目隠しをして感じとることは複合的に感覚をはたらかせる訓練になります。聴覚・触覚・嗅覚・味覚がとぎすまされ、いつもとはちがう自然を感じることができます。
人間が受け取る刺激(情報)の80%は視覚から得ている・・・というデータがあるそうです。ネイチャーゲームでは、あえてその視覚を閉じることで、他の感覚を際立たせるものが多くあります(注)。
「ネイチャーゲーム」とは、米国のナチュラリスト・ジョセフ=コーネルが著書『Sharing Nature With Children』のなかで1979年に発表した自然体験プログラムであり、五感をつかった自然体験をとても重視しています。五感とは、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚のことです。
これらの感覚は本来は個別にはたらくのではなく、複合的にはたらきます。しかし現代人は、複数の感覚を複合的につかう能力がよわまっています。そこでどうすればよいか? 一般的には、「自然のなかにはいって五感のすべてはたらかせよう!」といったことがいわれます。
ところがここで提案しているのは、目隠しをして視覚をとじてしまうという方法です。これによって、聴覚・触覚・嗅覚・味覚がいままで以上にはたらきます。
たとえば森のなかにはいって目隠しをします。聴覚・味覚・触覚がとぎすまされ、いつもは気づかない自然を感じることができます。目隠しをして木をさわってみます。幹や枝・葉っぱ・地面・・・。木を再認識できます。あるいはランチを食べるときに目隠しをして味わってみます。どんな味、食感がえられるでしょうか。そしてうつくしい夕焼けをみて普段はうっとりするサンセットのときに目隠しをしてみます。鳥たちがとんでいく、風の速さや向きがかわる、空気がつめたくなっていく・・・。陽がおちていくときのドラマチックな自然の変化が感じられるでしょうか。
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わたしたちは、目・耳・皮膚・鼻・舌などの感覚器官をとおして外界(環境)の情報を内面にインプットしています。
現代人が複合的に感覚をつかわず、かたよった仕方でインプットしているのは、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からみるとゆゆしき問題です。
たとえば学校の勉強や試験勉強・受験勉強だけをやっていると視覚と聴覚だけしか発達せず、その視覚も、文字を読むことにおもにつかわれ、それも黙読・音読なので、音を処理する回路(聴覚の回路)で情報がもっぱら処理されます。
すべての感覚を複合的につかい、情報処理のかたよりを是正する練習が必要です。
インプットにかたよりがありバランスをかいていると、そのあとのプロセシングもうまくいきません。インプットが不適切だとプロセシングにエラーがおこり、アウトプットも失敗します。肩もこります。
適切な言動(アウトプット)ができない人は、そもそもインプットがうまくできていないケースがほとんどです。インプットがとまってしまい、過去の記憶情報からのみアウトプットをしている人もいます。
インプットは情報処理の第一歩です。おりにふれて目隠し訓練をすることはインプットを改善することにとても役立ちます。
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▼ 注
シェアリングネイチャーライフ Vol.19(通算100号)、公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会、2017年12月15日