佐州金銀採製全図(交差法で立体視ができます)
日本の近代化は江戸時代にはじまりました。江戸時代のをみなおす必要があります。
国立科学博物館・地球館2階の「科学と技術の歩み、江戸時代の科学技術」コーナーには日本の近代化のはじまりに関する展示・解説があります(注)。

ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -

佐州金銀採製全図には鉱山のすべてがえがかれています。

江戸幕府は積極的に鉱業(鉱山開発)を振興し、日本は一大鉱業国になりました。金・銀などの有用資源の開発がすすむとともに、銅の生産量は世界最大となり、これらの生産物は長崎をとおして世界に流通しました。日本は、資源にめぐまれた世界有数の鉱業国であったのであり、マルコ=ポーロによって「黄金の国(ジパング)」とよばれました。

鉱業には、当時のあらゆる知識と技術が投入・集積され、日本の風土にあわせた独自の発展がみられました。鉱業は、日本の近代化を根底からささえたといえます。



和漢三才図会(全105巻81冊、1713年刊)(左上)、救荒野譜補遺(左上)、
Yo-san-sin-sets(仏語に翻訳された日本の養蚕書、中央下)

17世紀初めに明代の『本草綱目』が日本に輸入され、日本でも本草学が発展しました。本草学は自然を分類する学問であり、その後の博物学の発展の基礎となりました。18世紀以降になると、自然物や博物学の書籍が西洋からはいってきて、本草学は、自然一般をひろく対象とする博物学へ発展し、19世紀になると、するどい観察にもとづく植物図譜や昆虫図説などが多数出版されました。リンネの分類法も紹介されました。



IMG_1882_1
『植学啓原』
『植学啓原』(しょくがくけいげん、1833(天保4)年刊)は、蘭学者・宇田川榕菴(うだがわようあん)があらわした、東洋で最初の本格的な西洋近代植物学の紹介書です。三巻からなり、巻一では、リンネによる植物分類、根や茎・葉の形態や生理について、巻二では、鼻や果実・種子の生殖器官、遺伝などについて、巻三では、植物の醗酵や腐敗について解説し、付図などがそえられています。本書は、単なる分類ではなく、自然科学の法則や探究の手順をまなぶことの重要性をといています。自然科学の初期段階を垣間見ることができ、実際にその後、博物学は自然科学へ発展していくことになるのです。



エレキテル(摩擦起電気)

エレキテルは日本ではじめて製作された電気の機械です。平賀源内が長崎の通詞からこわれたエレキテルをゆずりうけ、1776年頃に復元に成功しました。


* 


国立科学博物館の展示・解説をみていると、「日本は、明治維新以降に急激に近代化した、発展した」という常識はあやまりであることがわかります。わたしは子供のころ、「江戸時代はちょんまげ、腹切りのおくれた時代だった」と大人たちからおそわりましたが、そうではなく、江戸時代に近代化がすでにはじまっていたのです。日本の近代化の基礎は江戸時代にきずかれたといってよいでしょう。わたしも、江戸時代・江戸文化をみなおす作業に今後とりくんでいきたいとおもいます。


▼ 関連記事
読み→計算→書き - 国立科学博物館・地球館2階「江戸時代の科学技術」(1)-
時をきざむ - 国立科学博物館・地球館2階「江戸時代の科学技術」(2)-
空間をはかる - 国立科学博物館・地球館2階「江戸時代の科学技術」(3)-
重層文化を発展させる - 国立科学博物館・地球館2階「江戸時代の科学技術」(4)-
江戸時代をみなおす - 国立科学博物館・地球館2階「江戸時代の科学技術」(5)-

「地球時代」をとらえる 〜梅棹忠夫著『地球時代の日本人』〜

▼ 注
国立科学博物館・地球館2階「科学と技術の歩み」