人間の努力とすぐれた環境、両方が同等に必要です。
インダス文明は、約 4600〜3900 年前の青銅器時代に、現在のパキスタンからインド北西部にかけてさかえた古代文明だとかんがえられています。この文明の遺跡群は、かつてながれていた旧ガッカル=ハクラ河床にそって立地しています。

インド工科大学カンプール校のシンハー博士らは、ヒマラヤ山系に水源をもつこの古代の川の流路とその堆積物を分析し、今から約 8000 年前までに、最大で 150 キロメートルにわたって川の流路がうごいていたことをつきとめました。

この川は、豊富な栄養分をふくむ土壌をもたらし、その後、流路が大きく移動したことでこの地域の洪水がへり、集落が都市へと発展する環境がととのったのだろうと博士らはのべています。




古代文明は、農耕の開始と集落・都市の発生からはじまると一般的にかんがえられています。

まず、人間の手によって植物が栽培できることに気がついた人々がいたはずです。そして栽培技術を発明し、開発し、いくたびかの技術革新をへて農業が発展、農業の規模が大きくなるにつれて集落は都市へと拡大していったと想像されます。

しかし一方で、農業が発達するためにはそれをささえる環境も必要です。シンハー博士らの今回の研究はそのことをしめしています。肥沃な大地があり、降水もあり、しかし洪水はすくない地域は農業にむいています。古代インダス地域は、農業と都市を発達させるための好条件をそなえていました。

都市を発達させるためには人間の努力が必要です。優秀な人材が必要です。しかし一方で、すぐれた環境も必要です。どこでもというのではなく、人材と環境の両者がそろったところで文明はうまれたのだとかんがえられます。そこは、人間と環境がやりとりをする〈人間-環境〉システムになっていました。

これは、人間の努力だけではどうにもなりませんが、環境が人間を支配するということでもないとおもいます。人間の行為と環境の作用が調和したときに大きな成果がうまれるのでしょう。

このことは、勉強や仕事など、情報処理や問題解決をすすめるときの参考になります。一生懸命 勉強したり仕事をしたりすることは重要です。しかしそれだけでなく、環境を選択し、環境をととのえることも勉強や仕事と同等に重要です。


▼ 参考文献
"nature communications", 2017.11.28(SCIENCE SENSOR, Newton, 2018年3月号)