『福島 10の教訓 原発災害から人びとを守るために』(福島ブックレット委員会)を読んで福島の教訓を未来にいかさなければなりません。
原発災害が被災者をくるしめつづけています。原発事故の経験を共有するとともに、被害をできるかぎり軽減し、災害自体を未然にふせぐためにはどうすればよいのか?

「自分が生きている間は何とかなるだろう」
これが一番いけません。誰もが、問題意識もって原発の課題に取り組んでいかなければなりません。


  1. 「原発は安全」という宣伝にだまされてはいけません
  2. 緊急時にはまず逃げることが基本です
  3. 情報アクセスと記録を残すことが重要です
  4. 包括的な健康調査と情報開示は被災者の権利です
  5. 食の安全と農林漁業を守るには市民参加の検査・測定と情報公開が重要です
  6. 完全な除染はできません
  7. 作業員の待遇改善と健康管理がなければ、事故収束のめどはたちません
  8. 被災者の生活とコミュニティの再建が不可欠です
  9. 被災者を守るための法律の制定・運用に被災者参加を求めましょう
  10. 賠償の負担は国民が背負わされています


1.「原発は安全」という宣伝にだまされてはいけません
「原発は安全です」→事故がおきたら「想定外でした」
原発をすすめたい人々は、都合のよいデータをピックアップして「安全だ」と説明し、いざ惨事がおきると「想定外だ」とひらきなおり、責任をとりません。一方で、住民や国民に、原子力と原発に関する知識がないとこのようなことがおこりやすくなります。原発に関する情報公開とともにその理解が必要です。

2. 緊急時にはまず逃げることが基本です
原発の緊急事態が発生した場合には、避難指示の有無にかかわらず、なるべく早く遠くへ避難することが身をまもる基本です。避難中の被ばくを避けるためには風向きの情報も不可欠です。放射性物質の拡散は同心円状にひろがるとはかぎりません。

3. 情報アクセスと記録を残すことが重要です
緊急事態が発生した場合、政府や電力事業者からは住民への情報提供ができない可能性があります。原発周辺地域では、緊急時の情報提供システムを別途確立しておかなければなりません。また緊急時の避難記録・行動記録を各自でとっておきます。放射能被害に対する健康管理のために必要です。

4. 包括的な健康調査と情報開示は被災者の権利です
福島では、緊急時であることを理由に、妊婦や子どもをふくむ一般住民の年限度線量が、専門的な原発作業従事者と同等のレベルまで緩和されました。これでよいのか? 加害者らから独立した中立の立場からの健康調査が必要です。被災者の基本的人権がおびやかされています。

5. 食の安全と農林漁業を守るには市民参加の検査・測定と情報公開が重要です
放射能の検査・測定機器をそなえ、農協・ 漁協・生協などのコミュニティ単位で農漁民や消費者自身が検査・測定をおこなわなくてはなりません。測定値を理解するトレーニングも必要です。他人まかせでななく主体性がもとめられます。

6. 完全な除染はできません
除染したといっても、別の場所に汚染物を移動させているだけです。除染の作業を通じて、また廃棄物をあつめることにより、人びとの被ばくの危険性を高める可能性もあります。公的な除染体制の再構築が必要です。

7. 作業員の待遇改善と健康管理がなければ、事故収束のめどはたちません
被災者自身やその家族が事故の収束や廃炉に従事する作業員になるケースが多いです。退職後も長期間にわたり医療費を保障し、追跡調査ができるような健康管理手帳を公的責任のもとで発行させることが必要です。

8.被災者の生活とコミュニティの再建が不可欠です
長期化する避難生活や環境の変化に対応して、被災者の生活そのものを再建する、そしてコミュニティを維持また再建するということが必要です。

9. 被災者を守るための法律の制定・運用に被災者参加を求めましょう
被災者の救済は、政府や企業からの温情やお見舞いではありません。まっとうな補償をうけ生活を再建させることは基本的人権です。日本の「子ども・被災者支援法」の例にみられるように、被災者自身がたちあがり、法律家や立法者と協力して勝ちとるものです。制度をつくるときには、その過程の中心に被災当事者がかならずいなければなりません。

10. 賠償の負担は国民が背負わされています
  • 東電によると、廃炉を終了するまで 30 年から 40 年かかるといいます。
  • 福島県内で実施する住宅地や農地など生活圏内の除染費用の総額は最大で 5 兆 1300 億円です(産業技術総合研究所の研究グループによる試算結果)。
  • 賠償について指針がまとめられ(2013年12月)、それにもとづ く東電の見通は 5 兆円をこえました。
  • 原発事故がおきたことで措置された国や県の予算は以下の とおりです。限定的な見積と廃炉と除染費用の見積りだけで 23 兆円をこえる金額になります。
福島県向けに設けられた原発の立地補助金 2000 億円
復興加速化交付金 1600 億円
県民健康管理調査の費用などが 960 億円
災害公営住宅の建設費が 730 億円
原子力災害復興基金が 400 億円




原子力災害については、現在の科学技術が異常に専門分化したこともあって、一般の人々にはすぐには理解できない状況になっています。そこで本書が役立ちます。「原子力とは、放射線とは何か」といった基礎的なことから解説しています。被災者の「声」もコラムで紹介しています。

また本書は、世界各国の言語にも翻訳されています。福島の教訓は世界のためにもいかさなければなりません。おなじ過ちをおかしてはなりません。リスクを事前に特定し、それらを軽減するための対策をたてるべきです。

「ふくしまから世界へ」という情報発信(アウトプット)は、今後とも継続していかなければなりません。情報の更新も必要です。情報量が多いだけでなく、情報が多様でもあるのでこれにはかなりの労力がかかります。しかしそんなことはいってられません。チームワークでのりきっていくしかありません。


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▼ 注:ブックレット『福島 10の教訓 原発災害から人びとを守るために』は下記サイトから無料でダウンロードできます。
ふくしまから世界へ(Fukushima Lessons)