街なかの地衣類(平行法で立体視ができます)
誰もが見ているけれど知らない生物が地衣類です。生物共生の身近な例として重要です。
国立科学博物館で企画展「地衣類」が開催されています(注)。
地衣類は、名前はしらなくても誰もがみている生物であり、身近な場所から南極や砂漠などの極限地域にまで分布する、菌類が藻類と共生して進化した「スーパ生物」です。見かけはコケのようですがコケではありません。
ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
街なかの地衣類
樹皮のうえにできたパズルのような模様、枝にまとわりつく糸のような塊、岩のうえの灰緑色の斑点など、街路樹の幹やふるい壁や石垣など、身のまわりの景色のなかにかならずといってよいほど地衣類が存在しています。
地衣類とは菌類の仲間であり、藻類と共生して「地衣体」とよばれる構造体をつくっている子嚢菌(しのうきん)や担子菌(たんしきん)をさします。「○○ゴケ」のような名前がついているものが多いですがコケの仲間ではありません。コケという日本語は、「小毛」または「木毛」に由来するといわれ、木や岩などにはえた小さな毛のようなものを総称してよんできたようです。
地衣類とは菌類の仲間であり、藻類と共生して「地衣体」とよばれる構造体をつくっている子嚢菌(しのうきん)や担子菌(たんしきん)をさします。「○○ゴケ」のような名前がついているものが多いですがコケの仲間ではありません。コケという日本語は、「小毛」または「木毛」に由来するといわれ、木や岩などにはえた小さな毛のようなものを総称してよんできたようです。
菌類は、わかっているだけで約 10 万種がしられており、それらのうち地衣類は約2万種です。共生している藻類は、地衣類全体の約 85 %が緑藻、約 10 %がシアノバクテリア、約5%には両者がふくまれます。
菌類が藻類と共生して地衣体をつくることを「地衣化」といい、この共生によって地衣類は、極域から熱帯までの実に広大な地域に分布をひろげることができました。多様な環境への適応です。
地衣類の最大の特徴は、単一の生物ではなく、系統的にかけはなれた菌類と藻類の共生体だという点にあります。本展を参考にして、身近にあふれる地衣類をみなおし、生物の共生について再認識してみるとよいでしょう。
針葉樹林帯の地衣類
また地衣類は、大気汚染がひどくなると消失することが 19 世紀中頃からヨーロッパで報告されるようになりました。一方、日本の首都圏で 2003 年にはじまったディーゼル車規制によって大気汚染が改善されたところ、皇居内の地衣類の多様性が 57 種から 98 種に大幅に増加したことがわかりました。
このように地衣類は、大気環境の「指標生物」としても有用です。大気汚染の監視のために多くの国々で地衣類が活用されています。
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▼ 注
会場:国立科学博物館(地下1階多目的室)