世界を変えた本を10冊えらんでわかりやすく解説しています。いずれも現代を読み解くうえで要となる著作です。
それぞれの著作をとりだして独立に解説しているのではなく、全体として本書一冊がストーリーになっていて、グローバルな現代社会がかかえる問題について理解をふかめることができます。
以下の著作について解説しています。
第1章 アンネの日記第2章 聖書第3章 コーラン第4章 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神第5章 資本論第6章 イスラーム原理主義の「道しるべ」第7章 沈黙の春第8章 種の起源第9章 雇用、利子および貨幣の一般理論第10章 資本主義と自由
著者の池上さんは次のようにのべています。
本には、とてつもない強さがあることも事実です。一冊の本の存在が、世界を動かし、世界史を作り上げたことが、たびたびあるからです。
たとえば、 第6章 イスラーム原理主義の「道しるべ」では次のようにのべています。『イスラーム原理主義の「道しるべ」』についてはわたしは読んだことがなかったので勉強になりました。
かつてマルクスが書いた『資本論』や『共産党宣言』によって、世界で共産主義運動の旋風が起きたように、『道標』によって、イスラム原理主義の嵐が巻き起こる。書籍の持つ力というべきか、恐ろしさというべきが。この書も、明らかに世界を変えた本のひとつなのです。
複雑な現代社会を理解するためには、ものごとを大局からとらえる能力、つまり大観力が必要です。
大観ができると、次に、どこをくわしく見ればよいかがおのずとあきらかになります。
大観により見通しがよくなるので、関連事項の理解がしやすくなり、ものわかりがよくなり、その結果、決断がしやすくなり、行動もしやすくなって仕事の効率もあがります。大局がとらえられると最適な判断ができ、行動の道筋も見えてくるというわけです。
また大観することにより、グローバルで複雑な現代と、自分自身の局所的で独自な人生とをどうつなげていけばよいかのヒントもえられます。
このような大観の方法は、あまり時間をかけずに、全体的な状況のすべてを一気にインプットするのがよく、 そのためには、みずからの心のうつわを大きくひろげておくことがのぞまれます。
本書は、世界を読み解き、現代を大観するための第一歩として役にたつでしょう。
文献:池上彰著『世界を変えた10冊の本』文藝春秋、2011年8月10日