放射性物質の半減期とその挙動をしり、それられがおよぼす被害について理解することが重要です。
■ 半減期をしる

福島第一原発事故により原子炉から放出された放射性物質としてはつぎのようなものがあります(注1)。

 元素名と半減期
  • ヨウ素(I)133:約20.8時間
  • テルル(Te)132:約3日
  • キセノン(Xe)133:約5日
  • ヨウ素(I)131:約8日
  • セシウム(Cs)134:約2.1年
  • セシウム(Cs)137:約30年

放射能(放射性物質が放射線をだす能力)は時間とともに減っていきます。その能力が半分になるまでの時間を「半減期」といいます。

半減期は、放射性物質によってことなり、たとえばセシウム137の場合は、約 30 年のあいだに放射線をだす能力が半分になり、さらに 30 年のあいだにその半分になり、さらに 30 年のあいだにその半分になります。すなわち当初から 90 年たつとようやく8分の1になります。


■ セシウム137はのこりつづける

半減期のみじかい放射性物質が姿を消すなかで、セシウム137は大半がのこりつづけています。

地表にふりつもった放射性セシウムの多くは、土壌粒子とつよくむすびついてうごかない状態となっており、水に溶ける割合は小さいことがわかりました。一般的に、福島の土壌には雲母由来の鉱物がおおくふくまれ、セシウムは、その鉱物の層が風化してひらいたところ(フレイドエッジ)に捕捉され、強固に結合された状態で存在しています。

セシウム137とはながいつきあいになるわけであり、このことを子供たちに学校でよくおしえておく必要があります。


■ 放射性ヨウ素と甲状腺癌

先日参加した日本科学未来館主催のシンポジウムでは福島県の被災者からの発言もありました。 


「子供たちの甲状腺癌について福島原発事故の影響はかんがえにくい」と専門家がいっていますが、本当でしょうか?


上記の放射性物質のうち、ヨウ素(放射性ヨウ素)が体内にとりこまれると甲状腺癌を発症する可能性が高くなることがしられています。実際、1986 年におきたチェルノブイリ原発事故のあとに甲状腺癌の患者が多数発生しました。

甲状腺は体の喉仏の下あたりに位置しており、わたしたちの成長やエネルギーの代謝をうながす「甲状腺ホルモン」を分泌しています。甲状腺ホルモンの生成には、放射性ヨウ素ではない「安定ヨウ素」が不可欠であり、普段は、食べ物や飲み物などからこれがとりこまれ甲状腺に蓄積されますが、原発事故で大気中に放出された放射性ヨウ素もおなじヨウ素であるため、呼吸によってあるいは食べ物や飲み物などから体内にとりこまれることで甲状腺に蓄積されてしまいます。とくに、子供の場合は成長がいちじるしく、成長ホルモンがたくさんつくられて甲状腺に多くの放射性ヨウ素があつまるので、甲状腺癌を心配する被災者が多数いるのです。

放射性ヨウ素の半減期は比較的みじかいため、たとえば子供たちが避難のために移動していたときや、避難生活をしていたときに被爆して遺伝子に傷がのこるなどして、のちに癌をひきおこす可能性を指摘する専門家がいます。

そこで事故当時福島県にいた 18 歳以下のこどもたち約 38 万人を対象に検査をくりかえしたところ、これまでに、196 人が「癌や癌のうたがい」と診断され、このうち 150 人あまりが甲状腺を切除する手術をうけました。

しかし有識者でつくる福島県県民調査検討委員会は、被曝量が総じて小さいことなどを理由に「放射線の影響とは考えにくい」とし、大規模に検査を実施したことで甲状腺癌が普段よりも多く見つかっている可能性が高いとしています。本当でしょうか?


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▼ 注1
日本科学未来館 パネル展示「Lesson #3.11 7年目の選択」
期日:2018年2月28日~4月9日
場所:日本科学未来館 5階 常設展示場内