『ナショナルジオグラフィック』2017年12月号（注１）では、絶滅の危機にあるジャガーについて解説しています。

かつてジャガーは、米国南西部の乾燥地帯からアルゼンチンの草原地帯パンパまで、広く分布していた。19世紀中頃から、生息に適さないジャングル内部の奥地へと追いやられ、生息地はかつての半分以下になっている。

ジャガーの個体群は、「回廊」とよばれるルートをとおって生息地内を移動し、繁殖にむすびつけます。しかし開発で回廊が分断されるとそれぞれの個体群は孤立してしまいます。

ジャガーが家畜をおそうことが増えているといいます。土地の開発がいちじるしくすすんで野生の獲物が姿を消したためであるとかんがえられています。ジャガーは頻繁に人間と衝突し、ころされるようになりました。

また牙や骨が、装身具や民間療法の薬として高値で取り引きされる（注２）こともあって、ジャガーは存亡の危機におちいっています。ジャガーは、南北アメリカ大陸にくらす単一の種です。ここで絶滅すればそれでおわりです。

アマゾンには、地球上でもっとも多彩な生態系がひろがります。アマゾンの湖や川・動物そして推定８万種の植物にはそれぞれに精霊がやどっているといいます。ジャガーはそうした世界の頂点にたつ存在です。ジャガーをうしなうことは生態系の頂点をうしなうことであり、それは生態系の崩壊を意味します。

またアマゾンの先住民たちが数千年にわたってきずきあげてきた精神世界では、精神に作用する植物の力をかり、アマゾンの精霊の助けによってあらゆる病の原因と治療法をみつけられるといいます。ジャガーはそこで、人間の味方として、守護者として、生命力あふれる存在として君臨してきました。

ジャガーをまもるためには、彼らの「回廊」の維持と回復がまずは必要です。


▼ 注１
『ナショナル ジオグラフィック日本版』（2017年12月号）日経ナショナル ジオグラフィック社、2017年11月30日

▼ 注２
中国においてトラの骨が売買がされていますがトラの生息数が激減したため、かわりにジャガーの需要がたかまりました。トラの骨の代用品になっているのです。とくに牙は、社会的地位の象徴、魔除け、ネックレスとしてつかわれ、高値で取り引きされます。このため密猟と密売がおこなわれています。