現実を見て本質をつかむことが大切です。現実をインプットして本質をアウトプットするのは高度な情報処理です。
上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」 が東京都美術館で開催されています(注)。写真やビデオの映像情報が氾濫する現代社会のなかにあって、絵画でしかできない「写実」を追究している画家たちの作品を多数紹介しています。
写実絵画は現実的ですが非現実です。これは矛盾でしょうか?
現実・事実を見て画家は絵をえがきます。現実や事実は現場にしかありません。
現実の情報は、画家の目から画家の心のなかにとりこまれます。そして画家は手をつかって表現します。この過程は情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)にほかなりません。表現されたものはすべて画家のアウトプットです。画家のプロセシングをへたものです。目はインプット器官、手はアウトプット器官といってもよいでしょう。
したがって写実絵画は現実・事実をふまえてはいますがその画家独自の処理がほどこされています。現実そのまま、感じたままではありません。現実・事実をそのままアウトプットすることは不可能です。
このような事例から人間の情報処理について理解をふかめることができます。情報処理は誰にでもおこっています。それを自覚することがまずは必要です。そもそも人間はそういう存在です。人間どころかあらゆる生物は〈インプット→プロセシング→アウトプット〉をしているのであり、それが生きることであり、それがとまるのが死です。
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植物画で特徴をつかむ - 企画展「フローラヤポニカ - 日本人が描いた日本の植物 -」(国立科学博物館)-
▼ 注1
上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」
会場:東京都美術館
会期:2017年11月17日~2018年1月6日
観覧料:一般 500円、65歳以上 300円
※ 東京都美術館で同時開催されている「ゴッホ」展の半券をもっていれば無料で入室できます。
※ 会場は、一部をのぞき写真撮影が許可されていました。
▼ 注2
「『写真のような絵画』注文殺到 5年で価格2倍」(日本経済新聞電子版、2017/5/15)
(交差法で立体視ができます)
生々しさ、透明感、空気感、質感。本物そっくり。まるで写真を見ているようです。
しかしながらこれは写真あるいは現実ではありません。しばらく見ていると現実ではないというか「現実以上」であることがわかってきます。わかりやすくいえば現実以上にうつくしい。ドキッとして、一目ぼれしてしまう人が続出します。停滞する国内の美術市場のなかで写実絵画は唯一よく売れているそうです(注2)。
しかしながらこれは写真あるいは現実ではありません。しばらく見ていると現実ではないというか「現実以上」であることがわかってきます。わかりやすくいえば現実以上にうつくしい。ドキッとして、一目ぼれしてしまう人が続出します。停滞する国内の美術市場のなかで写実絵画は唯一よく売れているそうです(注2)。
写実絵画は現実的ですが非現実です。これは矛盾でしょうか?
現実・事実を見て画家は絵をえがきます。現実や事実は現場にしかありません。
現実の情報は、画家の目から画家の心のなかにとりこまれます。そして画家は手をつかって表現します。この過程は情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)にほかなりません。表現されたものはすべて画家のアウトプットです。画家のプロセシングをへたものです。目はインプット器官、手はアウトプット器官といってもよいでしょう。
したがって写実絵画は現実・事実をふまえてはいますがその画家独自の処理がほどこされています。現実そのまま、感じたままではありません。現実・事実をそのままアウトプットすることは不可能です。
このような事例から人間の情報処理について理解をふかめることができます。情報処理は誰にでもおこっています。それを自覚することがまずは必要です。そもそも人間はそういう存在です。人間どころかあらゆる生物は〈インプット→プロセシング→アウトプット〉をしているのであり、それが生きることであり、それがとまるのが死です。
今回の展覧会のサブタイトルは「映像を越えて」でした。現実をただうつしとるのではなく、それを越えていく。現実をただ見るのでなく、その本質をとらえる。現実のなかにある本質を表現していく。すなわち現実をインプットして、本質をアウトプットするということです。これは高度な方法です。芸術とはかぎらず情報処理の究極ではないでしょうか。
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▼ 注1
上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」
会場:東京都美術館
会期:2017年11月17日~2018年1月6日
観覧料:一般 500円、65歳以上 300円
※ 東京都美術館で同時開催されている「ゴッホ」展の半券をもっていれば無料で入室できます。
※ 会場は、一部をのぞき写真撮影が許可されていました。
▼ 注2
「『写真のような絵画』注文殺到 5年で価格2倍」(日本経済新聞電子版、2017/5/15)