるにちがいありません。




1968年、アポロ8号は、人類史上はじめて地球の軌道をはなれ、月を周回しました。クレーターだらけの不毛の月の地平線から、青々とした惑星がのぼる光景がありました。人類は、はじめて「地球の出」を見ました。この写真は、地球のうつくしさと脆弱さをわたしたちに意識させることになりました。そして人類は地球人になりました。今年は、それからちょうど 50 年になります。

宇宙から見ると、地球は「一つ」であることがわかります。しかしそのなかにあって人間圏(人間界)はどうなっているでしょうか。そのなかだけは矛盾にみちあふれていて調和はありません。それどころか人間は、地球環境の破壊まではじめているありさまです。

「地球の出」から 100 年をむかえるころにはすこしは改善されているでしょうか。人間には “軌道修正” がもとめられています。


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▼ 注
「一即多、多即一」といってもよいです。

▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック 日本版』(2018年3月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2018年2月28日