中国の農業の「工業化」がすすんでいます。健康被害と環境破壊がすすまない仕組みづくりが必要です。日本の経験がいかせるはずです。
『ナショナルジオグラフィック』2018年2月号では、「中国の胃袋を満たす」と題して、中国の激変する農業について解説しています。急速な経済発展にともない、中国人は、かつてないほどおおくの肉や乳製品・加工食品をたべるようになってきました。こうした需要にこたえるために農業の「工業化」がすすめられています。しかしそこには大きな問題もあります。




中国の生産流通システムは、「食品の安全性を管理しようにも、まったくもってお手上げの状況」だと、米スタンフォード大学で中国の農業を研究するスコット・ロゼルは話す。

大規模な畜産農場は、一部の農家を貧困から救う一方で、深刻な環境破壊と健康リスクをもたらす。中国政府が 2010 年に実施した全国規模の汚染調査で、水質汚染では農業が製造業を上回る最大の汚染源になっていることがわかった。

農業の規模拡大に取り組む中国だが、都市部の富裕層は工業型の農業に不信感を抱いている。

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中国の伝統的な農業と流通システムでは食品の安全管理はできなといい、他方で、大規模な工業型農業には環境破壊と健康リスクがあるといいます。すくなくとも都市部の富裕層の人々は、高額でも安全な農作物をさがしもとめて買っています。日本でも、中国の食品の安全性に疑問をもっている人がたくさんいます。

中央政府による統制経済をつづけていた中国は、1970 年代後半に改革開放政策に転換、市場経済へとつきすすむ巨大経済圏に姿をかえました。都市への人口流入と所得向上がうながされ、欧米式の食生活が国民のあいだにひろまりつつあります。

30 年前には、都市人口は全体の約 25 %にすぎませんでしたが、2016 年には人口の 57 % が都市でくらすようになりました。肉の消費量は、1990 年の約3倍ちかくに達し、牛乳・乳製品の消費量は 95 年から 2010 年までに都市部で4倍、農村部で6倍ちかくふえました。加工食品の需要も 08 年から 16 年までにおよそ 1.7 倍になりました。

こうして多くの改革をしながら農業の大規模化・工業化がすすめられていますが、このような大量生産・大量消費システムでは、かつての日本もそうであったように、環境と健康はあとまわしになります。中国の消費者も 75 %ちかくが食品の安全性に不安をいだいているといいます。

急速に経済発展する中国。日本よりも “一足” おくれて、健康被害や公害がこれから生じてくるとおもうと本当におそろしくなります。日本がかつて経験した失敗をいかすことはできないでしょうか。


▼ 参考文献