鳥類は、わたしたちがおもっている以上にかしい動物でした。鳥類は、わたしたち霊長類とはちがう、もう一方の進化の道筋をたどっています。
ナショナルジオグラフィックでは、本年を「鳥の年」とし、鳥をテーマにした記事を連載しています。2018年2月号では「鳥の知能」について解説しています。

たとえばカラスをみていて、鳥のくせに、おもっていたよりもかしこい連中だとおもったことがないでしょうか。





米国シアトルに住む少女、ガブリエラ・マンは、餌をカラスにあげていたら、贈り物をもらうようになった。なかでもハート形の飾りがお気に入りだ。

オーストリアの研究施設にいるシロビタイムジオウムのフィガロ。独創性が豊かで、カシューナッツを手に入れる道具をダンボールで自作した。

ニュージーランド南島の高山帯に生息するミヤマオウムは好奇心がつよいことで知られる。オーストリアの研究施設にいる4羽のミヤマオウムは、木の箱から下がった鎖をみんなで同時に引っ張れば、中のおやつが手に入ることを突き止めた。


鳥類は、かつてかんがえられていたよりもはるかに知能が高いことがあきらかになってきました。もっともかしこいのはカラス科の鳥やオウムであり、複雑な認知をつかさどる前脳が相対的に大きく、ニューロン(神経細胞)の密度がとても高いです。カラスやオウムは社会性も高く、霊長類とおなじように仲間とやりとりする行動もみられます。

鳥類と哺乳類をくらべると、脳の大きさは哺乳類の方が大きいですが、ニューロンの密度は哺乳類をしのぎます。また鳥類の脳には、「外套」とよばれる神経構造が存在することもあきらかになり、これは、哺乳類でいえば新皮質など、高度な思考をつかさどる領域に相当します。

鳥類は、霊長類とおなじように複雑な社会をもっています。たとえばカラスは、生後6ヵ月から社会的な絆づくりをはじめ、成鳥のほとんどは雌雄でつがいとなって繁殖と子育てをおこない、縄張りを協力してまもります。ほかの仲間とも強力関係をきずき、社会的なネットワークを構築します。物をかくす、あたえる、ぬすむといったおたがいの行動を観察して、ほかの鳥の性格や好みも判断します。




鳥類は、恐竜のある種が進化したとかんがえられており、これは「生きた化石」ではなく、進化論的には比較的あたらしい種です。進化論的にあたらしいという点ではわたしたち霊長類と似ていますが、鳥類は、わたしたち霊長類とはまったくことなる進化をしてきました。鳥類は、生物進化のもう一方の “立役者” であったといってよいでしょう。

鳥類の知能の高さを知ることは、わたしたちとはことなる、もう一方の進化の物語を理解することにつながります。


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▼ 参考文献