インターネットをつかったやりとりでは情報をデジタル化できるかどうかが重要です。言語化能力をとくにきたえなければなりません。
日本科学未来館3階の常設展示に「インターネット物理モデル」があります。インターネットで情報がつたわる仕組みを白と黒のボールのうごきでしめした装置であり、実際に情報を送受信しながらインターネットの原理を体験的に理解することができます。

ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -


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メッセージの送信器(左)と受信器(右)

メッセージをまずつくります。文字・音・うごきなどの情報を白色と黒色の玉の並び(列)に変換します。この変換を「デジタル化」といいます。

白黒の並び(列)は、0を白、1を黒であらわした二進数の数値をしめしています。8個の玉は8桁の二進数をあらわし(8ビットともいいます)、0 から 255 までの数を表現でき、256 種類の文字としてもつかえます。


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レールは通信ケーブルをあらわす

特定の受信器あての情報をあなたの送信器からインターネットにおくりだします。白黒の玉がレール上を移動していきます。レールは通信ケーブルをあらわします。白黒の玉の列(集合)は、あて先・送り元・メッセージ内容のからなり、これを「パケット」といいます。

実際の送受信は電気信号でおこなわれますが、ここでは、白色と黒色の球は電気信号の ON と OFF をそれぞれあらわしています。


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中継装置とネットワーク

銀色のタワーは玉の中継装置です。レール(通信ケーブル)とタワー(中継装置)によってネットワークが構築されています。タワーのなかで玉が一度とまり、先頭部の玉をみて、行き先をふりわけていきます。ネットワークのなかをデータがながれる様子をみることができます。


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データがとどく 


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データを受信した受信器

あて先の受信器にデータがとどきます。受信器には復元器がついており、デジタル化の逆の操作により元の形に情報が復元されます。

こうして、インターネットとおなじ原理でメッセージをおくったりうけたりすることができます。解説書などをよんで理解するのとはちがって、実際に体験してみると、インターネットについての理解がいちじるしくすすみます。体験は一生のおもいでにもなります。


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インターネットの発明によって世界はかわりました。情報化が一気にすすみました。

インターネットの利用にあたっては情報をデジタル化できるかどうかが大きなポイントになります。デジタル化できなければデータはおくれません。

画像や音声ではデジタル化が実現しています。たとえば絵画や音楽は、大きさとか臨場感などを別にすれば送受信が可能です。最近は、4K・8Kやハイレゾなどが開発され、高画質化・高音質化がいちじるしいです。

彫刻はどうでしょうか? 彫刻だっておくれるといって写真を撮っておくってきた人がいましたが、これは、写真(画像データ)をおくったのであって、彫刻そのものをおくったのではありません。3次元の物体(立体)をインターネットでおくることはそもそもできませんでした。しかし最近、3D プリンターが発明されました。これをつかえば、データを受信して、立体を復元することができます。技術は進歩しています。

わたしは、ステレオ写真をつかっています。送信は、普通の画像データとしておこない、それをうけとった人が、人間の立体視能力をつかって3次元に復元するという方法です。インターネットと人間そのものの情報処理能力をくみあわせているわけです。現地・現場の空間やそこにあったものはすべて3次元なのですから、それらを3次元で認知するのは自然なやり方だとおもいます。

味(味覚)はどうでしょうか? 先日、あたらしいソースをみつけました。酸味があってスパイシーだけれども、まろやかさがあってとてもおいしいソースでした。すっきりしているのにこくがあります。カレーのかくし味としてもつかえます。

味だっておくれるとおもう人がいるかもしれませんが、これは、味を言葉に変換しておくったのであり、味そのものをおくったのではありません。言葉をうけとった人はその味を「想像」するか、レシピなどをよんで自分でつくって再現するしかありません。味そのものをおくろうとおもったら、ソースそのものを宅配などでおくることになります。

先日、ある番組みていたら、「おいしーーぃ。メッチャおいしい。おいしい、おいしい。うーん、おいしい。すげー。」といっていた人がいましたが、これでは味はつたわりません。味をつたえるためには語彙力が必要です。この人は、言葉と通信の仕組みを勉強しなければなりません。

言葉は、データ(信号)に変換してインターネットでおくれます。インターネットでメッセージをアウトプット(表現)するためには言語化能力が必要であり、元の情報を言語化するためのプロセシング能力がとわれます。現地・現場の一次情報を言語化する能力をみがいていかなければなりません。

言葉とはそもそも、元の情報を記号化して送受信ができるようにしたものでした。言葉には元来、デジタル化の性格がそなわっていたのです。言葉とくに文字を人間が発明したときに、情報化の最初の一歩があったといってもよいでしょう。


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▼ 注
日本科学未来館「インターネット物理モデル」