オーディオ(ステレオ)で音楽をきけば、それぞれの楽器の配置や音響といった音楽の空間を認知することができます。
オーディオ専門店・ダイナミックオーディオ(東京・神田)の試聴会(イベント)に参加しました。日本のオーディオメーカー TAD の機器をつかって音楽をたのしみました。

試聴機材はつぎのとおりでした。
  • プレーヤー:TAD-D1000MK2 
  • プリアンプ:TAD-C2000 
  • パワーアンプ:TAD-M2500MK2 
  • スピーカー:TAD-ME1 & TAD-CR1 

オーディオ(ステレオ)は、2本のスピーカーから音をだして音楽を再生します。しかし実際には、それぞれのスピーカーから音がでているようにはきこえず、目の前で音楽家が演奏しているかのようにきこえます。ソリストの歌声は中央から、ベースはうしろのほうから、ピアノは左からといったように。ステレオで音楽をきけば臨場感をあじわえます。

情報処理の観点からとらえなおすと音をきくとはどういうことでしょうか。まず耳に音波がはいってきます。音波は電気信号に変換されて脳におくられ、脳は情報を処理して音を認知します。耳はインプット器官、脳はプロセシング器官です。これが聴覚のしくみです。

それではどうして耳は2つあるのでしょうか。たとえば右側のスピーカーからでた音は左右両方の耳に到達しますが、右側の耳には左側の耳よりもわずかにはやく到達します。左側のスピーカーからでた音ではその逆のことがおこります。この左右の時間差を脳が検出して、情報を融合して音源の位置を特定します。中央からきこえるとか、左の方からきこえるとか空間的な状況がわかります。こうして楽器の配置や音のひろがりがとらえられるのです。

このことは、ステレオ写真をつかって立体視することによく似ています。

もし耳が1つしかなかったらこのようなことはできません。音がきこえるだけです。耳が2つあることによって空間認知ができるのです。

たとえば目の不自由な人は壁などからの反射音をきいて、障害物がどこにあるか、その方向とそこまでの距離を判断してあるいていくといいます。

このようなことは無意識的に誰でもやっていることでしょうが、聴覚系の情報処理と空間認知のしくみを自覚することが重要です。空間認知は視覚系でもできますが、聴覚系のほうが、非常にこまかいところまであまりわからない分、全体的な状況がつかみやすいということがあるかもしれません。このような訓練をくりかえしていれば環境を認識する能力もたかまります。

音楽をきくときにはなるべくステレオをつかって、各楽器の配置を想像し、音響のひろがりをつかむようにするとよいでしょう。


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